ありす「ええ……」

文香「……ごめんなさい。本当は手が止まっているようなので、声をかけました」

ありす「なるほど。さすがですね」

文香「……それと、家康は後に源氏の氏長者になりますが、一時は藤原氏を名乗ったりもしていますよ」

ありす「へえ……」

文香「後の天下人だけに、時流を読むに長けていると言いますか……変節しやすいと言いますか……」

ありす「節操無しですね」

文香「ふふっ……。そうかもしれません」

仁美「サルとタヌキの話と聞いて！」



丹羽仁美（18）

ありす「合戦の話とか傾奇者の話とかしませんからお引き取りください」

仁美「……むう、史実厨め……」

文香「……え？　え？」

ありす「気にしないでください。それで、ええと、なんでしたっけ」

文香「あ、はい。皆さんの名簿なんですけれど」

ありす「名簿ですか……」

文香「はい。これです」

ありす「名簿というよりは、これは宣材写真のファイルですね」

文香「……皆さんのお顔とお名前を覚えるにはこれがいいってプロデューサーさんが」

ありす「……まあ、間違ってはいないですね」

文香「……皆さんのキャッチフレーズなんかも載ってますし……。橘さんは、『小さな妖精』……ですか」

杏「んー？」




双葉杏（17）


ありす「や、止めてください！　恥ずかしいので！……あと、双葉さんは呼んでませんから、そっちでだらだらしててください」

杏「ほーい」

文香「……？」

ありす「うちは騒がしいので、いちいち構っていると話が進みませんよ」

文香「……そ、そういうものですか。私も慣れなきゃいけませんね」

ありす「……あまり染まりすぎるのもどうかと思いますが」

文香「はあ。……ええと、それで、これを見て、皆さんの名前を覚えようとしているんですけど」

ありす「まじめですね」

文香「……お話しするのがあまり得意ではないもので……。名前と顔を覚えておけばまだなんとかなるかも……と」

ありす「なるほど」

瑞樹「わかるわ」




川島瑞樹（28）


ありす「無理矢理過ぎませんか、川島さん」

瑞樹「絡めそうになかったから、早めにぶっこんでみたわ」

ありす「さすがです」

瑞樹「ありがとう」

文香「……ええと」

ありす「川島さんは、一見落ち着いているように見えますが……実はああいう人です」

文香「……な、なるほど」

瑞樹「わか……」

ありす「天丼は結構です」

瑞樹「ちぇーっ……」

文香「……ふふっ」

ありす「いい加減進めましょう。それで、そのファイルがなにか？」

文香「……はい。ふりがなが振ってなくて……。それで、橘さんに名前の読み方を教えてもらおうと」

ありす「ははあ」

文香「人名は特殊な読みも多いですし」

ありす「そうですね。……私のように平仮名なら、読みに関しては問題ないのでしょうが」

文香「……平仮名の名前は、柔らかな印象があります。橘さんのお名前も」

ありす「……そうでしょうかね。柔らかいと言えば聞こえはいいですが、子供っぽいというか、浮き世離れしているというか……」

あい「ふむ」

いつき「ふむふむー」




東郷あい（23）



真鍋いつき（22）


ありす「あ、い……え、そ、その……。ち、違います！」

文香「た、橘さん？」

ありす「あいさんやいつきさんみたいな元々名前としてあったものを開くのではなく、私みたいな日本人とはかけ離れた……」

きらり「にょわ？」

のあ「……」




諸星きらり（17）



高峯のあ（24）

ありす「あぅ……」

文香「……あ、あの、皆さん……」

のあ「……心配することはない。皆、ありすが可愛いだけ」

ありす「な、な、なにを言ってるんですか!?」

あい「さ、邪魔をしてもいけない。我々は下がろう」ｽﾀｽﾀ

ありす「うー……」

文香「橘さん？」

ありす「つ、次行きますよ、次！」

文香「あ、はい……」

ありす「カタカナの人も問題はありませんね。ああ、菲菲さんにはさすがにふりがながありますか。じゃあ、海外出身やハーフの方は問題ないと」

文香「名前がわかっても……言葉の壁が……」

ありす「基本的に外国出身の方もハーフの方も、みんな日本語はわかるはずですよ」

文香「そうなんですか？」

ありす「アーニャさんみたいにロシア語が出ちゃう人もいますけど、こちらの話はわかってますから」

文香「ふむふむ……」

アナスタシア「Вставай проклятьем заклейменный～♪
Весь мир голодных и рабов ♪」




アナスタシア（15）


文香「……あ、あの歌は……」

ありす「はい？」

文香「い、いえ……」

（参考）

ありす「ちなみに、カタカナでも、レナさんやネネさんは、純日本人です」

文香「そうなんですね」

ありす「そういえば、ネネさんには妹さんがいらっしゃるそうなのですが」

文香「はい」

ありす「その妹さんの名前がヌヌさんだと言ってくる人がいるかもしれませんが、信じてはいけません」

文香「……ぬ、ヌヌ？」

菜々「菜々でーす」

仁奈「仁奈でごぜーます！」

ネネ「ネネ……です」

乃々「NoNo……」

ありす「……と、この四人がいるのだから、ヌヌくらいいてもおかしくないだろうと」

文香「そ、そう言われるんですか」（信じたんだ……）

仁奈「どーしても五人組をつくらないといけないときは、杏おねーさんを入れやがります！」

杏「杏、『ヌヌバ』じゃないから！」

安部菜々



市原仁奈（9）



通りすがりの我那覇響さん（友情出演）



栗原ネネ（15）



森久保乃々（14）

ありす「えー、そんなわけで、漢字勢ですね」

文香「……あ、はい」（なんか見慣れない人がいたけど……）

ありす「ぱっと見、難しいのは成宮由愛さんでしょうか」

文香「ゆめさん……13歳なんですね」

ありす「はい。あそこでスケッチしているのがそうです」




成宮由愛（13）


ありす「その由愛さんの周りにスケッチ素材として毒々しいきのこを置いて回ってるのが、星輝子さんです。てるこではありません」

文香「しょうこさん……」




星輝子（15）

周子「八つ橋食べる？」

ありす「あなたはしゅうこです。八つ橋はいただきます」

文香「ありがとうございます」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

都「ここに証拠が！」

ありす「探偵は呼んでません」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

都「なんとっ！　あ、私も八つ橋いただきます」ﾓｸﾞﾓｸﾞ




塩見周子（18）



安斎都（16）

文香「……おいしいですね。八つ橋」

ありす「周子さんは京都の和菓子屋の娘さんです。この八つ橋もご実家のものだと思います」

文香「……へぇ……」

ありす「さて、次に行きましょう」

文香「はい」

ありす「そうですね……。たとえば、柳清良さんは、きよら、です。せいらというと別の人が出てきてしまいます」

聖來「呼んだー？」

ありす「ほら」

文香「……ほんとですね。ふふっ」

聖來「んー？」




柳清良（23）



水木聖來（23）

ありす「いえ、清良さんと聖來さんで取り違えそうになるという話で」

聖來「同い年だしねっ！」

ありす「……そういえばそうでした」

聖來「なにかなー、その反応ー？」

ありす「いえ。そういえば、聖來さんの漢字も難しいですよね」

聖來「んー。まあ、『来』と一緒なんだけどね」

文香「『來』は『来』の異字体ですね」

ありす「そうなんですか。勉強になります」

聖來「字っていえば、凛ちゃんも間違われやすいよね」

文香「渋谷凛さん……。ノ木偏の凜もありますね、確かに」

ありす「にすいが取れちゃったりもあるかもしれませんね」

聖來「でも、ノ木偏の凜のほうが人名漢字に入るのは早かったんだけどね。実は、そっちが正字なんだよ」

ありす「へぇ……」

聖來「と、豆知識を置いて、アタシは去るのだ。わんこの散歩行ってきまーす」

文香「……行ってらっしゃい」

ありす「いってらっしゃい。さて、それではちょうど話題が出たので、間違えやすい漢字の方も挙げましょうか」

文香「……はい。失礼があるといけませんから」

ありす「読めるけど、間違われやすい、というのは、やはり、緒方智絵里さんですかね」

文香「智絵里さん……」

ありす「……」

文香「……？」

ありす「……ああ、智絵里さんが来るかと思いましたが、ロケに出てるんでした」

千枝「……チョップ、です。えい」

文香「……あの、なにをやってらっしゃるんですか？　ええと、佐々木さん？」

千枝「……やらなきゃいけないような気がして」

ありす「そ、そうですか」




緒方智絵里（16）



佐々木千枝（11）

ありす「智絵里さんが間違えられやすいのは、『智恵』という単語にひっぱられるのと、アイドルの先輩で『絵理』という方がいらっしゃることでしょうか」

文香「……水谷絵理さん、でしたか」

ありす「はい。876プロダクションの売れっ子さんです」

文香「……似た名前の有名人がいると、たしかに……」

ありす「難しいですよね。あとは……伊集院惠さんですかね」

文香「惠さん……。ああ、恵ではないんですね」

惠「正直、間違えられても、そこまで気にならないけど」




伊集院惠（21）


文香「……そう、なんですか？」

惠「それより、この宣材写真、いい加減撮り直したいのよね。なんだか、頭おかしいのかと挑発してるみたいじゃない？」

ありす「ま、まあ、そう見ようと思えば……」

文香「……でも、かっこいいです……」

惠「そう？　そう言ってくれるのはありがたいけどね。まあ、今度ケイトと一緒になにか出来ないか、彼に聞いてみましょう」

ありす「……」

文香「……？　どうしました？」

ありす「いえ、やはり大人の人だな、と。あの余裕のある感じとか……」

文香「それは……みなさん、いろいろな経験を積んでらっしゃるのでしょうから……」

ありす「……そうですね」

文香「……早く大人になりたいですか？」

ありす「……そんな気もしますし、そううまくいくものでもない気もします」

文香「……そこがわかっていれば、大丈夫ですよ」

ありす「……そうですかね。ええと、話を戻します」

文香「はい」

ありす「あとは、読みにくいのは、やっぱり、愛海（あつみ）さん、茄子（かこ）さん、雪菜（せつな）さんでしょうか。このあたりは……」

棟方愛海（14）



鷹富士茄子（20）



井村雪菜（17）



佐城雪美（10）

ありす「……あとは、気をつけないといけないのは……。これは苗字ですが、佐城（さじょう）さんですかね」

文香「……さしろと読んでしまいそうですからね」ﾒﾓﾒﾓ

ありす「ええ。……うーん。これでだいたいは説明できたんじゃないかと……。たぶんですけど」

文香「……ありがとうございます。私のためにお時間を使わせて」

ありす「……いえ。改めて皆のことを話すのは、それはそれで楽しかったですから」

文香「……本当ですか？……よかった」

ありす「……名前のことを、私に訊いてくるのは……正直、意外でしたが」

文香「……ええと？　なにかいけないことをしてしまいましたか？」

ありす「……いえ、鷺沢さんが知らないならいいんです」

文香「……あの、それなんですが」

ありす「はい？」

文香「もしよければ、文香と呼んでもらえませんか」

ありす「名前で、ですか」

文香「はい」

ありす「……わかりました。……ふ、文香さん」

文香「ありがとうございます。あ、それと」

ありす「はい？」

文香「橘さんのお名前は、とても素敵だと思います。私は大好きですよ」

ありす「知ってるんじゃないですかあっ！」

文香「……ふふっ」


　おしまい

以上です。
なんとなく日常を書いてみたかった。