照「う…。ごめんね。私の手違いで」

咲「ううん。いいの！こんなことが無ければ絶対こないところだったし、むしろ今はわくわくしてるよ」

照「ありがとう。咲、今日は本当になにもしないから、ゆっくり楽しんでほしい」

咲「う、うん…」

〜１時間前〜


照「どうしよう咲…ホテルの予約、私の手違いで明日からになってるみたい…」

咲「えぇ！？じゃあ今日は泊まれないの？」

照「うん…旅行シーズンだし、空き部屋無いって」

咲「そっか…」

照「咲、本当にごめん…」

咲「ううん。誰だってそうときもあるよ」

照「咲…」

咲「でも、今日はどうしよっか…こういうときってみんなは漫画喫茶に泊まったりするんだよね？」

照「！！せっかく二人っきりで旅行にきたのに、そんなことはさせられない」

咲「でも…」

照「ちょっと待って」iPad〜

咲「うん」

照「……あ」

咲「どうしたの？」

照「……」

咲「お姉ちゃん？」

照「……泊まるところは、ある」

咲「本当に！？」

照「咲、聞いて」

咲「どうしたの？急に改まって」

照「ホテルの予約を間違えたのは本当に手違いで、本当だったら咲とちょっといい部屋でゆっくりしたかったし、朝食バイキングも露天風呂も楽しみだったし、別に下心なんて全然なくてただ純粋に咲と旅行を楽しめたらなっていうか…」

咲「？全然話が見えないよお姉ちゃん…？」

照「つまり、その、すごく言いにくいんだけど…これ」iPad見せ〜

咲「！！」

照「その…俗に言う…」

咲「ラブホテルだね」

照「うん…」

咲「……」

照「咲、私なにもしないから。明日も明後日もあるのに、漫画喫茶とかカラオケじゃ絶対休まらないし、ベッドのあるところできちんと寝てほしい。ただ、それだけだから…」

咲（お姉ちゃん、なんだかいつもより饒舌な気が…）

照「本当になにもしないから…だから…」

咲「くすっ」

照「咲…？」

咲「あはは！そんなに繰り返したらかえってあやしいよ」

照「！！ちが…」

咲「うん。分かってるよ、私はお姉ちゃんの言葉を信じてる」

照「！！よかった…」

咲「じゃあ、行こっか？どんどん遅くなっちゃうよ？」

照「うん」

咲「あと、ありがとう。私のことを大切にしてくれて」

照「咲…ううん。当たり前。私は咲のお姉ちゃんなんだから」

咲「えへへ」

咲（…でも、別にそういうことになってもいいんだけどなぁ…）

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咲「すごいねー。テレビおっきい」

照「家の倍くらいあるね…」

咲「あはは、それは言い過ぎだよー」ﾊﾟﾁｯ

照「！！っ…咲…」

咲「ん〜？どうしたの？すごい！BSも映るよ！」

照「ううん。なんでもない（あ、そういうチャンネルが映るわけじゃないんだ…）」

咲「ディズニーチャンネルとか、見ると面白いねー」

照「そうだね」

咲「お姉ちゃんも一緒に見よー？」

照「ん。でもそれじゃ、家と変わらなくない？」

咲「家はディズニーチャンネル映らないよー」

照「そうだけど…こうやって、並んで、テレビ見て、いつもと変わらない」

咲「変わるよー」

照「なにが？」

咲「えーとね…あ」

咲「…お姉ちゃんはいつもと違うことがしたいの…？」

照「っ！咲…それはどういう…」

咲「あ、トムとジェリーだ。なつかしいね」

照「……」

咲「お姉ちゃん？座らないの？」

照「…そうだね」ｽﾄﾝ

咲「〜♪」

照（深い意味はなかったのかな…）

咲「〜♪」

照（咲、なんだか楽しそう）

咲「…とむ♪とむとむにゃーご♪」

照「………」

　（かわいい…！）

照「…た、楽しそうだね？」

咲「うん！」

照「それはよかった…」

咲「楽しいよー、すごく！」

照「…並んでテレビ見てるだけで？」

咲「……」ｼﾞ-ｯ

照（あ、蒸し返しちゃった…）

咲「う〜ん、えっとね、やってることはいつもと変わらないかもしれないけど、見ているテレビが違うし、座ってるとこともソファーじゃなくてベッドだし、明るさだって違うし、場所が違うだけですごく新鮮で楽しいよ」

照「そっか…」

咲「お姉ちゃんはあんまりそういうの気にしない…？」

照「うん…あんまり…」

咲「そっか…」

照「……」

咲「…でも！あとね、お姉ちゃんと二人っきりで、本当に二人っきりでいられることにね、なんか気持ちが高ぶってるっていうか…」

照「！！そ、それは分かる、私も嬉しい」

咲「本当に！？」

照「うん、分かる。分かるよ。私も高ぶってる」

咲「……」

照（あ、これ変な意味に…）

咲「そっかぁ。えへへ、そっかぁ」

照「咲！えっと、今のは」

咲「一緒だね」ｷﾞｭｳｯ

照「！？？？」

咲「ん…お姉ちゃん…」

照「咲…？」

咲「ね？本当に二人っきりなんだよ？もっとこうしたいよ…」

照「さ、さき…」ﾄﾞｷﾄﾞｷ

咲「なんて。普段はこんなこと絶対に言わないのになぁ」

照「……」

咲「えへへ、やっぱり浮かれてるね」

照（なにもしないって言ったけど…これは）ｺﾞｸﾘ

咲「ふぁあ…」

照「咲…（なにもしない方がおかしい）」ｸﾞｯ

咲「お風呂入ろ」ｽﾙｯ

照「…え？」ｽｶｯ

咲「明日も早いし、お風呂入って寝なきゃ。ね？」

照「そ…そうだね」

咲「お風呂見てくるねー」

照（さ、避けられた…？）

照（どうしよう…今の感じ、絶対避けられたよね…）

照（せっかく信じてるって言ってくれたのに、私…）

咲「すごい！お風呂も広かったよー」

照「！そ、そっか」

咲「シャワーだけでいいかなって思ってたんだけど、やっぱり浸かろうかなって」

照「そうなんだ」

咲「そうそう、泡風呂にもできるみたいだよ！私、泡風呂って初めてだなー」

照「そう…」

咲「あれ…？お姉ちゃんは興味ない？」

照「うん…私はシャワーだけでいいかな…」

咲「そっかぁ…一緒に入りたかったな…」

照「…え？」

咲「じゃあ、私もシャワーだけでいいかな…初めてならお姉ちゃんと入りたいし」

照「ま、待って！私も浸かるなら一緒に入るの？」

咲「うん。そのつもりだったけど」

照「じゃ、じゃあ、浸かる。泡風呂なんて次いつできるか分からない」

咲「本当！？」ｷﾗｷﾗ

照「うん」

咲「やったー」

照（もうこれ分からない…）

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照（落ち着こう私、咲の裸くらい何度も見たことあるし）

照（咲の気持ちはよく分からないけど、今日はなにもしないって言ったんだからなにもしない。そうしよう）

咲「どうしたの？お姉ちゃん、ぼーっとして」ｷｭｯ

照「！！なんでもない」ｻﾞｧｰ

咲「そう？なんだか一緒にお風呂に入るのも久しぶりだねー」ｻﾞｧｰ

照「そうだね」ｷｭｯ

咲「この歳で、一緒にお風呂に入る姉妹の方が珍しいのかもしれないけど」ﾜｼｬﾜｼｬ

照「うん…」ﾜｼｬﾜｼｬ

咲「離れてた時間が長かったからかなぁ…すごくこういうの好きだよ」ｺﾞｼｺﾞｼ

照「咲…」ｺﾞｼｺﾞｼ

咲「なんだか今日はいっぱい喋っちゃうなぁ」ｺﾞｼｺﾞｼ

照「咲……背中洗ってあげる」

咲「ありがとう、お姉ちゃん」

照「…咲、私も、離れてたからできなかったこと、してあげたいよ」ｺﾞｼｺﾞｼ

咲「お姉ちゃん…」

照「咲のために、なにかできたら、すごく嬉しい」ｺﾞｼｺﾞｼ

咲「ありがとう、お姉ちゃん」

照「ううん、私が嬉しいんだから、咲は気にせずして欲しいことを言ってくれればいい」

咲「えへへ、それは私も一緒だよ」

照「？？」

咲「今度は私が洗ってあげるよ」

照「ん。ありがとう」

咲「…私も、お姉ちゃんのためになにかできたら嬉しいよ、ってこと」ｺﾞｼｺﾞｼ

照「！そっか…」

咲「うん」ｺﾞｼｺﾞｼ

照「同じこと、思ってたんだね」

咲「えへへ、そうだね。流すよー」ｻﾞｧｰ

照「…咲が好きでよかった」ｻﾞｧｰ

咲「ん〜？なにか言った〜？」ｻﾞｧｰ

照「なんでもない」ｻﾞｧｰ

咲「そう？」ｷｭｯ

照「ん。じゃあ入ろっか、泡風呂」

咲「うん！」

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咲「うわーすごいすごい！テレビとかで見たのと同じだー」

照「ね。おいしそう」

咲「…食べられないよ？」

照「知ってる」

咲「そ、そうだよね…なんだか、ボタン多いね」

照「押してみよう」

咲「え？」

照「……」ﾎﾟﾁｯ

咲「うわぁ！光った！」

照「泡が染まって綺麗」

咲「ね。これ、電気消したらもっと綺麗なんじゃないかなぁ？」

照「たしかに」

咲「消してみよっか」

照「ん」ｶﾁｯ

咲「…きれい」

照「そうだね…」

咲「長野から出たことなんてほとんど無かったから、こんなの、見たことないや…」

照「長野の星空の方が綺麗だよ」

咲「うん…でもね。私が知ってたことって本当に狭い世界だったんだなぁって」

照「咲…」

咲「でね。こうやって初めてのものを見れるのがお姉ちゃんとで、本当に嬉しいよ」

照「……」

咲「ありがとう、お姉ちゃん」

照「咲、私も…」ﾌﾟﾁｯ

照「！？」

咲「真っ暗…」

照「咲、こっち」ｷﾞｭｯ

咲「ん…」

照「落ち着いて。時間で切れる仕組みなんだね。きっと」

咲「うん…」ｷﾞｭｩｯ

照「だいたい…この辺に…」

咲「……」

照「あった」ｶﾁｯ

咲「…ついたね」

照「ね」

咲「…あ」ｶｧｱｱ

照「っ！」ﾊﾟｯ

咲（そうだ、ここ…）

照（お風呂だった…）

咲「…すごいね。本当に面白いね」ﾎﾞｳﾖﾐ

照「よ、浴槽も広いしね」ｼﾄﾞﾛﾓﾄﾞﾛ

咲「こういうとこってどこもそうなのかな？」

照「分からない…」

咲「そうだよね…他のところも行ってみたいね」

照「ラ、ラブホテルに？」

咲「うん！思ってたより綺麗だし、安いし、楽しいし、また来たいなぁ」

照「そっか。咲がそう言うならまた来よう（あ、これ…）」

咲「本当！約束だよ？」

照「ん。約束する（私だけ意識しすぎてたのかも…）」

咲「えへへ、先のことを約束できるっていいね」

照「咲のためなら、いくらでもするよ」

咲「あはは、そんなこと軽く言っちゃダメだよ〜」

照「軽くない。咲以外と過ごす未来なんてない」

咲「今度は重いね…」

照「あ…ごめん…。別に咲にもそうしろって言ってるわけじゃないから…ただ私はそうだなって…」

咲「うん…分かってる。嬉しいよ。私もお姉ちゃんと過ごす未来以外なんて想像できない」

照「咲…！」

咲「お姉ちゃん…あのね」

照「うん」

咲「わたゃひ…」ｸﾗ〜

照「…え？」

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咲「ごめんね…なんだかのぼせちゃったみたい…」

照「私こそ、気づいてあげられなくてごめん…咲、あんまり長風呂しないもんね」

咲「うん。今日はなんだか楽しくて気づかなかったよ…」

照「そっか…。私はソファで寝るから、ゆっくり休んで？明日もあるんだし」

咲「え？一緒に寝ないの？」

照「二人じゃ休まらないでしょ？」

咲「ダブルだよ？いつもの家のやつより全然大きいよ？」

照「でも…」

咲「わ、私が！一緒にいてほしいっていうか…」

照「そ、そう…じゃあ、一緒に寝よっか」

咲「よっかたぁ」ﾎｯ

照「ここから、はみ出ないようにするから。私、寝相は悪くない」

咲「え？」

照「おやすみ」

咲「ま、待って！はやいよ！」

照「なにが？」

咲「旅行だよ！？初日だよ！？もっとおしゃべりしたいよー」

照「っ！」

咲「ね？もうほとんど目眩もしないし」

照「…咲」

咲「なに？お姉ちゃん」

照「正直に言う」

咲「うん」

照「ちょっと、これ以上くっつくと私の理性が…」

咲「…え？」

照「さっき、お風呂に入る前も、危なかった」

咲「そ、そうっだったんだ？」

照「咲、まだ顔赤いし、その、すごく、かわいい」

咲「そ、そんな…！」ｶｧｱｱｱ

照「咲が信じるって言ってくれたから、私は今日はそういうことはしたくない」

咲「お姉ちゃん…」

照「でも、どうしてもおしゃべりしたいなら」

咲「も、もういいよ」

照「私の手を縛ってほしい」

咲「……………え？」

照「そしたら、私は絶対なにもできない」ｷﾘｯ

咲「……」

照「はい」

咲「い、いいよそんな…」

照「……」ｼﾝｹﾝ

咲「えー…」

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照「……」ｽﾔｽﾔ

咲「本当に、両手縛ったままおしゃべりとか…」

照「……」ｽﾔｽﾔ

咲「私の方が変な気持ちになるよ」

照「……」ｽﾔｽﾔ

咲「くすっ」

照「……」ｽﾔｽﾔ

咲「私は別に、そうなってもよかったのになぁ」

照「……」ｽﾔｽﾔ

咲「お姉ちゃん、かわいい…」ｽﾙ〜

照「……」ｽﾔｽﾔ

咲「…やめておこう。明日もあるし」

照「……」ｽﾔｽﾔ

咲「せっかく、我慢してくれたんだもんね」

照「……さき…」ﾑﾆｬﾑﾆｬ

咲「えへへ、私も寝よ」

照「……」ｽﾔｽﾔ

咲「おやすみ、お姉ちゃん」





カン