蚊A「目標の太ももに到達。着陸作業に移る」

蚊C「気を緩めないで。ﾓｽｷｰﾄ2は耳周辺でﾓｽｷｰﾄ1がサルベージ開始するまで待機せよ」

蚊B「了解。枕の脇に着陸。以降指示があるまで待機する」

蚊A「ファイナルアプローチに入った。着陸する」

蚊A「サルベージ準備。脚を固定。ドリルセット。照準合わせ。ライト･オールグリーン。サルベージ開始する」ﾌﾟｽｯ

蚊C「サルベージ開始を確認。ﾓｽｷｰﾄ2へ伝達。目標の耳周辺を旋回してﾓｽｷｰﾄ1の存在を撹乱して」

蚊B「了解した。離陸して目標に近付く」

蚊C「ﾓｽｷｰﾄ2へ……気を付けて」

蚊B「こちらﾓｽｷｰﾄ2。よく聞こえなかった。言葉の最初と最後に"I Love You"と付けてもう一度復唱してくれ」

蚊C「……こちらﾓｽｷｰﾄ3。通信終わり」

蚊A「全ﾓｽｷｰﾄへ。サルベージ率45%。目標の皮膚に炎症もとむ」

蚊C「気を付けてﾓｽｷｰﾄ2。そろそろ目標が活動を開始する」

蚊B「任せろﾓｽｷｰﾄ3。寝ぼけ眼に捉えられるような飛び方はしない」

蚊C「油断しないでﾓｽｷｰﾄ2。目標は既に………、避けて!!!ﾓｽｷｰﾄ2!!!」

蚊B「なっ……!!!」

目標「何だよ蚊かよ、ウゼェー、どっか行けよ」ﾌﾞﾝﾌﾞﾝ

蚊C「ﾓｽｷｰﾄ2へ。目標は活動を開始した!!回避に専念して!!!」

蚊B「言われなくても既にやっているﾓｽｷｰﾄ3。安心しろ、耳元で飛び回るのは得意だ」

蚊A「こ、こちらﾓｽｷｰﾄ1!!サルベージはまだ53%!!!目標値に達していない!!!」

蚊C「聞いたわねﾓｽｷｰﾄ2。もう少しだけその特技を披露し続けて」

蚊B「……これけっこう疲れるから、出来ればちょっと急いでほしいかな」

蚊B「うぉっ!!!そろそろキツいかも……」

蚊C「ﾓｽｷｰﾄ1へ。サルベージ率を知らせ」

蚊A「68%です!!!まだ目標値には……」

蚊B「ぐわぁァァァァァァァっ!!!」ﾍﾟﾁﾝ

蚊C「ﾓｽｷｰﾄ2!!どうしたﾓｽｷｰﾄ2!!応答して!!!」

蚊B「こ、こちらﾓｽｷｰﾄ2。左翼に被弾した。損傷から飛行不能と判断。繰り返す、飛行不能」

蚊C「そ、そんな……すぐにそこから脱出して!!!目標は既にアナタを標的と活動している!!!」

蚊B「こちらﾓｽｷｰﾄ2。脱出も不可能と判断。どうやら墜落の衝撃で脚も破損したようだ、ﾋﾟｸﾘともしない」

蚊C「分かった。すぐに助けに向かう。ﾓｽｷｰﾄAはサルベージを継続……」

蚊B「駄目だ!!!来るな!!!」

蚊C「でもこのままではアナタが!!!」

蚊B「俺はもう駄目だ。お前の機体では私を背負うことは出来ない。来るだけ無駄なんだ!!!」

蚊A「では僕もサルベージを破棄して救助に……」

蚊C「ﾓｽｷｰﾄ1、アナタの機体はサルベージを破棄する造りになっていない。それは不可能です」

蚊B「そうだﾓｽｷｰﾄ1。貴様の機体はサルベージの為の物だ。古兵をおんぶする為の物じゃない」

蚊A「でもこのままアナタを見捨てるなんて!!!僕には出来ません!!!」

蚊C「ﾓｽｷｰﾄ1。サルベージを続行せよ」

蚊A「何を言っているんです!!このままでは……」

蚊C「同じことを二度言わせるなﾓｽｷｰﾄ1。任務を続行せよ、私はこれよりアナタのサポートに全力を尽くす」

蚊B「いいねぇ、その仕事一辺倒な感じ。そこに惚れたんだ」

蚊C「ﾓｽｷｰﾄ2へ。無線の調子がおかしいようです。これより無駄口は禁止」

蚊B「へいへい……」

蚊A「サルベージ率。80%を突破。あと20%です!!!」

蚊C「了解ﾓｽｷｰﾄ1。最終行程前に脚の固定を解除、脱出の準備に入れ」

蚊A「了解、脚の固定を解……」

蚊B「いかん!!!固定を解除するな!!!」

蚊A「え？」

目標「あれ？なんか太もも痒くね？これ蚊に刺されてね？」

蚊A「うわァァァァァァァ!!!地面が傾いて!!!」

蚊C「いけない!!!ﾓｽｷｰﾄ1!!!緊急固定装置を射出!!踏みとどまって!!!」

蚊A「りょ、了解!!固定装置射出します!!!」

蚊B「はぁ、せっかくここでゆっくり死ねると思ってたのに。最後の最後まで仕事か……」

蚊C「ﾓｽｷｰﾄ2？」

蚊B「こちらﾓｽｷｰﾄ2。これより目標の頬に張り付く。ﾓｽｷｰﾄ1はその内に脱出しろ」

蚊C「正気！？そんなことしたらアナタは間違いなく死ぬ!!!」

蚊B「若造がやられかけてるのに呑気に寝てられるか!!!いいからお前はﾓｽｷｰﾄ1をサポートしろ!!!」

蚊C「……分かった。御武運を」

蚊B「動くのは右羽だけ、脚も損壊。どこまで行けるか……」

目標「んだよこれマジ刺されてね？なんか太もも痒くね？」

蚊B「いくぞっ!!!食らいやがれ!!!」

目標「うわっ!!!ほっぺたになんかくっついた。なんだこれ蚊？これ蚊じゃね？」

蚊C「今よﾓｽｷｰﾄ1!!!脱出して!!!」

蚊A「了解!!!ﾓｽｷｰﾄ1、目標から緊急脱出!!!」ﾌﾞｰﾝ

蚊C「ﾓｽｷｰﾄ2へ、ﾓｽｷｰﾄ1は脱出した。アナタもすぐ脱出を……」

蚊B「無理だ。さっきので右羽も破損。固定装置で目標とガッチリ抱き合ってる」

蚊A「そんな…な、なんとかして救助しますから」

蚊B「無理だ。さっきも言ったはずだ」

蚊C「くっ……私がもっとしっかりサポートを行っていれば!!!」

蚊B「そうだな……」

蚊A「先輩。それはちょっと酷いと思いますよ……」

蚊B「とにかく、もう俺はここから動けない。お前たちだけで行け」

蚊A「でも……」

蚊B「いいから行け。少ない時間だから最後は一人でゆっくりしたい」

蚊C「……分かった。アナタの意思を尊重します」

蚊A「ﾓｽｷｰﾄ3!!正気ですか!!!」

蚊C「このままこの場にいては私達の身も危険。ﾓｽｷｰﾄ2の命を無駄にしてはならない」

蚊A「でも…!!」

蚊B「いいから早く行け!!!早くしないと目標がお前たちまで……」

目標「あー、もう頬の蚊マジうぜー。もういいわ汚いけど潰すわ」ﾍﾟﾁﾝ

蚊B「あっ……」

蚊A「ﾓｽｷｰﾄ2!!!ﾓｽｷｰﾄ2ーｯ!!!」

蚊C「ﾓｽｷｰﾄ1、帰投準備に入れ……」

蚊A「アナタはどこまで薄情なんだ!!!ﾓｽｷｰﾄ2は…ﾓｽｷｰﾄ2は……」

蚊C「彼の死と決意を無駄にしないで!!!私達は彼がやり遂げるはざだった任務を完了させなければならないの!!!」

蚊A「……了解しました。帰投準備に入ります」

蚊C「ありがとう……」

蚊も生きるためにこのような壮絶なドラマと命のやり取りを繰り広げているのです

～完～