1: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/03(木) 01:10:07.53 :+RRvPwf9o
紡ぐ煙が月を隠す
蛍光灯の明かりを頼りに
ブロック塀の下を猫が歩く
ぽつりぽつり、街明かりと喧騒
口元の黒子に煙草を咥えて
彼女は一人、夜風に触れた
愛煙家の小鳥さん
紡ぐ煙が月を隠す
蛍光灯の明かりを頼りに
ブロック塀の下を猫が歩く
ぽつりぽつり、街明かりと喧騒
口元の黒子に煙草を咥えて
彼女は一人、夜風に触れた
愛煙家の小鳥さん
2: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/03(木) 01:11:11.55 :+RRvPwf9o
燦々と照る太陽は未だ衰えを知らず
照り返す熱に、遠く地面が揺らぐ
風をよく通す薄いシャツの中を
つー、と一滴汗が伝った
「おはようございます」
返事の代わりに帰ってくるのは
籠った空気の蒸し暑さ
誰もいない事務所を横切り
古く重たい窓を開け放つ
燦々と照る太陽は未だ衰えを知らず
照り返す熱に、遠く地面が揺らぐ
風をよく通す薄いシャツの中を
つー、と一滴汗が伝った
「おはようございます」
返事の代わりに帰ってくるのは
籠った空気の蒸し暑さ
誰もいない事務所を横切り
古く重たい窓を開け放つ
3: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/03(木) 01:11:40.29 :+RRvPwf9o
ギシリという音と引き換えに
入ってきたのは蝉時雨
それとやはり蒸し暑い、夏の空気
じわじわと鉄を焼く様な日差し
外では排気ガスが見えそうなくらいに
ぬるいタクシーとバスが列を成す
ギシリという音と引き換えに
入ってきたのは蝉時雨
それとやはり蒸し暑い、夏の空気
じわじわと鉄を焼く様な日差し
外では排気ガスが見えそうなくらいに
ぬるいタクシーとバスが列を成す
4: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/03(木) 01:12:29.22 :+RRvPwf9o
直したばかりのエアコンを回すと
無音の事務所に僅かばかりの色が灯る
冷たい風の真下に陣取り
額に張り付く髪を乾かす
「まだまだ夏……ね…」
お尻に触れる事務机の冷たさが気持ちいい
直したばかりのエアコンを回すと
無音の事務所に僅かばかりの色が灯る
冷たい風の真下に陣取り
額に張り付く髪を乾かす
「まだまだ夏……ね…」
お尻に触れる事務机の冷たさが気持ちいい
5: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/03(木) 01:14:05.07 :+RRvPwf9o
冷気の誘惑を振り払って
更に蒸した更衣室に足を運ぶ
ネジの弛んだドアノブをガチャリと回し
窓のない部屋の電気をつけると
巻き上がった塵がキラキラと光る
冷気の誘惑を振り払って
更に蒸した更衣室に足を運ぶ
ネジの弛んだドアノブをガチャリと回し
窓のない部屋の電気をつけると
巻き上がった塵がキラキラと光る
6: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/03(木) 01:15:15.07 :+RRvPwf9o
汗の染みたシャツはじとりと湿り
体から剥がれると冷たく感じた
小さなポーチからタオルハンカチを取り出し
腕、脇、胸元、首元と汗を拭っていく
「タオルがいくつあっても……足りないわね…」
腕を通した制服のシャツはひんやりと心地よかったが
ハイソックスを履く頃にはもう既に湿っていた
汗の染みたシャツはじとりと湿り
体から剥がれると冷たく感じた
小さなポーチからタオルハンカチを取り出し
腕、脇、胸元、首元と汗を拭っていく
「タオルがいくつあっても……足りないわね…」
腕を通した制服のシャツはひんやりと心地よかったが
ハイソックスを履く頃にはもう既に湿っていた
7: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/03(木) 01:17:35.39 :+RRvPwf9o
ネクタイを締めて更衣室から出ると
丁度目の前にある鏡と目が合う
少し髪を整え、笑う
「今日も一日、がんばるぞ」
小さく自分に、言い聞かせた
ネクタイを締めて更衣室から出ると
丁度目の前にある鏡と目が合う
少し髪を整え、笑う
「今日も一日、がんばるぞ」
小さく自分に、言い聞かせた
9: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/03(木) 01:25:24.27 :+RRvPwf9o
ぎしり、灰色の事務椅子に座り作業にかかる
デスクの右奥には昨晩のコーヒーの残り
「……後で洗わなきゃ」
くるりと手元で黒いペンを回す
ぎしり、灰色の事務椅子に座り作業にかかる
デスクの右奥には昨晩のコーヒーの残り
「……後で洗わなきゃ」
くるりと手元で黒いペンを回す
10: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/03(木) 01:29:11.26 :+RRvPwf9o
右の箱から左の箱に移し替える作業
[未]の箱から[済]の箱に、淡々、黙々と
目を通して、判を押して、記入して、調べて
たまに伸びをして、また目を通す
繰り返し、繰り返し
右の箱から左の箱に移し替える作業
[未]の箱から[済]の箱に、淡々、黙々と
目を通して、判を押して、記入して、調べて
たまに伸びをして、また目を通す
繰り返し、繰り返し
11: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/03(木) 01:30:47.78 :+RRvPwf9o
エアコンがようやく効いてきた頃
小休止と思い、コーヒマグを持って給湯室へ
すると
とん、とん、とん
誰か、階段を昇ってくる音がする
エアコンがようやく効いてきた頃
小休止と思い、コーヒマグを持って給湯室へ
すると
とん、とん、とん
誰か、階段を昇ってくる音がする
12: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/03(木) 01:32:07.78 :+RRvPwf9o
毎日の密かな楽しみ
誰だろうか、耳を澄ませる
とん、とん、とん
一段飛ばしのこのリズム
真ちゃんかしら
「おはようございます」
ふふっ、正解
毎日の密かな楽しみ
誰だろうか、耳を澄ませる
とん、とん、とん
一段飛ばしのこのリズム
真ちゃんかしら
「おはようございます」
ふふっ、正解
13: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/03(木) 01:33:13.24 :+RRvPwf9o
「おはよう、真ちゃん」
給湯室から頭を出し、迎える
「おはようございます、小鳥さん」
薄めのシャツに浮かぶタンクトップの跡
真の髪を滴る汗が外の気温を表していた
「汗すごいわね……走ってきたの?」
「いえ、自転車です。それでもこれだけ汗かいちゃって」
「ほんとすごい暑さね…今、麦茶入れるわね」
「おはよう、真ちゃん」
給湯室から頭を出し、迎える
「おはようございます、小鳥さん」
薄めのシャツに浮かぶタンクトップの跡
真の髪を滴る汗が外の気温を表していた
「汗すごいわね……走ってきたの?」
「いえ、自転車です。それでもこれだけ汗かいちゃって」
「ほんとすごい暑さね…今、麦茶入れるわね」
14: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/03(木) 01:37:32.57 :+RRvPwf9o
給湯室のテーブルに少し体重を預けて
真は麦茶を一気に飲み干す
「やっとエアコンが効いてきたの」
「外に比べたら天国ですよ」
そんな会話をしながら、真は二杯目の麦茶も飲み干す
給湯室のテーブルに少し体重を預けて
真は麦茶を一気に飲み干す
「やっとエアコンが効いてきたの」
「外に比べたら天国ですよ」
そんな会話をしながら、真は二杯目の麦茶も飲み干す
15: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/03(木) 01:38:09.55 :+RRvPwf9o
そして、三杯目
ふぅ、と一息つき、会話が途切れる
静寂の重なるエアコンの音
不意に、小鳥が切り出す
「ねぇ、真ちゃん」
「……いい?」
そして、三杯目
ふぅ、と一息つき、会話が途切れる
静寂の重なるエアコンの音
不意に、小鳥が切り出す
「ねぇ、真ちゃん」
「……いい?」
16: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/03(木) 01:40:00.14 :+RRvPwf9o
小鳥は胸元に手を当てた
豊満な胸が少し歪む
「ここで、ですか…?」
真の声には驚きと戸惑いが
「ちょっと……疲れちゃって……」
真に甘えるように、小鳥は声を吐く
小鳥は胸元に手を当てた
豊満な胸が少し歪む
「ここで、ですか…?」
真の声には驚きと戸惑いが
「ちょっと……疲れちゃって……」
真に甘えるように、小鳥は声を吐く
18: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/03(木) 01:43:11.16 :+RRvPwf9o
そんな小鳥に対し
眉と唇を三角にとがらせて
真はぴしゃりと注意する
「駄目ですよ、ちゃんと外で吸ってください」
「あら、やっぱり?」
小鳥は胸元の煙草に手を当て、
子供っぽく笑った
そんな小鳥に対し
眉と唇を三角にとがらせて
真はぴしゃりと注意する
「駄目ですよ、ちゃんと外で吸ってください」
「あら、やっぱり?」
小鳥は胸元の煙草に手を当て、
子供っぽく笑った
19: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/03(木) 01:44:31.38 :+RRvPwf9o
屋上に出ると直射日光が目に刺さった
ジリジリと肌の焼ける感触
コンクリートの床から昇る熱
柵にもたれると少しだけ、風が通って涼しかった
屋上に出ると直射日光が目に刺さった
ジリジリと肌の焼ける感触
コンクリートの床から昇る熱
柵にもたれると少しだけ、風が通って涼しかった
20: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/03(木) 01:46:09.43 :+RRvPwf9o
窮屈な胸ポケットから取り出したのは
ソフトタイプの煙草と100円ライター
それと少し膨らんだ携帯灰皿
煙草とライターはどちらも昨晩丁度切らしたので
通勤時にコンビニエンスで購入したもの
窮屈な胸ポケットから取り出したのは
ソフトタイプの煙草と100円ライター
それと少し膨らんだ携帯灰皿
煙草とライターはどちらも昨晩丁度切らしたので
通勤時にコンビニエンスで購入したもの
21: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/03(木) 01:52:08.74 :+RRvPwf9o
煙草がまだあるからとライターを買い
オイルがまだあるからと煙草を買い
両方なくなっても結局は煙草を吸う
ただのニコチン中毒者
駄目なオトナだなぁ
ここに出入りする若者たちを想い、鑑みる
煙草がまだあるからとライターを買い
オイルがまだあるからと煙草を買い
両方なくなっても結局は煙草を吸う
ただのニコチン中毒者
駄目なオトナだなぁ
ここに出入りする若者たちを想い、鑑みる
22: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/03(木) 02:08:11.69 :+RRvPwf9o
綺麗に整えた爪で銀紙をはぎ
片側をとんとん、と叩くと
紙巻きタバコが一本、徐々に出てくる
出てきた一本をそのまま咥えて引き抜くと
慣れた手つきで火を点けた
綺麗に整えた爪で銀紙をはぎ
片側をとんとん、と叩くと
紙巻きタバコが一本、徐々に出てくる
出てきた一本をそのまま咥えて引き抜くと
慣れた手つきで火を点けた
23: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/03(木) 02:11:47.22 :+RRvPwf9o
口内に煙を導き、留める
その後肺に、紫煙を流し込む
肺中に煙を充満させると
「…………ふへぇ……」
そんな間抜けな声とともに煙を吐いた
口内に煙を導き、留める
その後肺に、紫煙を流し込む
肺中に煙を充満させると
「…………ふへぇ……」
そんな間抜けな声とともに煙を吐いた
24: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/03(木) 02:12:33.39 :+RRvPwf9o
「そんなに美味しいんですかね」
いつの間にか真も屋上に上がってきていた
春香と雪歩が来たので、留守番を任せてきました
そう、真は涼しい顔で言う
柔らかな黒髪をむわっとしたビル風が揺らす
さっきまでの汗は引き、シャツも乾いている
しかしその鼻梁には既に玉の汗が滲んでいた
「そんなに美味しいんですかね」
いつの間にか真も屋上に上がってきていた
春香と雪歩が来たので、留守番を任せてきました
そう、真は涼しい顔で言う
柔らかな黒髪をむわっとしたビル風が揺らす
さっきまでの汗は引き、シャツも乾いている
しかしその鼻梁には既に玉の汗が滲んでいた
25: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/03(木) 02:13:05.52 :+RRvPwf9o
「美味しくはないわよ」
「でも吸うんですか」
「そう、吸うの」
真も柵に寄りかかり
こんこんと湧く紫煙の出処を見つめる
「美味しくはないわよ」
「でも吸うんですか」
「そう、吸うの」
真も柵に寄りかかり
こんこんと湧く紫煙の出処を見つめる
26: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/03(木) 02:14:34.47 :+RRvPwf9o
「止めないんですか?」
「え?」
「煙草」
薄く笑みを浮かべて、真は煙草を吸うジェスチャーをする
言ったところで小鳥が煙草を止めることは無い
そうわかっていながら、からかう様に聞いた
「止めないんですか?」
「え?」
「煙草」
薄く笑みを浮かべて、真は煙草を吸うジェスチャーをする
言ったところで小鳥が煙草を止めることは無い
そうわかっていながら、からかう様に聞いた
27: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/03(木) 02:15:46.01 :+RRvPwf9o
「美味しくないんでしょう?」
「そうね、でも吸いたくなるの」
「美味しくないのに?」
「そう、美味しくないのに」
そう言うと小鳥はまた、煙を吸い込んだ
「変、かしら?」
「いいえ、全然」
吐いた煙は日の熱で蒸発するかのように
すぐに細かく霧散した
「美味しくないんでしょう?」
「そうね、でも吸いたくなるの」
「美味しくないのに?」
「そう、美味しくないのに」
そう言うと小鳥はまた、煙を吸い込んだ
「変、かしら?」
「いいえ、全然」
吐いた煙は日の熱で蒸発するかのように
すぐに細かく霧散した
28: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/03(木) 02:20:10.83 :+RRvPwf9o
真は小鳥に肩を重ねるように、擦り寄った
風下に居る真の顔に、火種で燻された煙が掛かりそうになる
「煙草、嫌いなんじゃなかった?」
先ほどの給湯室でのやり取りを思い出す
「別に嫌いじゃないですよ。匂いも、煙も」
「さっきのはマナーとして、です」
「あと」
真は1つ、付け加える
「キスが不味いってだけですから」
真は小鳥に肩を重ねるように、擦り寄った
風下に居る真の顔に、火種で燻された煙が掛かりそうになる
「煙草、嫌いなんじゃなかった?」
先ほどの給湯室でのやり取りを思い出す
「別に嫌いじゃないですよ。匂いも、煙も」
「さっきのはマナーとして、です」
「あと」
真は1つ、付け加える
「キスが不味いってだけですから」
29: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/03(木) 02:20:45.79 :+RRvPwf9o
からかう様にして小鳥は聞く
「煙草味のキスは嫌?」
「美味しくはないですからね。でも……」
「でも?」
小鳥にはその答えがわかっていた
私の煙草と同じ
「美味しくないけど、また、したくなるんです」
私と、同じ
からかう様にして小鳥は聞く
「煙草味のキスは嫌?」
「美味しくはないですからね。でも……」
「でも?」
小鳥にはその答えがわかっていた
私の煙草と同じ
「美味しくないけど、また、したくなるんです」
私と、同じ
30: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/03(木) 02:21:16.25 :+RRvPwf9o
「変、ですかね?」
「ううん」
ふー、と空に煙を吐いてから、小鳥は強調するように言った
「全然、変じゃない」
にこりと笑いかけた小鳥に
真も少し、照れて笑った
「変、ですかね?」
「ううん」
ふー、と空に煙を吐いてから、小鳥は強調するように言った
「全然、変じゃない」
にこりと笑いかけた小鳥に
真も少し、照れて笑った
33: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/03(木) 16:31:24.40 :+RRvPwf9o
事務所に戻ると、先程よりも騒々しさが増していた
テレビの前のソファでは亜美と真美が携帯ゲーム機で火花を散らし
その騒音をものともせず、向かい側では美希が寝息を立てる
給湯室には雪歩と春香
そしてその二人に接待される伊織とやよいが椅子を並べていた
紅茶の甘い臭いが鼻孔を擽る
応接間では貴音と響があずさに編み物を教わっていた
マフラーをするにはだいぶ早い気もするが
あずささんのペースならきっとちょうど良いのだろう
事務所に戻ると、先程よりも騒々しさが増していた
テレビの前のソファでは亜美と真美が携帯ゲーム機で火花を散らし
その騒音をものともせず、向かい側では美希が寝息を立てる
給湯室には雪歩と春香
そしてその二人に接待される伊織とやよいが椅子を並べていた
紅茶の甘い臭いが鼻孔を擽る
応接間では貴音と響があずさに編み物を教わっていた
マフラーをするにはだいぶ早い気もするが
あずささんのペースならきっとちょうど良いのだろう
34: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/03(木) 16:32:05.01 :+RRvPwf9o
そして事務所の一番奥
直射日光をもろに受ける事務机群では
律子とプロデューサーがコーヒーマグを片手に文字を打ち込んでいた
「お疲れ様です。律子さん、プロデューサーさん」
声を掛けると二人とも、画面から目を離しこちらに微笑む
律子さんは伸びを一つ
「また煙草ですか?」と少し眉を困らせる
白のブラウスを肘まで捲って
珍しく出している素足を組み替えた
そして事務所の一番奥
直射日光をもろに受ける事務机群では
律子とプロデューサーがコーヒーマグを片手に文字を打ち込んでいた
「お疲れ様です。律子さん、プロデューサーさん」
声を掛けると二人とも、画面から目を離しこちらに微笑む
律子さんは伸びを一つ
「また煙草ですか?」と少し眉を困らせる
白のブラウスを肘まで捲って
珍しく出している素足を組み替えた
36: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/04(金) 16:22:48.10 :7dbUZqnGo
あ……すいませんミスです……
>>33
×応接間では貴音と響があずさに編み物を教わっていた
○応接間では貴音が響とあずさに編み物を教わっていた
あ……すいませんミスです……
>>33
×応接間では貴音と響があずさに編み物を教わっていた
○応接間では貴音が響とあずさに編み物を教わっていた
37: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/05(土) 00:57:44.39 :QQranJbwo
プロデューサーさんは涼し気な白のワイシャツに、これまた涼し気な青色のネクタイ
エアコンが効いて室温は心地良いものの
直射日光に当てられた背中と腕は、少し汗ばんでいるように見えた。
数枚を束ねたA4用紙をパラパラとめくり、手帳と重ねる
プロデューサーさんは涼し気な白のワイシャツに、これまた涼し気な青色のネクタイ
エアコンが効いて室温は心地良いものの
直射日光に当てられた背中と腕は、少し汗ばんでいるように見えた。
数枚を束ねたA4用紙をパラパラとめくり、手帳と重ねる
38: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/05(土) 01:54:10.53 :QQranJbwo
「お疲れさまです、小鳥さん」
「お疲れ様です……今日の撮影の確認ですか?」
「はい、今日はいくつか重なってるので」
小鳥の背後に掛けられたホワイトボード
端から端まで黒のペンで予定が書きこまれる
「お疲れさまです、小鳥さん」
「お疲れ様です……今日の撮影の確認ですか?」
「はい、今日はいくつか重なってるので」
小鳥の背後に掛けられたホワイトボード
端から端まで黒のペンで予定が書きこまれる
39: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/05(土) 02:18:28.59 :QQranJbwo
「あの、プロデューサーさん」ふと、思い立つ
「真ちゃんの送り迎え、私が行きましょうか?」
その時間は、小鳥も手が空いていた
何より、撮影現場が事務所の近くなのでその方が効率的だ
「本当ですか?助かります」
プロデューサーさんは手帳に矢印を書きこんだ
私と真ちゃんが付き合っていることは、まだ誰も知らない
「あの、プロデューサーさん」ふと、思い立つ
「真ちゃんの送り迎え、私が行きましょうか?」
その時間は、小鳥も手が空いていた
何より、撮影現場が事務所の近くなのでその方が効率的だ
「本当ですか?助かります」
プロデューサーさんは手帳に矢印を書きこんだ
私と真ちゃんが付き合っていることは、まだ誰も知らない
41: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/07(月) 01:36:42.26 :e5cPrkLEo
埃っぽさの混じる社用車のエアコン
握りこぶし程の大きさに開けた窓の隙間から
吐いた吐息がゆるりと逃げる
耳に触れるのはハザードの点滅音
フロントガラスの向こう側で
信号は赤に変わり、わらわらと人が歩き出す
埃っぽさの混じる社用車のエアコン
握りこぶし程の大きさに開けた窓の隙間から
吐いた吐息がゆるりと逃げる
耳に触れるのはハザードの点滅音
フロントガラスの向こう側で
信号は赤に変わり、わらわらと人が歩き出す
42: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/07(月) 01:37:11.76 :e5cPrkLEo
「お疲れ様」
空いたドアに声をかける
助手席に置いていた荷物を後部座席に
すし詰め状態の灰皿には、あと何本か入るだろう
「また律子さんに怒られますよ」
そう言って真は灰皿を押し込む
埃と煙草の匂いだけが、車内には残った
「お疲れ様」
空いたドアに声をかける
助手席に置いていた荷物を後部座席に
すし詰め状態の灰皿には、あと何本か入るだろう
「また律子さんに怒られますよ」
そう言って真は灰皿を押し込む
埃と煙草の匂いだけが、車内には残った
43: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/07(月) 01:38:35.64 :e5cPrkLEo
「ただでさえ街中何処へ行っても禁煙なのに」
どこから出したのか、小鳥は煙草のソフトケースを振り、出てきた一本を咥える
「車の中でまで吸えなくなったら、堪らないわよ」
コンビニで買ったガスライターの音
また一息、煙を吐いてから
小鳥は右にウインカーを出した
「ただでさえ街中何処へ行っても禁煙なのに」
どこから出したのか、小鳥は煙草のソフトケースを振り、出てきた一本を咥える
「車の中でまで吸えなくなったら、堪らないわよ」
コンビニで買ったガスライターの音
また一息、煙を吐いてから
小鳥は右にウインカーを出した
44: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/07(月) 01:41:02.76 :e5cPrkLEo
「ダメな大人ですね」
「ダメな大人じゃ駄目かしら?」
「駄目だと思いますよ」
「ふふっ……そうね」
火の点った煙草を加えたまま
「私もそう思うわ」
小鳥は鈍く、微笑んだ
「ダメな大人ですね」
「ダメな大人じゃ駄目かしら?」
「駄目だと思いますよ」
「ふふっ……そうね」
火の点った煙草を加えたまま
「私もそう思うわ」
小鳥は鈍く、微笑んだ
45: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/08(火) 23:37:25.06 :Xws2kl0fo
ガチャリと鍵を回す音がして
暗闇の部屋に明かりが灯る
「ごめんね、散らかってるけど」
「たまには散らかってない部屋に案内してくださいよ」
脱いだ靴を並べながら、真は小鳥をからかった
ふと玄関を見ると、黒のパンプス
隣には一回り小さな白黒のスニーカーがある
小鳥はその光景が、何とも言えず、好きだった
ガチャリと鍵を回す音がして
暗闇の部屋に明かりが灯る
「ごめんね、散らかってるけど」
「たまには散らかってない部屋に案内してくださいよ」
脱いだ靴を並べながら、真は小鳥をからかった
ふと玄関を見ると、黒のパンプス
隣には一回り小さな白黒のスニーカーがある
小鳥はその光景が、何とも言えず、好きだった
47: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/09(水) 00:25:11.46 :PGLWBr0Eo
「綺麗な方だと思いますけどね」
コンビニの袋をちゃぶ台に置いてから、真は部屋を見渡す
独り暮らし用の小さなテレビ、ふかふかのベッド、DVDの詰まった棚
床には数冊、アイドル雑誌
息を吸うと、女性の香り。甘い香り。
「ボクの部屋なんてもっとひどいですよ」
「あんまり見回さないでもらえると助かるわ……」
小鳥は冷蔵庫にビールをしまいながら、渋く笑った
「綺麗な方だと思いますけどね」
コンビニの袋をちゃぶ台に置いてから、真は部屋を見渡す
独り暮らし用の小さなテレビ、ふかふかのベッド、DVDの詰まった棚
床には数冊、アイドル雑誌
息を吸うと、女性の香り。甘い香り。
「ボクの部屋なんてもっとひどいですよ」
「あんまり見回さないでもらえると助かるわ……」
小鳥は冷蔵庫にビールをしまいながら、渋く笑った
48: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/09(水) 00:28:07.26 :PGLWBr0Eo
しばらくして、機械的なメロディが鳴る
テレビの中では芸人が押すな押すなと喚いていた
ベッドに座る小鳥は、向かいの床に胡坐を掻いている真に言う
「先、お風呂どうぞ」
「ありがとうございます。今日は朝から早く体を流したくって……」
「汗っかきだものね、真ちゃん」
「そうなんですよね……新陳代謝が良いのも困りものです」
眉頭を少し持ち上げて、真は右の頬を掻いた
しばらくして、機械的なメロディが鳴る
テレビの中では芸人が押すな押すなと喚いていた
ベッドに座る小鳥は、向かいの床に胡坐を掻いている真に言う
「先、お風呂どうぞ」
「ありがとうございます。今日は朝から早く体を流したくって……」
「汗っかきだものね、真ちゃん」
「そうなんですよね……新陳代謝が良いのも困りものです」
眉頭を少し持ち上げて、真は右の頬を掻いた
49: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/09(水) 01:26:55.27 :PGLWBr0Eo
流れるシャワーの音を背に、サンダルを履いてベランダに出る
ガラス戸を閉めると水の音は聞こえなくなった
代わりに背負いうのはカーテン越しの仄かな灯り
日はとっくのとうに沈んでおり、気温は少し、涼しい
金属の手すりに肘を着くと、そこもやはり、ひやりと素肌に染みた
流れるシャワーの音を背に、サンダルを履いてベランダに出る
ガラス戸を閉めると水の音は聞こえなくなった
代わりに背負いうのはカーテン越しの仄かな灯り
日はとっくのとうに沈んでおり、気温は少し、涼しい
金属の手すりに肘を着くと、そこもやはり、ひやりと素肌に染みた
50: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/09(水) 01:28:36.57 :PGLWBr0Eo
>>49
×背負いうのはカーテン越しの仄かな灯り
○背負うのはカーテン越しの仄かな灯り
>>49
×背負いうのはカーテン越しの仄かな灯り
○背負うのはカーテン越しの仄かな灯り
51: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/09(水) 01:29:12.12 :PGLWBr0Eo
小鳥は一本煙草を咥えて火を点けた
安ライターの明かりに照らされる口元と手の平
空に煙を吹きかけると、東の空に月が出ている事がわかった
目を凝らせば見えるいくつかの星
東京の空にも、星は見える
いつか聞いた歌が、頭に流れた
小鳥は一本煙草を咥えて火を点けた
安ライターの明かりに照らされる口元と手の平
空に煙を吹きかけると、東の空に月が出ている事がわかった
目を凝らせば見えるいくつかの星
東京の空にも、星は見える
いつか聞いた歌が、頭に流れた
52: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/09(水) 01:31:19.80 :PGLWBr0Eo
手すりに体重を預け、凭れる
咥えた煙草が、じじじと燃える
やはりベランダのある部屋にして正解だった
賃貸なので室内で煙草を吸う事を躊躇う
そういう理由もあるにはあるが
やはり空の下で吸う煙草はうまい
小鳥はそう思っていた
手すりに体重を預け、凭れる
咥えた煙草が、じじじと燃える
やはりベランダのある部屋にして正解だった
賃貸なので室内で煙草を吸う事を躊躇う
そういう理由もあるにはあるが
やはり空の下で吸う煙草はうまい
小鳥はそう思っていた
53: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/09(水) 01:45:16.65 :PGLWBr0Eo
月夜の下、夏空の下、灰色の空の下
それと、恋人の隣
"どこで吸おうと味など変わらない"
そう言う人もいるだろう
だが、私はそうは思わない
からから、戸の開く音
「お風呂、上がりましたよ」
濡れた頭に返事をする
「あら、早いのね」
吸い込んだ煙をゆっくりと吐く
ほら、ね?こんなにも煙草が美味しい
月夜の下、夏空の下、灰色の空の下
それと、恋人の隣
"どこで吸おうと味など変わらない"
そう言う人もいるだろう
だが、私はそうは思わない
からから、戸の開く音
「お風呂、上がりましたよ」
濡れた頭に返事をする
「あら、早いのね」
吸い込んだ煙をゆっくりと吐く
ほら、ね?こんなにも煙草が美味しい
56: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/10(木) 02:22:09.84 :YZNuLvKeo
お風呂から上がり、下だけ履いて冷蔵庫を開ける
火照った体に涼しい風
青白い光が目に刺さる
卵、味噌、マヨネーズ、ソース
最低限の食料と、扉裏の籠に詰まった缶ビール
我ながら"女子力"というものを思い知る
お風呂から上がり、下だけ履いて冷蔵庫を開ける
火照った体に涼しい風
青白い光が目に刺さる
卵、味噌、マヨネーズ、ソース
最低限の食料と、扉裏の籠に詰まった缶ビール
我ながら"女子力"というものを思い知る
57: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/10(木) 02:27:30.58 :YZNuLvKeo
銀の缶を一つ抓んで、柔らかな灯りの灯る部屋へ
部屋では真が片膝を立ててテレビを見ていた
「はしたないですよ、小鳥さん」
「着替え、忘れちゃって」
片眉を上げる真を横目に、小鳥は引き出しを開けた
「見たいなら見ていいのよ」
「見ませんよ」
「残念」
半袖のTシャツを一枚、頭からかぶった
銀の缶を一つ抓んで、柔らかな灯りの灯る部屋へ
部屋では真が片膝を立ててテレビを見ていた
「はしたないですよ、小鳥さん」
「着替え、忘れちゃって」
片眉を上げる真を横目に、小鳥は引き出しを開けた
「見たいなら見ていいのよ」
「見ませんよ」
「残念」
半袖のTシャツを一枚、頭からかぶった
60: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/11(金) 02:13:05.55 :147yf4yHo
特に何か祝い事という訳でもないが
自然と二人、杯をぶつける
それは片方が未成年で、杯に注がれているのが果汁100%だとしても変わらない
更に言えば、片方が杯に注がず、缶のまま口をつけていたとしても
「今日もお疲れ様」
「お疲れさまです。小鳥さん」
特に何か祝い事という訳でもないが
自然と二人、杯をぶつける
それは片方が未成年で、杯に注がれているのが果汁100%だとしても変わらない
更に言えば、片方が杯に注がず、缶のまま口をつけていたとしても
「今日もお疲れ様」
「お疲れさまです。小鳥さん」
61: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/11(金) 02:13:57.55 :147yf4yHo
火照った身体に冷たい炭酸を流し込む
喉に炭酸の刺激を感じながら、缶の上半分を一度に開ける
胃に落ちていく、喉越しの快感
「ふぁああああ……」
間抜けな声が肺から抜ける
火照った身体に冷たい炭酸を流し込む
喉に炭酸の刺激を感じながら、缶の上半分を一度に開ける
胃に落ちていく、喉越しの快感
「ふぁああああ……」
間抜けな声が肺から抜ける
62: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/11(金) 02:14:46.60 :147yf4yHo
「ボクも早く大人になりたいです」
「飲みたいの?」
「あんまり美味しそうに飲むから。小鳥さんが」
「そうね、美味しいし、気持ちいいわ」
そう言ってまた、一口含む
最初の一口目とはまた違う味わい
舌の上で炭酸を踊らせる
「ボクも早く大人になりたいです」
「飲みたいの?」
「あんまり美味しそうに飲むから。小鳥さんが」
「そうね、美味しいし、気持ちいいわ」
そう言ってまた、一口含む
最初の一口目とはまた違う味わい
舌の上で炭酸を踊らせる
63: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/11(金) 02:15:52.91 :147yf4yHo
「いいですね」
「大人になる、なんて直ぐよ」
「そうですか?」
「なりたくなくても、ならざるを得ないの」
缶を持つ手の人差し指を
小鳥は真に向けて言う
減った中身がたぷたぷと鳴る
「こんな大人になっちゃダメよ?」
「気をつけますよ。それがどんな大人を指すかわかりませんが」
真は小鳥の方を見ぬままに
オレンジジュースを啜って笑った
「ボクはまだ子供ですから」
「いいですね」
「大人になる、なんて直ぐよ」
「そうですか?」
「なりたくなくても、ならざるを得ないの」
缶を持つ手の人差し指を
小鳥は真に向けて言う
減った中身がたぷたぷと鳴る
「こんな大人になっちゃダメよ?」
「気をつけますよ。それがどんな大人を指すかわかりませんが」
真は小鳥の方を見ぬままに
オレンジジュースを啜って笑った
「ボクはまだ子供ですから」
64: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/12(土) 17:18:41.60 :8t9zyfLRo
静かな宴は滔々と続き
時計の針が天辺を指す頃には小鳥の頬も紅くなっていた
机の上には酒の肴の乾きものと、空いた缶が一つ二つ
そして今、もう一つ缶が空になろうとしていた
後ろ手に体重を預け、缶を煽る小鳥の隣で
真が「ご馳走様でした」と手を合わせる
ご飯粒一つ残らない弁当の容器をコンビニ袋にまた詰めて
ついでに机の上のゴミも拾って、真は袋の口を結んだ
静かな宴は滔々と続き
時計の針が天辺を指す頃には小鳥の頬も紅くなっていた
机の上には酒の肴の乾きものと、空いた缶が一つ二つ
そして今、もう一つ缶が空になろうとしていた
後ろ手に体重を預け、缶を煽る小鳥の隣で
真が「ご馳走様でした」と手を合わせる
ご飯粒一つ残らない弁当の容器をコンビニ袋にまた詰めて
ついでに机の上のゴミも拾って、真は袋の口を結んだ
65: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/12(土) 17:33:55.57 :8t9zyfLRo
「真ちゃん、ありがとう」
「どういたしまして」
「ついでにこの空き缶も……」
「そのくらいは自分でやってください」
ぴしゃりと言われ、小鳥は照れ笑いと共に少し、肩をすくめた
「真ちゃん、ありがとう」
「どういたしまして」
「ついでにこの空き缶も……」
「そのくらいは自分でやってください」
ぴしゃりと言われ、小鳥は照れ笑いと共に少し、肩をすくめた
66: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/12(土) 17:36:57.31 :8t9zyfLRo
三つ空き缶を潰して、やおら立ち上がり廊下の台所へ
台所では真が洗いものをしていた
一度真を通り過ぎ、缶を三つ、ゴミ袋に投げてから
疼いた本能の赴くまま、真の背中に抱きついた
真の肩に顎を乗せて、ゴロゴロと猫のように首筋に頬を擦りつける
三つ空き缶を潰して、やおら立ち上がり廊下の台所へ
台所では真が洗いものをしていた
一度真を通り過ぎ、缶を三つ、ゴミ袋に投げてから
疼いた本能の赴くまま、真の背中に抱きついた
真の肩に顎を乗せて、ゴロゴロと猫のように首筋に頬を擦りつける
67: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/12(土) 17:37:39.90 :8t9zyfLRo
「重いですよ、小鳥さん」
「真ちゃん……良い匂い……」
「小鳥さんはお酒くさいですよ」
「酔っ払いだもの」
「はいはい」
「適当にあしらわないでください。きずつきます」
「面倒臭い大人ですね」
「重いですよ、小鳥さん」
「真ちゃん……良い匂い……」
「小鳥さんはお酒くさいですよ」
「酔っ払いだもの」
「はいはい」
「適当にあしらわないでください。きずつきます」
「面倒臭い大人ですね」
68: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/12(土) 17:38:15.31 :8t9zyfLRo
小鳥の相手をしつつも真は手を休めない
自分の汚した食器とコップ
それと小鳥の朝食に使われたであろう食器も一緒に洗う
「あんまりため込んじゃダメですよ」
「面倒なんだもの」
「面倒でも、です」
「うー」
「噛まないでください、小鳥さん」
小鳥の相手をしつつも真は手を休めない
自分の汚した食器とコップ
それと小鳥の朝食に使われたであろう食器も一緒に洗う
「あんまりため込んじゃダメですよ」
「面倒なんだもの」
「面倒でも、です」
「うー」
「噛まないでください、小鳥さん」
69: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/12(土) 17:40:03.09 :8t9zyfLRo
水切り籠が食器で一杯になると真は蛇口を締め、手を振り水を切った
そして仕返しとばかりに、濡れた手で小鳥の頬をなぞった
「ひゃぅ!?」
変な声が出た。恥ずかしい
「ほら、戻りますよ。小鳥さん」
うーうーと唸る小鳥を引きずって、真はずるずるとリビングに戻った
水切り籠が食器で一杯になると真は蛇口を締め、手を振り水を切った
そして仕返しとばかりに、濡れた手で小鳥の頬をなぞった
「ひゃぅ!?」
変な声が出た。恥ずかしい
「ほら、戻りますよ。小鳥さん」
うーうーと唸る小鳥を引きずって、真はずるずるとリビングに戻った
71: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/15(火) 00:03:41.98 :IgAOMoYKo
真は背中にへばりつく小鳥をごろんとベッドに投げる
小鳥は抵抗することなく、整った布団の上に、仰向けに転がった
「ありがと、真ちゃん」
小鳥は横になったまま、真に両手を伸ばした
真は背中にへばりつく小鳥をごろんとベッドに投げる
小鳥は抵抗することなく、整った布団の上に、仰向けに転がった
「ありがと、真ちゃん」
小鳥は横になったまま、真に両手を伸ばした
72: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/15(火) 00:17:39.45 :IgAOMoYKo
頬を赤らめて
口元を少し尖らせて
真の瞳をじっと、見つめて
真の影が小鳥に重なる
小鳥の潤んだ瞳だけが暗がりの中ゆるりと光る
「悪い大人、ですね」
誘われるままに
真はギシリとベットに乗った
頬を赤らめて
口元を少し尖らせて
真の瞳をじっと、見つめて
真の影が小鳥に重なる
小鳥の潤んだ瞳だけが暗がりの中ゆるりと光る
「悪い大人、ですね」
誘われるままに
真はギシリとベットに乗った
73: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/15(火) 00:18:39.34 :IgAOMoYKo
小鳥の頬を指の甲で撫でる
さらりと、柔らかな髪の毛が指に触れる
こちらを誘う艶やかな唇を、真は唇で塞いだ
小鳥の腕が真の首の後ろに回される
ぎゅっと抱きしめると、真の細い身体は柔らかく、暖かかった
唇の感触を確かめるように、何度も向きを、傾きを変える
小鳥の頬を指の甲で撫でる
さらりと、柔らかな髪の毛が指に触れる
こちらを誘う艶やかな唇を、真は唇で塞いだ
小鳥の腕が真の首の後ろに回される
ぎゅっと抱きしめると、真の細い身体は柔らかく、暖かかった
唇の感触を確かめるように、何度も向きを、傾きを変える
74: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/15(火) 00:26:18.89 :IgAOMoYKo
舌を侵入させ、歯並びをなぞる
口蓋をくすぐる、舌の裏を撫でる
舌を絡め、舌を吸い、舌を噛む
口の周りが互いの唾液に塗れることも気にせずに
目を閉じたまま、互いを貪った
舌を侵入させ、歯並びをなぞる
口蓋をくすぐる、舌の裏を撫でる
舌を絡め、舌を吸い、舌を噛む
口の周りが互いの唾液に塗れることも気にせずに
目を閉じたまま、互いを貪った
75: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/15(火) 02:09:43.28 :IgAOMoYKo
小鳥のシャツの裾から、真は手を入れる
素肌をなぞって上へ、上へ
腕の動きに重なって、ずるり、ずるりと服がはだける
時々びくりと小鳥が反応したが、真は唇を離さなかった
互いの鼻息が荒くなる
睫毛が当たって、くすぐったい
小鳥のシャツの裾から、真は手を入れる
素肌をなぞって上へ、上へ
腕の動きに重なって、ずるり、ずるりと服がはだける
時々びくりと小鳥が反応したが、真は唇を離さなかった
互いの鼻息が荒くなる
睫毛が当たって、くすぐったい
76: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/15(火) 02:33:10.85 :IgAOMoYKo
柔らかく乳房を揉むと、小鳥は唇の隙間から声を漏らした
Tシャツ一枚に守られていた胸は、今はもう蛍光灯の下に晒される
真の手の中で遊ばれる胸は、手の動きに合わせて形を変える
徐々に硬くなってきた先端の紅色を抓まれて、ぞくりと背中を震わせる
柔らかく乳房を揉むと、小鳥は唇の隙間から声を漏らした
Tシャツ一枚に守られていた胸は、今はもう蛍光灯の下に晒される
真の手の中で遊ばれる胸は、手の動きに合わせて形を変える
徐々に硬くなってきた先端の紅色を抓まれて、ぞくりと背中を震わせる
77: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/16(水) 01:41:41.35 :EE/FCHsOo
唇を離すと蕩けた小鳥の瞳と目が合った
べたつく口の周りを拭うのは躊躇われた
躊躇われたから、舌で舐めとった
混ざった互いの唾液の味
化粧水か乳液か、少し苦く小鳥の味が混じる
唇を離すと蕩けた小鳥の瞳と目が合った
べたつく口の周りを拭うのは躊躇われた
躊躇われたから、舌で舐めとった
混ざった互いの唾液の味
化粧水か乳液か、少し苦く小鳥の味が混じる
78: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/16(水) 01:48:52.01 :EE/FCHsOo
すん、と小鳥の腕の付け根に鼻を近づけ、舐める
甘酸っぱい匂いが鼻孔にへばりつき
真の舌の先を汗の塩気が刺激する
羞恥心からか、小鳥は懸命に真の頭をどかそうとする
漏れる声、上擦る声
真は更に昂ぶりを覚えた
すん、と小鳥の腕の付け根に鼻を近づけ、舐める
甘酸っぱい匂いが鼻孔にへばりつき
真の舌の先を汗の塩気が刺激する
羞恥心からか、小鳥は懸命に真の頭をどかそうとする
漏れる声、上擦る声
真は更に昂ぶりを覚えた
79: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/16(水) 01:49:23.56 :EE/FCHsOo
べろん、べろんと小鳥の体中を味わう
その度に小鳥は僅かに息を漏らし、肌の表面を震わせた
さらりとした肌の感触
チクチクと感じる剃り残した体毛
どくりどくりと反応する鼓動
徐々に下に、下に
真は小鳥の下着の中に、手を入れた
べろん、べろんと小鳥の体中を味わう
その度に小鳥は僅かに息を漏らし、肌の表面を震わせた
さらりとした肌の感触
チクチクと感じる剃り残した体毛
どくりどくりと反応する鼓動
徐々に下に、下に
真は小鳥の下着の中に、手を入れた
80: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/16(水) 16:18:50.81 :EE/FCHsOo
蒸せ返るショーツの中で、真の掌をチクチクと刺激する
多少の手入れはしているとはいえ、グラビア撮影の予定もないため
手入れの度合いはアイドルである真ほどではないようだ
性器の表には僅かに液が染み出る
真は生暖かいそれを掬って、小鳥の恥部全体に擦りつけた
小鳥の溝に真の細い指はぬぷりと嵌り、レールの上を往復するように刺激する
擦れば擦るほど潤滑液が分泌され、引くつく肛門を伝い、液がショーツの背側にまで垂れる
蒸せ返るショーツの中で、真の掌をチクチクと刺激する
多少の手入れはしているとはいえ、グラビア撮影の予定もないため
手入れの度合いはアイドルである真ほどではないようだ
性器の表には僅かに液が染み出る
真は生暖かいそれを掬って、小鳥の恥部全体に擦りつけた
小鳥の溝に真の細い指はぬぷりと嵌り、レールの上を往復するように刺激する
擦れば擦るほど潤滑液が分泌され、引くつく肛門を伝い、液がショーツの背側にまで垂れる
81: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/16(水) 16:23:51.24 :EE/FCHsOo
小鳥が声を抑えられなくなった頃
真も我慢の限界を迎え、小鳥の顔に頭を寄せた
「入れますよ」と一言耳元で囁き、十分な潤滑液を纏った中指を小鳥に咥えさせ始める
第一関節、第二関節と奥へ進んでいくたびに小鳥の中が締まり、蠢く
小鳥の中は暖かく、冷えた真の指先には火傷するほどに熱く感じられた
小鳥が声を抑えられなくなった頃
真も我慢の限界を迎え、小鳥の顔に頭を寄せた
「入れますよ」と一言耳元で囁き、十分な潤滑液を纏った中指を小鳥に咥えさせ始める
第一関節、第二関節と奥へ進んでいくたびに小鳥の中が締まり、蠢く
小鳥の中は暖かく、冷えた真の指先には火傷するほどに熱く感じられた
82: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/28(月) 01:39:51.33 :duL9nF2wo
真は指を曲げ、腹側を押す
小鳥は切なく、短く、声を紡ぐ
中を広げるように、ぐるりぐるりと指をまわすと
空いた隙間からどろりと白く濁った液が零れる
呆けた顔で、互いを見つめる
交わす吐息は熱を帯びる
湿った部屋の中
汗と性の混じった匂い
短く息を漏らして
小鳥は達した
真は指を曲げ、腹側を押す
小鳥は切なく、短く、声を紡ぐ
中を広げるように、ぐるりぐるりと指をまわすと
空いた隙間からどろりと白く濁った液が零れる
呆けた顔で、互いを見つめる
交わす吐息は熱を帯びる
湿った部屋の中
汗と性の混じった匂い
短く息を漏らして
小鳥は達した
83: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/28(月) 02:13:18.48 :duL9nF2wo
夜風に少し肌寒さを感じて、真はうたた寝から覚めた
視界の端でカーテンが揺れる
シーツを一枚纏った肢体の凹凸を
青白い月明りが影で表す
涼しさを覚える薄暗い部屋に小鳥の姿は無い
ベランダのガラス戸が少し、開いていた
夜風に少し肌寒さを感じて、真はうたた寝から覚めた
視界の端でカーテンが揺れる
シーツを一枚纏った肢体の凹凸を
青白い月明りが影で表す
涼しさを覚える薄暗い部屋に小鳥の姿は無い
ベランダのガラス戸が少し、開いていた
84: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/28(月) 02:16:18.44 :duL9nF2wo
カラカラと戸を引くと、小鳥がこちらを振り向いた
「起こしちゃった?」
ベランダの柵に肘を着いたまま、口元の黒子を少し持ち上げる
右手に挟んだ煙草から
ゆらりゆらりと煙が漏れる
青黒い空を、灰色で隠す
カラカラと戸を引くと、小鳥がこちらを振り向いた
「起こしちゃった?」
ベランダの柵に肘を着いたまま、口元の黒子を少し持ち上げる
右手に挟んだ煙草から
ゆらりゆらりと煙が漏れる
青黒い空を、灰色で隠す
85: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/28(月) 02:25:14.72 :duL9nF2wo
真も隣に肘を着く
素肌にそのまま羽織ったパーカーは、少し真には大きかった
地面の温さと月の涼しさの混じった、夜の風
今の二人には涼しく感じられた
「ちょっと、口が寂しくなっちゃって」
小鳥の咥えた煙草の先端が赤く燃える
溜息とも取れる様な吐息を、煙と共に吐いた
「ダメな大人よね」
そう言って小鳥は、自嘲気味に笑みを吐く
真も隣に肘を着く
素肌にそのまま羽織ったパーカーは、少し真には大きかった
地面の温さと月の涼しさの混じった、夜の風
今の二人には涼しく感じられた
「ちょっと、口が寂しくなっちゃって」
小鳥の咥えた煙草の先端が赤く燃える
溜息とも取れる様な吐息を、煙と共に吐いた
「ダメな大人よね」
そう言って小鳥は、自嘲気味に笑みを吐く
86: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/28(月) 02:26:26.99 :duL9nF2wo
「未成年の女の子を自宅に連れ込んで、性行為。酒に溺れて、煙草に逃げる」
一つ一つの言葉を噛みしめる様に
悔いるように、小鳥は呟く
瞳は何処か、遠くの空を見つめたまま
「ダメね、私」
そう言ってまた、細く煙を吐いた
そんな小鳥の横顔を、真は何も言わずに見つめていた
「未成年の女の子を自宅に連れ込んで、性行為。酒に溺れて、煙草に逃げる」
一つ一つの言葉を噛みしめる様に
悔いるように、小鳥は呟く
瞳は何処か、遠くの空を見つめたまま
「ダメね、私」
そう言ってまた、細く煙を吐いた
そんな小鳥の横顔を、真は何も言わずに見つめていた
87: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/28(月) 02:27:35.60 :duL9nF2wo
「嫌でしょ?煙草臭い彼女なんっ……」
そんな小鳥の唇を
真は食むように、奪った
愛をぶつける様なキスではなく
愛を確かめる様な、優しいキスを
「嫌でしょ?煙草臭い彼女なんっ……」
そんな小鳥の唇を
真は食むように、奪った
愛をぶつける様なキスではなく
愛を確かめる様な、優しいキスを
88: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/28(月) 02:28:07.16 :duL9nF2wo
最後に小鳥の黒子を舐めて
真はゆっくりと顔を離した
「好きですよ、小鳥さん」
月に濡れた真の唇
優しく柔らかく、微笑んだ
最後に小鳥の黒子を舐めて
真はゆっくりと顔を離した
「好きですよ、小鳥さん」
月に濡れた真の唇
優しく柔らかく、微笑んだ
89: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/28(月) 02:29:02.77 :duL9nF2wo
ゆらりゆらりと流れる雲から
漏れた月明りが真を照らす
「ありがとう、真ちゃん」
白い頬に僅かに灯った紅
小鳥の涙を指で掬った
「私も真ちゃんの事、大好きよ」
狭いベランダ、柵に肘を掛けて
あなたと私二人きり
「大好きよ……」
二人を、ぬるい夜風が擽った
二つ影が重なって、ぼやけた月に浮かんだ
ゆらりゆらりと流れる雲から
漏れた月明りが真を照らす
「ありがとう、真ちゃん」
白い頬に僅かに灯った紅
小鳥の涙を指で掬った
「私も真ちゃんの事、大好きよ」
狭いベランダ、柵に肘を掛けて
あなたと私二人きり
「大好きよ……」
二人を、ぬるい夜風が擽った
二つ影が重なって、ぼやけた月に浮かんだ
90: ◆b2/ys3/tgw:2016/03/28(月) 02:29:33.03 :duL9nF2wo
おわり
おわり
コメント