和「それより！せっかく二人きりですし！！」


和「咲さんは私と何かしたいことはありますか？」


咲「うーん」


咲「二人じゃ麻雀はできないしね…」


咲「和ちゃんは何かしたいことないの？」


和「えっ！？私ですか？」


咲「うん！和ちゃんのしたいことがしたいなあって」


和「///」


和「で、では！…あ、あの日の！あの日の続きをしませんか？///」


咲「あの日…？」


咲（…あれ？和ちゃんとそんな雰囲気になった日なんてあったっけ？）


和「全国大会の決勝戦が終わった日の夜ですよ」

咲（決勝戦の夜は、みんなと祝勝会して…）


咲（私は疲れて先に部屋に戻って…）


咲（…あれ？ここから先の記憶がない……！？）


咲（うう…まさか私ほんとに和ちゃんと…///）


咲「…いいよ和ちゃんなら」


和「え？」


咲「…和ちゃんになら」


咲「あげてもいいよ？///」


和「？」


和「何をですか？」


咲「―――っ！？」


咲（なにもう！！焦らしプレイ！？そんな変態みたいな…）


咲（……いや、この反応…本当に分かってない？）


咲（ってことは私の勘違い！？わわわああああああ）


和「………っ！？え？それって///」


和「そんな…早すぎるっていうか…いやでも今しないともうチャンスは…」ブツブツ


和「是非！いただきます！！ゴチに！！なります！！！！」


咲「いやもうあげないよ」プイッ

和「私はただあの日してた思い出話の続きをしたいと思いまして」


和「ほら、咲さん疲れて先に部屋に戻っちゃいましたから」


咲「なーんだそういうことか」


咲「…本当に私たち優勝したんだよね？」


咲「いまだに信じられないよ」


和「咲さんのおかげですよ」


和「…咲さんの嶺上開花四暗刻字一色小四喜で決まったんですから」


和「…さすがの私もオカルト信者になりました」


和（…だから今こうしているわけですし）


和「ただこうして部員５人全員で麻雀できるのも最後だったんですね…」


咲「…あれ？部員って５人だったっけ？」

咲「でも部長もたまには顔出すって言ってたよ」


咲「またみんなで麻雀打とうね！」


和「…そうですね」


和「まあ」


和「仮にみんながいなくても私が咲さんを幸せにします！！」


咲「話飛躍し過ぎじゃない！？」

咲「でも和ちゃんもすごかったよ！」


咲「副将戦でトップだったし」


和「たまたまです」


和「それに鳴いてばっかりで手を狭くする」


和「あんな麻雀に負けるなんて」


咲・和「そんなオカルトありえません！」


和「…えっ？」


咲「くぅーっ！やっぱ気持ちいいねこのセリフ」


咲「こんな名言独り占めなんてずるいよ！」


咲「これからは私も一緒に言うからね！！」


和「…それって自分の存在を否定することになるのでは」

咲「なにさ、和ちゃんだってさっきオカルト信じるって言ってたじゃん！」


和「あれは…まあ…」


咲「ふふっ、次もさっきみたいにタメ長めでお願いね！」


咲「一緒に言いやすいように！」


和「…努力します」


咲「あー私も何か決め台詞欲しいなー」


和「たくさんあると思いますよ」


和「なかでもほら！」


和「すごい気合いで、目から火を出しながら言ったあの…」


和「『全部ゴッ倒す！！！』」ゴッ


和「いやーもうさすが咲さん、惚れてしまいました！」


咲（煽られてる…そんな…和ちゃんがそんなことするなんて…そn）


和「そんなオカルトありえます！」


咲「心の中読まないで！！」

和「すみません、さっきのお返しです」


咲「もーやめてよ和ちゃん」


和「そういえばお義姉さんとは仲直りできたんですか？」


咲「うん！決勝の後、白糸台の控え室に行ったんだよ」


咲「そこで仲直りしたよ」


和「そうですか。よかったですね」


咲「今度一緒に寝る約束もしたんだよ」


和「」


和「そんな……」


咲「そんなオカルトありえません！」


和「」


咲「…あれ？」

和「」


咲（ショックで声もでないのかな？）


咲「いや、ただ一緒にお泊まりするだけだよ」


和「で、ですよね！咲さんがそんなことするわけないですよね」


咲「お姉ちゃんは同じベッドでってのをずっと強調してたけど」


和「……あの淫乱シスコンやろうが」


和「……そんなんだから髪の毛まで勃起してんだろうが」


咲「」

咲「………和ちゃん？」


和「…はっ！すみません！」


和「ちょっとゴミ捨てに行って来ていいですか？東京まで」


咲「…ゴミ捨て？」


和「はい」


和「白糸台あたりに粗大ゴミがある気がするんです」


咲「待って待って！！」


和「止めないでください」


和「これも咲さんのためなんです」


咲「でも…じゃあ部活はどうするの」


和「あ、言ってませんでしたが」


和「今日は部活お休みですよ？」


咲「え？まじで？」

咲「じゃあ私は今まで何を…」


和「ということでいってきます！」


咲「待ってよ和ちゃん！！」


咲「部活お休みってことは部室には誰も来ないんだよね？」


和「はい」


咲「じゃあまた私一人になるの？」ウルウル


咲「そんなのいや…」グスッ


和「咲さん…」


和「そうですね、すみません」


和「愛する咲さんをひとりにするなんて絶対にできません」


和「ずっと私が咲さんのおそばにいます！」


和（―――決まったああああああっ！！！）


和（これなら咲さんも『のどかちゃああああん！！大好きいいい！』とか言って抱きしめてくれるはず！）


咲「あ、そう、ありがと」ケロッ


和「」

咲「あれ？今日部活がお休みなら」


咲「なんで和ちゃんは部室に来たの？」


和「そ、それは…」


和「…咲さんとお話がしたくて」


和（…間違ってはないですよね）


咲「そうなんだ」


咲「おかげでひとりじゃなくなったからよかったけど」


咲「ありがとう和ちゃん」


和「いえ///」


咲「じゃあ帰ろっか」


和「えっ？」


咲「だって部活お休みなんでしょ？」


咲「部室にいても仕方ないじゃん」


和「いや…まあ…そうなんですが……」


咲「？」








和「最後にひとつだけ」


和「私の質問に答えていただけますか？」

咲「質問？うん、いいよ」


和「ありがとうございます」


和「それでは…」








和「私と二人だけの世界で生きていくのと、私だけがいない世界で生きていくのと」


和「どちらがいいですか？」

咲（…何この質問）


咲（和ちゃん…目が本気だ…）


咲（やばい…返事を間違ったら…間違いなく死ぬ……っ！）


咲「…そ、そんなの、和ちゃんとの世界に決まってるじゃん！」


咲「和ちゃんと一緒にいれるなら、他には誰もいr」


和「咲さん」


咲「はいいいいいっ！」ブルブル


和「」ニコッ


咲「？」


和「大丈夫です。私は咲さんの本心を聞きたいだけですから」


和「どうぞ本音で話してください」


和「というか、そんなに怖がられるとさすがにショックです…」


咲「ごめん…」


咲（さっきお姉ちゃんをゴミ捨てに行こうとした人を怖がるなって方が無理だよ…）

和「もう一度お聞きしますね」


和「私と二人だけの世界と私がいない世界」


和「どちらで生きていきたいですか？」


咲「和ちゃんがいない世界なんて嫌だよ！」


咲「全国で優勝できたのも」


咲「全国に行ってお姉ちゃんと仲直りできたのも」


咲「なにより毎日がこんなに楽しかったのも」


咲「全部和ちゃんのおかげ」


咲「私の一番の親友だから」


和「咲さん…」

咲「でも、他のみんなも好きだから」


咲「せっかくお姉ちゃんと仲直りできたし」


咲「全国で友達もちょっとだけどできたし」


咲「また部員５人みんなで麻雀打ちたいし」


和（あれ？麻雀部って５人でしたっけ？）


咲「だからみんなと会えなくなるのも嫌！」


咲「どっちかなんて選べないよ！」

和「…そうですか」


和「咲さんらしいですね」フフッ


和「でも」


和「あなたは選ばなければならない」


和「…いや、正確には私が選ぶのですが」


咲「？」


和「咲さん」


咲「どうしたの？和ちゃん？」







和「個人戦はどうでしたか？」

咲「えっ…？」


和「団体戦が終わったら、次の日から個人戦が始まるはず」


和「なのに個人戦の記憶はない」


和「つまり」


和「まだ個人戦は始まっていません」


咲「え…でも…」


和「そうです」


和「ではなぜ」


和「私たちは長野の部室にいるのでしょうか？」

咲「…」


咲「……」


咲「――――っ！」


咲「えっと……まさか……」


和「………」


咲「………和ちゃんが…誘拐した？」


和「へ？」


和「いやいや！分かったみたいな顔して出した答えがそれですか！？」


咲「えっ！？違うの！？」


和「どれだけ信用ないんですか私…」


和「でも、そうですね」


和「半分正解です」


咲「…えっ？」

和「いや、私を倒す凶器探すのやめてくださいっ！」


和「私何もしませんって！」


咲「そうなの……？」


和「はい。必ず」


和「咲さん」


和「個人戦で優勝したら、一番最初に誰に伝えたいですか？」

咲（また質問……さっきよりは答えやすいけど）


咲「それは…お姉ちゃんかな」


咲「私が優勝して強くなったことを伝えられれば」


咲「お姉ちゃんも認めてくれると思うから」


和「……」


和「そうですね」ニコッ


和「私もそれが叶うよう応援しています」


咲「ありがとう」


咲「でも和ちゃんも個人戦出るんだから手加減なしだよ！」


咲「和ちゃんも優勝狙って頑張ってよね！」


和「…私が優勝することなんて絶対ありえません」


咲「そんなことないよ！インターミドルだって優勝したんだし！」


和「咲さん」


咲「……？」

和「咲さん」


咲「どうしたの？」


和「今日は部活お休みって先ほど伝えましたが」


和「すみません、あれは嘘です」


咲「え？」


和「今日は雀荘に行くらしく、玄関でみんな待っています」


和「咲さん、先に行っててください」


咲「え、うん…でも和ちゃんは？」


和「用事を済ませてから行きますので」


咲「じゃあ待つよ！一緒に行こう？」


和「いえ、大丈夫です」


和「咲さんは一秒でも長く練習しないと」


和「優勝しないといけないんですから」

咲「うん、分かったよ」


咲「じゃあ先に行ってるね、和ちゃん」


和「……のどか」


咲「え？」


和「…今だけは和って呼んでください」


和「今だけでいいので」


咲「…ふふっ」


咲「分かった」


咲「今だけじゃなくてずっとそう呼ぶことにするよ！」


咲「じゃあまた後でね、和！」


バタンッ

和「はい」


和「さようなら、咲」

「――――――」

「――――――っ！」

「―――――ちゃん！」

「咲ちゃんっ！！」











咲「…え？ここどこ？」


久「…病院よ」


優希「うわあああああ咲ちゃああああん」


咲「優希ちゃん！？」


優希「うう…咲ちゃん……よかったじぇ……」グス


咲「えっと……これは…どういう…」


久「それはこっちのセリフよ」


久「あなた何も覚えてないの？」


咲「…全く」


久「咲、あなたね、２日間意識不明だったのよ」

久「決勝戦の夜、あなた一人で部屋に戻ったでしょ？」


久「その後私たちも部屋に戻ろうとしたのだけど、その時避難警報が鳴って…」


咲「えっ？」


久「ホテルでガス漏れ事故が発生したの」


久「私たち含め、ホテル内全員が緊急避難」


久「幸い火災は起こらなかったらしく無事逃げられたのだけど…」


久「咲、あなたの姿がなかったのよ」

優希「避難する前、のどちゃんと一緒に部屋に呼びにいったんだじぇ」


優希「でも咲ちゃんいなかったから、もう逃げたんだと思ったんだじょ…」


優希「でも逃げたとこにも咲ちゃんいないし……」


久「また迷子になったのね？」


咲「うう…そうかもしれません」


久「…それで和があなたを助けに一人でホテルに戻った」


咲「あっ和ちゃん……！」


咲「和ちゃん！和ちゃんはどうしてるんですか！？」


久「見つかったわよ、あなたと一緒に」


久「救急隊員の人が見つけてくれたの」







久「…もう息はしていなかったけれど」

咲「……え………？」


久「咲、よく聞きなさい」


久「和は言ってたわ」


久「『咲さんをひとりにはしない』って」


久「…それだけの覚悟だったのよ」


久「あなたが気に病む必要はないわ。ただ」


久「親友に助けられた命、大事にしなさい」


久「行くわよ、優希」


優希「ううぅう………のどちゃん……のどちゃん」グス


久「優希」


優希「……」


久「また来るわね、咲」


優希「まただじぇー咲ちゃん」




バタンッ





「うわああああああああああのどちゃああああああん！のどちゃああああん！！」


「のどか…私が止めていれば……ごめんなさい…ごめんなさいっ……」グス

咲「……私のせいで」


咲「和ちゃんは……」グスッ






「のどかって呼んでと言ったじゃないですか」






咲「……え？」


咲「の……どか…ちゃん？」






「だーかーら」






咲「あ、いや、ごめん。今のは」


咲「え？あれは……夢じゃなかったの？」

和「私は死んでから少しの間だけ、咲さんの意識の中に入る能力を手にしました」


和「もうあと５分が限界ですが」


和「オカルトです」


咲「だから…オカルト信じるって……」


和「そして咲さんとたくさんお話できました」


和「私はこれで満足なんです」


咲「でも…私のせいで和は……」


和「いいんです。咲さんが幸せなら」


和「……本当は天国で二人で過ごすのもいいなって思ってました」


和「でも、咲さんとお話しして、やっぱり咲さんは生きるべきだと」


和「この世界を生きていくべきだと思ったんです」


咲「そんな……」

和「咲さん」


咲「……さき」


和「え？」


咲「咲って呼んで」


和「――っ！……いいんですか？」


咲「駄目な理由なんか何もないよ」


和「……私の……私の夢だったので」


和「嬉しくて……」


和「やっぱり私は満足です」


咲「…じゃあ満足ついでに敬語もやめて？」


和「……え？」


咲「親友に敬語っておかしいじゃん！」


和「……分かりました」


咲「おいっ！」

和「咲」


咲「なに？和」


和「あなたは一人じゃない」


和「意識がなかったときは私が一緒にいたし」


和「これからはみんなと一緒にいる」


和「今までもこれからもあなたのそばには誰かがいる」


咲「――っ！そのために和は……」


和「ただ、咲に先に死なれたくなかったからなんだけどね…」

和「そろそろ時間みたい…」


咲「また…会えるよね？」


和「すぐに会いにきちゃダメだからね」


和「ずっと待ってるから」


咲「でも私は魔王だし地獄に行くから、和とは会えないかも……」


和「ふふっ」


和「咲が地獄に行くなんて………」











咲・和「そんなオカルトありえません！」











カンッ！