2: ◆ng2Oz8aFCM:2014/03/25(火) 22:32:52.38 :7dJgv5JR0
あの人のことが好き。どうしようもなく、好き。
どこが、と聞かれたら困ってしまう。だって、全部なんだから。
みく「……すき」
ぽつりと。誰にも聞かれないくらい小さな声で、こうやって時々こぼさないといけない。
そうしないと、いつか想いが溢れてしまうから。溢れてしまえば、あの人を困らせてしまう。
あの人の迷惑になってしまう。
あの人を、困らせたくない。
胸の奥に想いをしまいこんで、気づかれないように、見つからないように、気丈に明るくふるまう。
でも、それだって限界はある。あの人の顔をみるたびに、顔があつく火照る。
話しかけられるたびに、うれしさが、しあわせが、みくの中の想いの器に注がれていくのだ。
あの人のことが好き。どうしようもなく、好き。
どこが、と聞かれたら困ってしまう。だって、全部なんだから。
みく「……すき」
ぽつりと。誰にも聞かれないくらい小さな声で、こうやって時々こぼさないといけない。
そうしないと、いつか想いが溢れてしまうから。溢れてしまえば、あの人を困らせてしまう。
あの人の迷惑になってしまう。
あの人を、困らせたくない。
胸の奥に想いをしまいこんで、気づかれないように、見つからないように、気丈に明るくふるまう。
でも、それだって限界はある。あの人の顔をみるたびに、顔があつく火照る。
話しかけられるたびに、うれしさが、しあわせが、みくの中の想いの器に注がれていくのだ。
3: ◆ng2Oz8aFCM:2014/03/25(火) 22:33:51.63 :7dJgv5JR0
P「どうした、みく?」
みく「な、なんでもないにゃ!」
ほら、気づかれそうになった。危ない危ない。でも、その危うさにみくは快感さえ覚えている。
おへその下あたりがきゅんきゅんと疼いている。
恋のドキドキ。気づいてほしい、とみくの中の女が叫んでいるのだ。
P「それならいいが、体調には気をつけろよ?」
大事な体なんだから、と彼は続けた。
くらくらする。倒れてしまいそう。自分の体のことを気遣われただけで、こんなにしあわせ。
自分が少女マンガの主人公にでもなってしまったようだ。彼が王子様で、みくがヒロイン。
陳腐で使い古されたかもしれないけれど、あこがれる夢。
それじゃあな、と彼は手を振りながら出かけていった、たぶん、別のアイドルを迎えにいくんだろう。
みくのことだけ、見てくれたらいいのに。
無理なのは分かっているけれど。
P「どうした、みく?」
みく「な、なんでもないにゃ!」
ほら、気づかれそうになった。危ない危ない。でも、その危うさにみくは快感さえ覚えている。
おへその下あたりがきゅんきゅんと疼いている。
恋のドキドキ。気づいてほしい、とみくの中の女が叫んでいるのだ。
P「それならいいが、体調には気をつけろよ?」
大事な体なんだから、と彼は続けた。
くらくらする。倒れてしまいそう。自分の体のことを気遣われただけで、こんなにしあわせ。
自分が少女マンガの主人公にでもなってしまったようだ。彼が王子様で、みくがヒロイン。
陳腐で使い古されたかもしれないけれど、あこがれる夢。
それじゃあな、と彼は手を振りながら出かけていった、たぶん、別のアイドルを迎えにいくんだろう。
みくのことだけ、見てくれたらいいのに。
無理なのは分かっているけれど。
5: ◆ng2Oz8aFCM:2014/03/25(火) 22:35:12.08 :7dJgv5JR0
ソファーに深く体を埋めて、ぼんやりと天井を見る。かたかたとキーボードの音。
ちひろさんが淡々と事務仕事を消化しているのだろう。
秒針の音も聞こえる。レッスンまではかなり時間があった。
でも、少しでも長くあの人の顔を見たくて、こんなに早く来てしまった。最近はいつもそう。
みく「……にゃー」
想いをはせる。こんなに人を好きになったことはなかった。15年生きてきて、一度も無い。
もちろん、好きな人が出来たことはある。学校の同級生や、先輩。
しかし、それは愛というよりは、憧れに近いものだった。事実、すでに彼らには恋人がいると聞いても、たいして傷つきはしなかった。
でも、今のこの想いはちがう。あの人の全てが愛しい。恋しい。
あの人のためなら、自分の大切なもの全てを差し出してもいいと思えるほど。
――みくの体でさえも。
ソファーに深く体を埋めて、ぼんやりと天井を見る。かたかたとキーボードの音。
ちひろさんが淡々と事務仕事を消化しているのだろう。
秒針の音も聞こえる。レッスンまではかなり時間があった。
でも、少しでも長くあの人の顔を見たくて、こんなに早く来てしまった。最近はいつもそう。
みく「……にゃー」
想いをはせる。こんなに人を好きになったことはなかった。15年生きてきて、一度も無い。
もちろん、好きな人が出来たことはある。学校の同級生や、先輩。
しかし、それは愛というよりは、憧れに近いものだった。事実、すでに彼らには恋人がいると聞いても、たいして傷つきはしなかった。
でも、今のこの想いはちがう。あの人の全てが愛しい。恋しい。
あの人のためなら、自分の大切なもの全てを差し出してもいいと思えるほど。
――みくの体でさえも。
6: ◆ng2Oz8aFCM:2014/03/25(火) 22:36:38.89 :7dJgv5JR0
ひやり。冷たい感触がした。もしや、と思う。
弾みをつけてソファーから体を起こした。
ちひろ「みくちゃん、どうしたの?」
みく「ちょっとお花摘みにいってくるにゃー」
トイレの便座に座って、下着を下ろした。
ちゅく、と小さな水音。やはり、濡れていた。
あの人のことを考えただけでこんな風になってしまうほど、みく溺れているのだ。そう思った。
みくも気づかないところで、だんだんと想いが形になって溢れているのかも、とも。
気づいたら、手が伸びていた。ちゅく、ちゅくと指でさわる。ダメだ、と思ってもやめられない。
みくは自らの指を、あの人の指に重ねて感じていた。
秘裂を指でなぞり、肉芽を爪でこする。びりびりと電撃に似た衝撃が襲った。
きもちいい。
ひやり。冷たい感触がした。もしや、と思う。
弾みをつけてソファーから体を起こした。
ちひろ「みくちゃん、どうしたの?」
みく「ちょっとお花摘みにいってくるにゃー」
トイレの便座に座って、下着を下ろした。
ちゅく、と小さな水音。やはり、濡れていた。
あの人のことを考えただけでこんな風になってしまうほど、みく溺れているのだ。そう思った。
みくも気づかないところで、だんだんと想いが形になって溢れているのかも、とも。
気づいたら、手が伸びていた。ちゅく、ちゅくと指でさわる。ダメだ、と思ってもやめられない。
みくは自らの指を、あの人の指に重ねて感じていた。
秘裂を指でなぞり、肉芽を爪でこする。びりびりと電撃に似た衝撃が襲った。
きもちいい。
7: ◆ng2Oz8aFCM:2014/03/25(火) 22:38:13.66 :7dJgv5JR0
みく「……にゃ……ふ……」
唇を噛み、声を漏らさないように。分かっている。事務所のトイレでするなんて、とんだ発情猫だ。
こんなところ、ファンには絶対に見せられない。それに、こんなことを知られたら、あの人にも引かれてしまうだろう。
でも、ダメだ。みくの中の女が、指を動かし続けろと命じてくる。
みく「はふ……にゃ……ッ」
快感の波が押し寄せて、みくはさらに指をはやくする。ちゅく、ぢゅく、くちゃりと、狭い個室に水音が響く。
この指はあの人のもの。あの人が、みくを見つめていじっているのだ。
目を閉じると、その妄想はより輪郭を濃くして、みくの感情をさらに昂ぶらせた。
みく「ふにゃ……ッ」
びくん、と全身が震えてみくは達した。熱い吐息が口から零れる。
快感の余韻に浸りながら、からからとトイレットペーパーを取り出して丁寧に拭く。
少し、長すぎるトイレになってしまったかもしれない。
みく「……にゃ……ふ……」
唇を噛み、声を漏らさないように。分かっている。事務所のトイレでするなんて、とんだ発情猫だ。
こんなところ、ファンには絶対に見せられない。それに、こんなことを知られたら、あの人にも引かれてしまうだろう。
でも、ダメだ。みくの中の女が、指を動かし続けろと命じてくる。
みく「はふ……にゃ……ッ」
快感の波が押し寄せて、みくはさらに指をはやくする。ちゅく、ぢゅく、くちゃりと、狭い個室に水音が響く。
この指はあの人のもの。あの人が、みくを見つめていじっているのだ。
目を閉じると、その妄想はより輪郭を濃くして、みくの感情をさらに昂ぶらせた。
みく「ふにゃ……ッ」
びくん、と全身が震えてみくは達した。熱い吐息が口から零れる。
快感の余韻に浸りながら、からからとトイレットペーパーを取り出して丁寧に拭く。
少し、長すぎるトイレになってしまったかもしれない。
8: ◆ng2Oz8aFCM:2014/03/25(火) 22:40:09.63 :7dJgv5JR0
ちひろ「お帰りなさい。顔が赤いけれど、どうしたの?」
みく「にゃっ!? な、なんでもないにゃ~♪」
あわてて取り繕う。笑顔がひきつっていたかもしれない。ちひろチャンは眉をひそめ、訝しげにみくを見ていた。
ちひろ「……最近、みくちゃんの様子がおかしいのは知ってますよ。何でも相談に乗るから、言ってみて?」
ぎくり、と背中に冷たいものが流れた。言い訳をしようと口を開くが、声がかすれて出ない。
思わず伸ばした右手も、やり場を失ってにぎにぎとしている。
人間、咄嗟に何かを言おうとしても出ないものなのかと、半ば他人事のように感じていた。
もう言うしかない。このまま決壊ギリギリの想いを抱えていては、いつかボロが出るだろうとは考えていた。
ジュースでいっぱいのコップの中にさらに注ごうとするようなものだ。誰も飲んでくれないのに注いでしまえば、一気にこぼれてしまう。
そうすれば遅かれ早かれ、あの人には気づかれてしまうから。
だったらせめて、あの人にバレる前に相談しよう。そうして、コップの容積を広げよう。
心に決めた。
ちひろ「お帰りなさい。顔が赤いけれど、どうしたの?」
みく「にゃっ!? な、なんでもないにゃ~♪」
あわてて取り繕う。笑顔がひきつっていたかもしれない。ちひろチャンは眉をひそめ、訝しげにみくを見ていた。
ちひろ「……最近、みくちゃんの様子がおかしいのは知ってますよ。何でも相談に乗るから、言ってみて?」
ぎくり、と背中に冷たいものが流れた。言い訳をしようと口を開くが、声がかすれて出ない。
思わず伸ばした右手も、やり場を失ってにぎにぎとしている。
人間、咄嗟に何かを言おうとしても出ないものなのかと、半ば他人事のように感じていた。
もう言うしかない。このまま決壊ギリギリの想いを抱えていては、いつかボロが出るだろうとは考えていた。
ジュースでいっぱいのコップの中にさらに注ごうとするようなものだ。誰も飲んでくれないのに注いでしまえば、一気にこぼれてしまう。
そうすれば遅かれ早かれ、あの人には気づかれてしまうから。
だったらせめて、あの人にバレる前に相談しよう。そうして、コップの容積を広げよう。
心に決めた。
9: ◆ng2Oz8aFCM:2014/03/25(火) 22:42:38.06 :7dJgv5JR0
みく「実は、にゃ」
そこで一呼吸置いて、心に溜めておいたあの人への想いを、一気にちひろチャンに吐き出していった。
どうしようもなくあの人のことが好きなこと。
みくの中の女が、みくに囁いてくること。
――みくの全てを差し出してもいいということ。
さすがにさっきの自慰のことは言わなかったけれど、ちひろチャンは笑いもせず、真剣なまなざしでみくの言葉を受け止めてくれていた。15歳の女の子の戯言だと、相手にしなくてもよかったのに、本当に真剣に聞いてくれた。
みく「だから、隠さないといけなかったにゃ。みくは、みくはあの人を困らせたくない。あの人が、Pチャンのことがすきだから。
だから、だからね……」
そこから先は続ける事ができなかった。涙がとめどなく流れる。手で顔を覆っても、隙間からぽたぽたと零れるのだ。涙は頬を伝って、みくの服を濡らしていく。
ちひろチャンは何もいわず席をたって、みくの頭を優しく撫でてくれた。
温かくて、優しくて、余計に涙が溢れ出る。ああ、この涙もPチャンへの想いなのだ、となんとなく思った。
みく「実は、にゃ」
そこで一呼吸置いて、心に溜めておいたあの人への想いを、一気にちひろチャンに吐き出していった。
どうしようもなくあの人のことが好きなこと。
みくの中の女が、みくに囁いてくること。
――みくの全てを差し出してもいいということ。
さすがにさっきの自慰のことは言わなかったけれど、ちひろチャンは笑いもせず、真剣なまなざしでみくの言葉を受け止めてくれていた。15歳の女の子の戯言だと、相手にしなくてもよかったのに、本当に真剣に聞いてくれた。
みく「だから、隠さないといけなかったにゃ。みくは、みくはあの人を困らせたくない。あの人が、Pチャンのことがすきだから。
だから、だからね……」
そこから先は続ける事ができなかった。涙がとめどなく流れる。手で顔を覆っても、隙間からぽたぽたと零れるのだ。涙は頬を伝って、みくの服を濡らしていく。
ちひろチャンは何もいわず席をたって、みくの頭を優しく撫でてくれた。
温かくて、優しくて、余計に涙が溢れ出る。ああ、この涙もPチャンへの想いなのだ、となんとなく思った。
10: ◆ng2Oz8aFCM:2014/03/25(火) 22:44:44.73 :7dJgv5JR0
みくがおちつくのを待って、ちひろチャンは優しく笑いかけてくれた。
ちひろ「みくちゃんは、本当にプロデューサーさんのことが好きなのね」
みく「すき、すきにゃ……。だから、だから迷惑になるとおもって――」
ちひろ「それはちがうわ」
え? 思わず聞き返した。
ちひろチャンはおかしそうにくすりと笑うと、もう一度同じ言葉をくりかえす。
ちひろ「プロデューサーさんが、みくちゃんの気持ちを迷惑なんて思うはずない」
みく「でも、Pチャンは他の子もプロデュースしてるにゃ。もしみくが気持ちをこぼしたら、Pチャンはどう断るか悩んじゃう。
……Pちゃんは優しいから、みくを傷つけない答えを返そうと考えるにちがいないにゃ。忙しいPチャンに悩み事をつくることになったら、みく、嫌にゃ……。」
みくがおちつくのを待って、ちひろチャンは優しく笑いかけてくれた。
ちひろ「みくちゃんは、本当にプロデューサーさんのことが好きなのね」
みく「すき、すきにゃ……。だから、だから迷惑になるとおもって――」
ちひろ「それはちがうわ」
え? 思わず聞き返した。
ちひろチャンはおかしそうにくすりと笑うと、もう一度同じ言葉をくりかえす。
ちひろ「プロデューサーさんが、みくちゃんの気持ちを迷惑なんて思うはずない」
みく「でも、Pチャンは他の子もプロデュースしてるにゃ。もしみくが気持ちをこぼしたら、Pチャンはどう断るか悩んじゃう。
……Pちゃんは優しいから、みくを傷つけない答えを返そうと考えるにちがいないにゃ。忙しいPチャンに悩み事をつくることになったら、みく、嫌にゃ……。」
11: ◆ng2Oz8aFCM:2014/03/25(火) 22:46:25.70 :7dJgv5JR0
ちひろ「あら、どうして断られると思っているんですか?」
ちひろチャンは笑顔で続ける。
ちひろ「プロデューサーさんはきっと受け入れてくれるはず」
みく「どうして……」
ちひろ「だってプロデューサーさん、いっつもみくちゃんのこと気にかけていますから。
『みくは今日大丈夫ですか?』『みくは元気そうですか?』みく、みく、みくーっていっつも。」
ちひろチャンは窓の外に広がる青空を眩しそうに見ていた。
――今まで考えないようにしていた、Pチャンが自分を受け入れてくれるという可能性。
少しだけ希望を持ちそうになるが、ふるふると首をふってそれを追いやる。
みく「でも、でも、みくはアイドルだから……」
ちひろ「そんなの関係ないわ。ファンにバレなきゃいいのよ、バレなきゃ。今度あったとき、想いを伝えてみたら?」
みく「想いを……」
いざとなってもその方面は黙らせればいいし、と黒い顔でぼそりと呟いていたのは聞かなかったことにする。
ちひろ「あら、どうして断られると思っているんですか?」
ちひろチャンは笑顔で続ける。
ちひろ「プロデューサーさんはきっと受け入れてくれるはず」
みく「どうして……」
ちひろ「だってプロデューサーさん、いっつもみくちゃんのこと気にかけていますから。
『みくは今日大丈夫ですか?』『みくは元気そうですか?』みく、みく、みくーっていっつも。」
ちひろチャンは窓の外に広がる青空を眩しそうに見ていた。
――今まで考えないようにしていた、Pチャンが自分を受け入れてくれるという可能性。
少しだけ希望を持ちそうになるが、ふるふると首をふってそれを追いやる。
みく「でも、でも、みくはアイドルだから……」
ちひろ「そんなの関係ないわ。ファンにバレなきゃいいのよ、バレなきゃ。今度あったとき、想いを伝えてみたら?」
みく「想いを……」
いざとなってもその方面は黙らせればいいし、と黒い顔でぼそりと呟いていたのは聞かなかったことにする。
12: ◆ng2Oz8aFCM:2014/03/25(火) 22:48:42.50 :7dJgv5JR0
―――
――
―
レッスンはハードだ。
体を動かしながら歌を歌うというのは、思っている以上に難しいものだ。音程とステップ、つま先から指先まで気を配らなくてはいけない。
小気味よく流れる音楽にのせて、ステップし、ターンし、ポーズを決める。
ふと、ちひろチャンが言っていたことが頭にうかんだ。Pチャンに、告白する。考えるだけで沸騰してしまいそうだ。
Pチャンに告白したら、みくは……。
そのときがくり、とバランスが崩れた。ステップするときに踏み違えたのだ。足を締め付けるような鈍い痛みを感じ、床にへたりこんでしまう。
トレーナー「だ、だいじょうぶ!?」
音楽を止めて、あわててトレーナーさんが駆けつけてきた。だいじょうぶにゃ、と返して立ち上がろうとするが、足の痛みが邪魔する。
無理に動かないように、とみくを止めて、トレーナーさんはみくの足首を診てくれた。ぐるぐると足首を動かして確認しているらしい。
トレーナー「よかった、どうやら折れてはいないようですね。念のため病院に行ったほうがいいかもしれません。今日のレッスンは中止しましょうね」
みく「ごめんなさいにゃ……」
トレーナー「しょうがありませんよ。とにかくあまり動かさないようにして。今プロデューサーさんをお呼びしますから」
ああ、迷惑をかけてしまった。しかし同時に、Pチャンに会えるという喜びがふつふつと沸く。
我儘なのはわかっている。けれど、みくの本能が、みくの中の女が喜んでいるのを感じていた。
―――
――
―
レッスンはハードだ。
体を動かしながら歌を歌うというのは、思っている以上に難しいものだ。音程とステップ、つま先から指先まで気を配らなくてはいけない。
小気味よく流れる音楽にのせて、ステップし、ターンし、ポーズを決める。
ふと、ちひろチャンが言っていたことが頭にうかんだ。Pチャンに、告白する。考えるだけで沸騰してしまいそうだ。
Pチャンに告白したら、みくは……。
そのときがくり、とバランスが崩れた。ステップするときに踏み違えたのだ。足を締め付けるような鈍い痛みを感じ、床にへたりこんでしまう。
トレーナー「だ、だいじょうぶ!?」
音楽を止めて、あわててトレーナーさんが駆けつけてきた。だいじょうぶにゃ、と返して立ち上がろうとするが、足の痛みが邪魔する。
無理に動かないように、とみくを止めて、トレーナーさんはみくの足首を診てくれた。ぐるぐると足首を動かして確認しているらしい。
トレーナー「よかった、どうやら折れてはいないようですね。念のため病院に行ったほうがいいかもしれません。今日のレッスンは中止しましょうね」
みく「ごめんなさいにゃ……」
トレーナー「しょうがありませんよ。とにかくあまり動かさないようにして。今プロデューサーさんをお呼びしますから」
ああ、迷惑をかけてしまった。しかし同時に、Pチャンに会えるという喜びがふつふつと沸く。
我儘なのはわかっている。けれど、みくの本能が、みくの中の女が喜んでいるのを感じていた。
13: ◆ng2Oz8aFCM:2014/03/25(火) 22:52:49.95 :7dJgv5JR0
P「みくは大丈夫ですか!?」
あわてた顔で、Pチャンは勢いよく入ってきた。
外は肌寒いというのに、額には玉のような汗がうかんでいる。よほど急いで来たらしい。
みく「ごめんねPチャン、忙しいのに……」
P「そんなこと気にしなくていいさ。それより、大丈夫か?」
みく「だいじょうぶにゃー」
足は大丈夫だった。それよりも痛いのは、心。
Pチャンが目の前にいて、みくのことを思ってくれているという喜びと申し訳なさが、みくの心の中で渦巻いていた。
相反する二つの感情はみくを静かに掻き乱す。
P「そうか、それはよかった。では、すみませんが今日は失礼しますね」
トレーナー「ええ、お大事になさってくださいね」
歩きづらいだろうから、とPチャンはみくをおんぶしてくれた。少し恥ずかしい。
広い背中に手をかけると、Pチャンはゆっくりと立ち上がった。いつもと違って高い視界。
体を預けると、Pチャンの匂いがみくの鼻腔をくすぐった。
P「みくは大丈夫ですか!?」
あわてた顔で、Pチャンは勢いよく入ってきた。
外は肌寒いというのに、額には玉のような汗がうかんでいる。よほど急いで来たらしい。
みく「ごめんねPチャン、忙しいのに……」
P「そんなこと気にしなくていいさ。それより、大丈夫か?」
みく「だいじょうぶにゃー」
足は大丈夫だった。それよりも痛いのは、心。
Pチャンが目の前にいて、みくのことを思ってくれているという喜びと申し訳なさが、みくの心の中で渦巻いていた。
相反する二つの感情はみくを静かに掻き乱す。
P「そうか、それはよかった。では、すみませんが今日は失礼しますね」
トレーナー「ええ、お大事になさってくださいね」
歩きづらいだろうから、とPチャンはみくをおんぶしてくれた。少し恥ずかしい。
広い背中に手をかけると、Pチャンはゆっくりと立ち上がった。いつもと違って高い視界。
体を預けると、Pチャンの匂いがみくの鼻腔をくすぐった。
14: ◆ng2Oz8aFCM:2014/03/25(火) 22:55:04.31 :7dJgv5JR0
その汗のにおいはみくにとって不快ではなかった。
むしろ心地よかった。マタタビに酔いしれる猫のように、Pチャンの香りに酔いしれている。
ぴっとりと、Pチャンにくっついた。そのほうがぬくもりと、匂いを感じられるからだ。
Pチャンの体がぴくりと動いた気がした。
みく「本当にごめんね?」
P「何度もあやまらなくていいさ。今日の失敗を次に生かしていけばいい」
どこまでも優しいPチャン。それが狂おしいほどに愛しい。
みくの中の想いの器に、うれしさが、しあわせが、どんどん注がれていく。
みく「でも、みくは駄目な猫にゃ。迷惑な猫にゃ……」
P「みくは駄目でも、迷惑でもないよ。誰にだって失敗はある。みくは良く頑張ってるじゃないか。俺はちゃんと見てるぞ」
ああ、こんなこと言われてしまったら、もう後戻りできなくなってしまう。
ほめられただけでこんなに嬉しくなるなんて。
顔が熱く火照る。
ドキドキする。おへそのしたが、きゅんっと切なくなる。
やっぱりみくはPチャンのことが大好きだ。もう迷いは消えていた。
我慢もしない。ちひろチャンの言うとおりにしてみるんだ。
告白、しよう。
その汗のにおいはみくにとって不快ではなかった。
むしろ心地よかった。マタタビに酔いしれる猫のように、Pチャンの香りに酔いしれている。
ぴっとりと、Pチャンにくっついた。そのほうがぬくもりと、匂いを感じられるからだ。
Pチャンの体がぴくりと動いた気がした。
みく「本当にごめんね?」
P「何度もあやまらなくていいさ。今日の失敗を次に生かしていけばいい」
どこまでも優しいPチャン。それが狂おしいほどに愛しい。
みくの中の想いの器に、うれしさが、しあわせが、どんどん注がれていく。
みく「でも、みくは駄目な猫にゃ。迷惑な猫にゃ……」
P「みくは駄目でも、迷惑でもないよ。誰にだって失敗はある。みくは良く頑張ってるじゃないか。俺はちゃんと見てるぞ」
ああ、こんなこと言われてしまったら、もう後戻りできなくなってしまう。
ほめられただけでこんなに嬉しくなるなんて。
顔が熱く火照る。
ドキドキする。おへそのしたが、きゅんっと切なくなる。
やっぱりみくはPチャンのことが大好きだ。もう迷いは消えていた。
我慢もしない。ちひろチャンの言うとおりにしてみるんだ。
告白、しよう。
15: ◆ng2Oz8aFCM:2014/03/25(火) 22:56:22.20 :7dJgv5JR0
事務所に戻ると、事情を聞いていたのか心配そうにちひろチャンが近づいてきた。
大丈夫にゃ、それより……。
みくがそう切り出すと、ちひろチャンは訳知り顔でうなずく。
ちひろ「ちょーっと備品を買いに出かけてきますねっ! プロデューサーさん、少し留守をお願いします!」
P「え? ええ、わかりました……」
がんばってね、と言い残し、ちひろチャンは事務所から出て行った。
ドアがしまると、事務所はふたりきり。お互いの呼吸の音と、みくの鼓動の音しか聞こえない。恋のドキドキと緊張のドキドキ。
前髪をととのえて、胸に手を当てて、ゆっくり息をした。
事務所に戻ると、事情を聞いていたのか心配そうにちひろチャンが近づいてきた。
大丈夫にゃ、それより……。
みくがそう切り出すと、ちひろチャンは訳知り顔でうなずく。
ちひろ「ちょーっと備品を買いに出かけてきますねっ! プロデューサーさん、少し留守をお願いします!」
P「え? ええ、わかりました……」
がんばってね、と言い残し、ちひろチャンは事務所から出て行った。
ドアがしまると、事務所はふたりきり。お互いの呼吸の音と、みくの鼓動の音しか聞こえない。恋のドキドキと緊張のドキドキ。
前髪をととのえて、胸に手を当てて、ゆっくり息をした。
16: ◆ng2Oz8aFCM:2014/03/25(火) 22:57:23.01 :7dJgv5JR0
さあ告白しよう、と簡単に決めてしまっても、恥ずかしさでそう簡単には言えない。
いままで溜めて、我慢してきた想いならなおさらだ。
心臓が早鐘を打っている。口の中が乾く。
でも。ここで言わなければ。
ここで言わなければ、みくは一生後悔するから。勇気を出して言葉をつむいでいく。
みく「あのね、Pチャンに言いたいことがあるの」
覚悟は決まった。どんな結果になろうと、もう後悔はしない。
すう、と清らかな空気を吸う。
そして、
さあ告白しよう、と簡単に決めてしまっても、恥ずかしさでそう簡単には言えない。
いままで溜めて、我慢してきた想いならなおさらだ。
心臓が早鐘を打っている。口の中が乾く。
でも。ここで言わなければ。
ここで言わなければ、みくは一生後悔するから。勇気を出して言葉をつむいでいく。
みく「あのね、Pチャンに言いたいことがあるの」
覚悟は決まった。どんな結果になろうと、もう後悔はしない。
すう、と清らかな空気を吸う。
そして、
18: ◆ng2Oz8aFCM:2014/03/25(火) 22:58:41.13 :7dJgv5JR0
みく「みくは、Pチャンのことが――」
みく「みくは、Pチャンのことが――」
19: ◆ng2Oz8aFCM:2014/03/25(火) 22:59:25.79 :7dJgv5JR0
「最近みく、肌つやいいよねー。何してるの?」
「何してるというか、ナニしてるというか」
「え?」
「ううん、なんでもないにゃ! 毎日笑顔で、毎日幸せな気持ちだからかもにゃー!」
「ふーん……」
「みくー、そろそろ仕事いくぞー!」
「わかったにゃー!」
「今日も期待してるからな」
「もちろんにゃ!ばっちりきめてくるにゃー!」
「おう、頑張れよ」
「ねえ、Pチャン、こっち来て? ん~っ、すりすりにゃ♪」
「Pチャン、大好きにゃあ!」
おわり
「最近みく、肌つやいいよねー。何してるの?」
「何してるというか、ナニしてるというか」
「え?」
「ううん、なんでもないにゃ! 毎日笑顔で、毎日幸せな気持ちだからかもにゃー!」
「ふーん……」
「みくー、そろそろ仕事いくぞー!」
「わかったにゃー!」
「今日も期待してるからな」
「もちろんにゃ!ばっちりきめてくるにゃー!」
「おう、頑張れよ」
「ねえ、Pチャン、こっち来て? ん~っ、すりすりにゃ♪」
「Pチャン、大好きにゃあ!」
おわり
21:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします:2014/03/25(火) 23:04:32.51 :mqsl7WYko
乙、しかし>>18と>>19の間が大量に抜けている気がする
22:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします:2014/03/25(火) 23:16:39.22 :Z3cxxh6mo
乙。凄くよかった。
ただ、ナニしてるのかわからないところがありますねぇ
ただ、ナニしてるのかわからないところがありますねぇ
コメント
ちひろさんのファン辞めてみくにゃんのファンになります
凛「駄猫風情が・・・去勢するか」パキポキ
イチャコメはそこそこ見るけどこういうシンプルというか落ち着いた恋愛ものはみくにゃんでは珍しい