1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/31(水) 21:08:12.29 :gB/vfZ2Q0
菫「どうして2人が……!」
菫「どうして2人が……!」
3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/31(水) 21:14:04.67 :gB/vfZ2Q0
気付くと公園にいた。息が荒いのは走ってきたせいだけではない。
どうしてあの2人が、玄関先で抱き合っていたのか。
全てが分からない。私への天罰というのか。
胸が苦しい。冷たい空気が肺へと突き刺さる。
巻いてきたマフラーがないことに気付いた。
季節は、冬。
気付くと公園にいた。息が荒いのは走ってきたせいだけではない。
どうしてあの2人が、玄関先で抱き合っていたのか。
全てが分からない。私への天罰というのか。
胸が苦しい。冷たい空気が肺へと突き刺さる。
巻いてきたマフラーがないことに気付いた。
季節は、冬。
4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/31(水) 21:18:44.35 :gB/vfZ2Q0
自宅へとぼとぼと歩く。もう右手のケーキは駄目になっているに違いない。
プリンケーキという看板に惹かれて洋菓子店に入るべきではなかった。
買わなければよかった。持って行こうと思わなければよかった。
そんな結果ばかりが浮かんでくる。
しかし、悪いのは自分だとわかっている。
でも、どうして宥なのか。それが、分からない。
自宅へとぼとぼと歩く。もう右手のケーキは駄目になっているに違いない。
プリンケーキという看板に惹かれて洋菓子店に入るべきではなかった。
買わなければよかった。持って行こうと思わなければよかった。
そんな結果ばかりが浮かんでくる。
しかし、悪いのは自分だとわかっている。
でも、どうして宥なのか。それが、分からない。
8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/31(水) 21:22:48.61 :gB/vfZ2Q0
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
まさか菫が来るなんて。でもいいんだ、先に裏切ったのはあっち。
その相手が宥だっただけ。私は何も悪くない。
悪く、ないんだ……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
まさか菫が来るなんて。でもいいんだ、先に裏切ったのはあっち。
その相手が宥だっただけ。私は何も悪くない。
悪く、ないんだ……。
10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/31(水) 21:29:53.90 :gB/vfZ2Q0
□ □ □ □ □
菫ちゃん……だったよね。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
でも、ドアは閉めていってね。あったかくないよ。
戸を閉めようとして気付く。
「あっ」
「どうしたの?」
背を向けた照ちゃんが振り返って尋ねた。
「あのね……菫ちゃんがマフラー、忘れたみたいなの。だから私……あっ」
ぱっと手のマフラーを引き、
「私が行ってくる」
照ちゃんは家を出ていった。この家は私一人だけ。
宮永姓でない私だけ。
□ □ □ □ □
菫ちゃん……だったよね。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
でも、ドアは閉めていってね。あったかくないよ。
戸を閉めようとして気付く。
「あっ」
「どうしたの?」
背を向けた照ちゃんが振り返って尋ねた。
「あのね……菫ちゃんがマフラー、忘れたみたいなの。だから私……あっ」
ぱっと手のマフラーを引き、
「私が行ってくる」
照ちゃんは家を出ていった。この家は私一人だけ。
宮永姓でない私だけ。
17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/31(水) 21:40:09.67 :gB/vfZ2Q0
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
やはり肩が冷える。そもそも受験勉強で肩が凝り気味だったことを思い出す。
考えてみれば、こうして勉強をしているのも照と同じ大学へ行くためだったはず。
後悔しか浮かんでこない。溜息がまたひとつ。
時計に目をやると塾の時間が過ぎていることに気付いた。
サボることにしていたとはいえ、目的も果たせなかったのだから、帰らずに塾でも行けばいいのかもしれない。
そんなことを考えていたら笑えてきた。なんて私は滑稽なんだ。
自分勝手で自業自得。いいざまだ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
やはり肩が冷える。そもそも受験勉強で肩が凝り気味だったことを思い出す。
考えてみれば、こうして勉強をしているのも照と同じ大学へ行くためだったはず。
後悔しか浮かんでこない。溜息がまたひとつ。
時計に目をやると塾の時間が過ぎていることに気付いた。
サボることにしていたとはいえ、目的も果たせなかったのだから、帰らずに塾でも行けばいいのかもしれない。
そんなことを考えていたら笑えてきた。なんて私は滑稽なんだ。
自分勝手で自業自得。いいざまだ。
18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/31(水) 21:45:13.31 :gB/vfZ2Q0
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
気付いたら宥カラマフラーを奪って、菫の家へと駆け出していた。
寒い。上着くらい羽織ってくればよかった。
でもどうせすぐに追いつく。とぼとぼ歩いているに決まっている。
手に持ったマフラーは暖かかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
気付いたら宥カラマフラーを奪って、菫の家へと駆け出していた。
寒い。上着くらい羽織ってくればよかった。
でもどうせすぐに追いつく。とぼとぼ歩いているに決まっている。
手に持ったマフラーは暖かかった。
20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/31(水) 21:54:00.99 :gB/vfZ2Q0
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
後ろから駆けてくる足音がした。側溝側に避ける。勝手にあっちも避けていくだろう。
「菫!」
振り向くと声の通り照がいた。
息を切らし、上着も着ずに、私のマフラーだけを持って。
白い息と赤い頬のコントラストがとても綺麗だった。
「……照」
「忘れたから」
そう言ってマフラーを差し出す。
「ありがとう」
それしか言えなかった。言いたいことが、言うべきことがあったはずなのに。
渡されたマフラーから目を離すと、もう照は背を向けていた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
後ろから駆けてくる足音がした。側溝側に避ける。勝手にあっちも避けていくだろう。
「菫!」
振り向くと声の通り照がいた。
息を切らし、上着も着ずに、私のマフラーだけを持って。
白い息と赤い頬のコントラストがとても綺麗だった。
「……照」
「忘れたから」
そう言ってマフラーを差し出す。
「ありがとう」
それしか言えなかった。言いたいことが、言うべきことがあったはずなのに。
渡されたマフラーから目を離すと、もう照は背を向けていた。
24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/31(水) 22:05:43.06 :gB/vfZ2Q0
「照、あの……」
それ以上言葉が出てこない。
「なに?」
足を止め、振り向かずに答えた。
私はもう顔を見られなかった。うつむいたまま言葉を継ぐ。
「その、ごめん……」
「なんで菫が謝るの?マフラーを届けに来ただけで」
「私が悪かった。ごめん」
「謝らないで」
そうして照は近づいて私の顎に触れた。
ビクッとして顔を上げると、そこには照の顔があった。
シチューの香りがした。
「照、あの……」
それ以上言葉が出てこない。
「なに?」
足を止め、振り向かずに答えた。
私はもう顔を見られなかった。うつむいたまま言葉を継ぐ。
「その、ごめん……」
「なんで菫が謝るの?マフラーを届けに来ただけで」
「私が悪かった。ごめん」
「謝らないで」
そうして照は近づいて私の顎に触れた。
ビクッとして顔を上げると、そこには照の顔があった。
シチューの香りがした。
28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/31(水) 22:22:24.32 :gB/vfZ2Q0
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
菫の目からは何の意志も感じられなかった。
とてもつまらない目をしていた。
やっぱりそういう謝罪なのだ。
とてもイライラした。好きをした。
「これで宥と間接キスだね」
嘘を吐いた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
菫の目からは何の意志も感じられなかった。
とてもつまらない目をしていた。
やっぱりそういう謝罪なのだ。
とてもイライラした。好きをした。
「これで宥と間接キスだね」
嘘を吐いた。
29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/31(水) 22:23:09.42 :gB/vfZ2Q0
>>28修正
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
菫の目からは何の意志も感じられなかった。
とてもつまらない目をしていた。
やっぱりそういう謝罪なのだ。
とてもイライラした。キスをした。
「これで宥と間接キスだね」
嘘を吐いた。
>>28修正
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
菫の目からは何の意志も感じられなかった。
とてもつまらない目をしていた。
やっぱりそういう謝罪なのだ。
とてもイライラした。キスをした。
「これで宥と間接キスだね」
嘘を吐いた。
31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/31(水) 22:31:17.72 :gB/vfZ2Q0
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
キスをされた。何を言っているのか分からなかった。
『これで間接キスだね』
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
何を言っている?
照は何を言っているんだ?
照の言葉が頭をぐるぐる回る。
顎から手を離し、照は歩いて行った。
私はまだ混乱している。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
キスをされた。何を言っているのか分からなかった。
『これで間接キスだね』
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
何を言っている?
照は何を言っているんだ?
照の言葉が頭をぐるぐる回る。
顎から手を離し、照は歩いて行った。
私はまだ混乱している。
35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/31(水) 22:39:45.98 :gB/vfZ2Q0
□ □ □ □ □
「ただいま」
と、声がしたので玄関に出る。
「お帰りなさい。大丈夫だった?」
しかし、何も答えない。表情まで凍っているかのよう。
「シチューできてるよ」
照ちゃんがかけっぱなしだった鍋について訊く。
「ありがとう。夕飯にしよう」
少し柔らかく言ってくれた。あったかい。
私はあったかい照ちゃんが好き。
あったかい菫ちゃんも、好き。
□ □ □ □ □
「ただいま」
と、声がしたので玄関に出る。
「お帰りなさい。大丈夫だった?」
しかし、何も答えない。表情まで凍っているかのよう。
「シチューできてるよ」
照ちゃんがかけっぱなしだった鍋について訊く。
「ありがとう。夕飯にしよう」
少し柔らかく言ってくれた。あったかい。
私はあったかい照ちゃんが好き。
あったかい菫ちゃんも、好き。
38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/31(水) 22:47:15.43 :gB/vfZ2Q0
「それで受験はどうだった?」
「よくわかんない」
「きっと宥なら受かってるよ」
「だったらいいなぁ」
受験生らしい会話。
受ける前からほぼ受かっている照ちゃんと、AOをたまたま受けた私。
そして、照ちゃんと一緒にいようとする菫ちゃん。
私が悪かったのかな。
「それで受験はどうだった?」
「よくわかんない」
「きっと宥なら受かってるよ」
「だったらいいなぁ」
受験生らしい会話。
受ける前からほぼ受かっている照ちゃんと、AOをたまたま受けた私。
そして、照ちゃんと一緒にいようとする菫ちゃん。
私が悪かったのかな。
39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/31(水) 22:49:35.18 :gB/vfZ2Q0
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
やっぱり飛び出したのはよくなかった。
帰り道で強く思った。宥1人にすべきでなかったと。
こうして夕飯を食べながらでも分かる。おかしい。
でも悪いのは彼女ではない。
悪いのは、菫と、嫉妬深い私だ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
やっぱり飛び出したのはよくなかった。
帰り道で強く思った。宥1人にすべきでなかったと。
こうして夕飯を食べながらでも分かる。おかしい。
でも悪いのは彼女ではない。
悪いのは、菫と、嫉妬深い私だ。
41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/31(水) 22:55:02.53 :gB/vfZ2Q0
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ただいま」
自宅の扉を開いて呟く。
すると、母がやってきて塾はどうしたなどと聞いてきたが、体調不良と応えておいた。
風邪に気をつけろという話を聞きながら、自室に戻る。
ベッドに寝転がる。制服の皺なんてどうでもよかった。
焦点の合わない目を天井に向けながら、唇に触れた。
感傷で温度が変わったりはしない。
いつも通りの私の唇だ。
初めては照だった唇だ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ただいま」
自宅の扉を開いて呟く。
すると、母がやってきて塾はどうしたなどと聞いてきたが、体調不良と応えておいた。
風邪に気をつけろという話を聞きながら、自室に戻る。
ベッドに寝転がる。制服の皺なんてどうでもよかった。
焦点の合わない目を天井に向けながら、唇に触れた。
感傷で温度が変わったりはしない。
いつも通りの私の唇だ。
初めては照だった唇だ。
44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/31(水) 23:05:36.47 :gB/vfZ2Q0
重い。ベッドの中だった。どうやら寝ていたらしい。
きっと母が入れてくれたのだろう。靴下も脱がされていた。
時計を見ると、10時。4時間程寝ていたらしい。
携帯を見るとメールが入っていた。
『あったかい菫ちゃんが好きだよ』
彼女にまで心配をかけてしまった。
最低だ。
重い。ベッドの中だった。どうやら寝ていたらしい。
きっと母が入れてくれたのだろう。靴下も脱がされていた。
時計を見ると、10時。4時間程寝ていたらしい。
携帯を見るとメールが入っていた。
『あったかい菫ちゃんが好きだよ』
彼女にまで心配をかけてしまった。
最低だ。
47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/31(水) 23:13:52.98 :gB/vfZ2Q0
□ □ □ □ □
1時になって寝ることになった。
お客さんはベッドだからと照ちゃんは言ったけど、
寒そうだから一緒に寝よって言ったら認めてくれた。
照ちゃんも寒がりなのかな?
照ちゃんの体温を感じながら切り出す。
「菫ちゃんと私が出かけたこと知ってたの?」
照ちゃんは答えない。でもそれは肯定と一緒だ。
「あれは遊びに行っただけだよ」
それでも何も言ってくれない。
「菫ちゃんはね、照ちゃんが大好きなんだよ」
「……うん」
□ □ □ □ □
1時になって寝ることになった。
お客さんはベッドだからと照ちゃんは言ったけど、
寒そうだから一緒に寝よって言ったら認めてくれた。
照ちゃんも寒がりなのかな?
照ちゃんの体温を感じながら切り出す。
「菫ちゃんと私が出かけたこと知ってたの?」
照ちゃんは答えない。でもそれは肯定と一緒だ。
「あれは遊びに行っただけだよ」
それでも何も言ってくれない。
「菫ちゃんはね、照ちゃんが大好きなんだよ」
「……うん」
49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/10/31(水) 23:24:21.06 :gB/vfZ2Q0
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
きっと諭されている。分かっている。宥はお姉ちゃんなのだ。
私と同じ。だから私だってそう言うと思う。
それでもやっぱり宥に嫉妬はある。宥が悪くないとわかっていても。
「私は、あったかい菫ちゃんとあったかい照ちゃんが好き」
宥はそういう人間なのだ。ずるい。だから嫉妬する。
「私と菫、どっちが好きなの?」
いじめたくて言ってしまった。
「今は……よくわかんない。でも、2人とも」
「いいよ、ごめん」
私は何と言って欲しかったんだろう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
きっと諭されている。分かっている。宥はお姉ちゃんなのだ。
私と同じ。だから私だってそう言うと思う。
それでもやっぱり宥に嫉妬はある。宥が悪くないとわかっていても。
「私は、あったかい菫ちゃんとあったかい照ちゃんが好き」
宥はそういう人間なのだ。ずるい。だから嫉妬する。
「私と菫、どっちが好きなの?」
いじめたくて言ってしまった。
「今は……よくわかんない。でも、2人とも」
「いいよ、ごめん」
私は何と言って欲しかったんだろう。
56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/01(木) 00:02:28.67 :I7RiDUos0
でも宥の言いたいことは分かる。
私も、菫とこのままでいたいわけじゃない。
待つくらいの気持ちはある。
でも宥の言いたいことは分かる。
私も、菫とこのままでいたいわけじゃない。
待つくらいの気持ちはある。
57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/01(木) 00:08:04.80 :I7RiDUos0
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
待っていた。朝の数時間なんて短いものだ。
それに照なら宥を送ってから来るだろう。
待つのは嫌いじゃない。
10分も待たずにやってきた。
「照、ちょっといいか」
「何か用?」
「後で時間をくれないか」
「わかった」
すぐに照は通りすぎていった。
隣には誰も居ない。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
待っていた。朝の数時間なんて短いものだ。
それに照なら宥を送ってから来るだろう。
待つのは嫌いじゃない。
10分も待たずにやってきた。
「照、ちょっといいか」
「何か用?」
「後で時間をくれないか」
「わかった」
すぐに照は通りすぎていった。
隣には誰も居ない。
60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/01(木) 00:14:56.73 :I7RiDUos0
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『もっと素直になった方がいいよ』
駅まで送って行ったら宥が言った。
それは菫にも言って欲しかった。
そんな風に思ったけど、菫が声をかけてきたのは宥から何かがあったのかもしれない。
しかし、訊いても否定するだろう。
菫が決めたことだと。
ここまでくると菫が羨ましく思えてくる。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『もっと素直になった方がいいよ』
駅まで送って行ったら宥が言った。
それは菫にも言って欲しかった。
そんな風に思ったけど、菫が声をかけてきたのは宥から何かがあったのかもしれない。
しかし、訊いても否定するだろう。
菫が決めたことだと。
ここまでくると菫が羨ましく思えてくる。
62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/01(木) 00:21:25.51 :I7RiDUos0
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
来るとわかっていると待つのは楽しい。
いや、照の顔が見られると思うと嬉しいだけかもしれない。
「待った?」
照が足早にやってきた。
「私の勝手に付き合ってもらったから」
来てくれただけで十分だと思う。
約束を破るとは思っていなかったが、正直ほっとした所はある。
「言っておきたいことがあって」
「また謝るつもり?」
混乱していたとはいえ、ただ謝るだけだった昨日の私が悔しい。
「照、好きだ」
先に行っておくべき言葉はこれだった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
来るとわかっていると待つのは楽しい。
いや、照の顔が見られると思うと嬉しいだけかもしれない。
「待った?」
照が足早にやってきた。
「私の勝手に付き合ってもらったから」
来てくれただけで十分だと思う。
約束を破るとは思っていなかったが、正直ほっとした所はある。
「言っておきたいことがあって」
「また謝るつもり?」
混乱していたとはいえ、ただ謝るだけだった昨日の私が悔しい。
「照、好きだ」
先に行っておくべき言葉はこれだった。
64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/01(木) 00:26:51.04 :I7RiDUos0
「うん」
照はそう応えるだけだった。
認めてはくれた。否定することはなかった。
もう一方通行になってしまっていたとしても。
それでも、心のどこかで期待していた。
照にも同じだと言って欲しかった。
「うん」
照はそう応えるだけだった。
認めてはくれた。否定することはなかった。
もう一方通行になってしまっていたとしても。
それでも、心のどこかで期待していた。
照にも同じだと言って欲しかった。
65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/01(木) 00:29:31.77 :I7RiDUos0
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「キスして」
そう言ってみた。
「今日は菫からキスして。それいいよ」
いつもキスするのは私からだった。
初めての時も、2回目の時も、そして昨日も。
キスがしたかったわけじゃない。
でも、菫からして欲しくなった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「キスして」
そう言ってみた。
「今日は菫からキスして。それいいよ」
いつもキスするのは私からだった。
初めての時も、2回目の時も、そして昨日も。
キスがしたかったわけじゃない。
でも、菫からして欲しくなった。
67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/01(木) 00:33:14.04 :I7RiDUos0
段々と近づいてくる菫の顔。
紅潮する頬。少し歪んでしまった口。閉じられた瞼。
どこにキスするつもりなんだろう。
そのまま行ったら鼻だ。
そうして唇が触れる。
あっ、と菫から息が漏れる。
目を開け、鼻にキスをしていたことに気付く。
飛び退いて、ごめんと謝る。
何だかおかしくなってキスをした。
困り顔の菫はいつも通り可愛かった。
段々と近づいてくる菫の顔。
紅潮する頬。少し歪んでしまった口。閉じられた瞼。
どこにキスするつもりなんだろう。
そのまま行ったら鼻だ。
そうして唇が触れる。
あっ、と菫から息が漏れる。
目を開け、鼻にキスをしていたことに気付く。
飛び退いて、ごめんと謝る。
何だかおかしくなってキスをした。
困り顔の菫はいつも通り可愛かった。
68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/01(木) 00:36:14.20 :I7RiDUos0
□ □ □ □ □
新幹線はもう東京を過ぎた。
菫ちゃんと照ちゃんはどうしているだろう。
春にはまたあったかい2人と会いたい。
それが私の幸せ。きっと、そう。
□ □ □ □ □
新幹線はもう東京を過ぎた。
菫ちゃんと照ちゃんはどうしているだろう。
春にはまたあったかい2人と会いたい。
それが私の幸せ。きっと、そう。
70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/01(木) 00:42:06.01 :I7RiDUos0
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
しばらくして、照と過ごす時間が少し増えた。
コミュニケーション不足なんて陳腐な言葉を使う気にはなれないが、足りない部分は確かにあった。
元々私も口が上手な方じゃない。誤解を受けたのもそのせいだ。
また、ただ漫然と受験勉強をするより、時間を作っててると過ごす方がメリハリが付いていい。
後は私が合格するだけだ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
しばらくして、照と過ごす時間が少し増えた。
コミュニケーション不足なんて陳腐な言葉を使う気にはなれないが、足りない部分は確かにあった。
元々私も口が上手な方じゃない。誤解を受けたのもそのせいだ。
また、ただ漫然と受験勉強をするより、時間を作っててると過ごす方がメリハリが付いていい。
後は私が合格するだけだ。
72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/01(木) 00:45:30.10 :I7RiDUos0
○ ○ ○ ○ ○
「おめでとう」
「おめでとう」
発表会場には照と宥がいた。
菫は驚きつつも礼を言う。
「これで一緒だな」
そういって、彼女は照を引き寄せるとキスをした。
「おめでとう」
宥がまた呟いた。
○ ○ ○ ○ ○
「おめでとう」
「おめでとう」
発表会場には照と宥がいた。
菫は驚きつつも礼を言う。
「これで一緒だな」
そういって、彼女は照を引き寄せるとキスをした。
「おめでとう」
宥がまた呟いた。
73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/01(木) 00:46:25.40 :I7RiDUos0
以上で終わりです
以上で終わりです
74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/01(木) 00:47:20.73 :EsEgIjGq0
乙
79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/01(木) 00:52:18.92 :uwc2DiD10
おつおつ!
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