ピエロ｢オイラは占いピエロ。あなたの運勢を占いましょうお嬢さん｣

絵里｢……気味が悪い声ね｣

希｢そうかなぁ？ 結構おもろいやん｣

ｶﾀｶﾀ

希｢あ、口から紙が出てきた。なんて書いてあるんやろ｣

絵里｢『薄いものに注意』？ 占いというよりおみくじみたいものね｣

絵里｢希、今日はクレープでも食べて帰りましょう｣

――希の家

TV｢ｶﾞﾔｶﾞﾔ｣

希｢ふふっ、おもろいな｣

希｢さて、そろそろ宿題やらんとな｣

希｢痛っ｣

希｢紙で手、切るなんて久しぶ……｣

希(『薄いものに注意』か……あの占いが当たったんやね)

――教室

希｢本当なんよ。信じてもらえんかもしれんけど｣

希｢ピッタリ当たったんやから！｣

希｢だから今日もあそこに行かへん？｣

絵里｢い……いいけど｣

――地下２階

ピエロ｢オイラは占いピエロ。あなたの運勢を占いましょうお嬢さん｣

絵里(どうして『お嬢さん』なのかしら？ 使うのは別に女性だけじゃないはずなのに……)

希｢『四角いものに注意』……？ どういうことなんやろ｣

絵里｢気にすることないわよ。所詮占いなんだから｣

希｢で、でも昨日のは当たったし……｣

絵里｢それは偶然が重なっただけよ。心配ないわ｣

希｢そ、それもそうやな。……えりちもやってみたら？｣

絵里｢私はいいわ。あまりこういうものにお金は使わないの｣

―――
――
―

絵里｢じゃあね希｣

希｢えりちまた明日｣

絵里｢――希っ！｣ｸﾞｲｯ

希｢ど、どうしたん｣

ｶﾞｯｼｬｰﾝ

希｢えり、ち……｣

希｢し、四角い看板……あのピエロが言った通りや……｣

希｢あのピエロの占いはやっぱり当たるんや！｣

絵里｢の、希……落ち着いて｣

――翌日

絵里｢昨日は大したことなくてよかったわね｣

希｢う……うん｣

絵里｢随分元気がないじゃない。どうしたの？｣

希｢い、いや……何でもないよ……｣

――教室
絵里(希、大丈夫かしら……)

希(今日は何が起こるんやろ……朝から不安で胸がつぶれてしまいそうや……)

希(今日の体育は跳び箱や……うちが飛んでる時箱が崩れたら……)

希(お昼を食べる時、食中毒を起こしたらどうしよう……)

希(街でガラの悪い人に絡まれたらどないしよ……)

希(怖い……怖いんよ！ あのピエロに運勢を聞かないと安心できへん……)

―――
――
―

希｢えりち、うち今日早退するわ……｣

絵里｢どうしたのよ。まだ三時間目よ？ まさかあのインチキピエロの所へ行くんじゃないでしょうね｣

希｢インチキなんかじゃあらへん！ あれは危険を警告してくれてるんや！｣

絵里｢希……｣

――地下２階
希｢……｣

ｶﾞﾁｬ

ピエロ｢オイラは占いピエロ……｣

――絵里の家
絵里(希と連絡が取れないわ……)

絵里(もう10時なのに……もしかして、まだあそこにいるんじゃ……)

――地下２階

絵里｢希！｣

希｢……！｣

絵里｢やっぱりここにいたのね。心配したんだから！｣

希｢ごめんえりち……今日は家に帰れんのよ｣

絵里｢ど……どうしてよ!?｣

希｢だって、占いで家に帰ると危険やって……！｣

絵里｢じゃあ、私の家に泊まれば……｣

希｢だめや、ここから離れること自体が危険なんや。コレ見てみ！｣ﾊﾞｻﾊﾞｻ

絵里｢こんなに……いったいいくらお金使ったの!?｣

希｢いいから読んでみてや！｣

絵里｢『家に注意』｣

絵里｢『見知らぬ人に注意』｣

絵里｢『食事に注意』｣

絵里｢『携帯に注意』｣

絵里｢『今いる場所以外に注意』｣

絵里｢なによこれ！ まさかこれ全部信じてるわけじゃないでしょうね！｣

希｢信じてるよ！ 2回ともぴったり当たったやろ！｣

絵里｢ねえ、希、よく聞いて……アフリカや南米じゃ呪術で人を殺せると信じてる人達がいるわ｣

絵里｢実際死んだ人もいるけれど、それは自分が呪われたと信じたからなの｣

絵里｢強い心理的恐怖が身体に影響を与えて自滅したのよ｣

絵里｢希の場合もそれと同じよ。占いを信じる心が潜在意識に影響を与えて、無意識のうちに手を切ったのよ｣

希｢そ……そうやろか……｣

絵里｢そうよ！ 占いが当たるんじゃなくて希が占いの通りに行動していたのよ｣

絵里｢私も試しにやってみるわ！｣

ｶﾞﾁｬ

希｢なんて書いてあるん？｣

絵里｢『2分後に死ぬ』!?｣

絵里｢悪質だわ、こんなの入れとくなんて……いったいどこの会社が作ってるのかしら……｣

絵里｢え!?｣

絵里｢コンセントが繋がってない!?｣

絵里｢ど、どうして……｣

希｢え、えりち……｣

ピエロ｢俺の占いは当たるぞ!!｣

ピエロ｢お前らは死ぬんだケケケケ｣

希｢!!｣

絵里｢に、逃げるわよ希！｣

ピエロ｢逃がさねぇよぉ！｣

のぞえり｢あ!?｣

絵里｢いつの間に前に……｣

ピエロ｢俺の占い通り、お前らは二分後に死ぬんだ！ギャハハハハ｣ｶﾞﾁｬｶﾞﾁｬ

希｢ギャ！｣ｽﾞﾊﾞｯ

絵里｢希！ 深い傷が……｣

ピエロ｢俺の占いは絶対当たるんだ。死ぬ 死ぬ 絶対死ぬ！｣

希｢く、来るな！｣

絵里｢！｣

絵里(ピエロの足に影がついてない！)

絵里(影がついていないということはあれは実体じゃない！)

絵里(実体じゃないものに切りつけられるなんておかしいわ！)

絵里(やっぱり……希の傷も消えてる)

絵里(そうよ……わかったわ)

絵里｢希！ これは幻よ！ 目の前にいるピエロは実際にはいないのよ！｣

希｢でも……でも切りつけられたやないか！｣

絵里｢呪いで死んだ人間と同じよ！ 切られたと思い込んだから、切られたの！｣

絵里｢今、証拠を見せてあげるわ！｣

ピエロ｢ケケケケ｣ｸﾞｻｯ

希｢えりち！｣

ピエロ｢ギ……｣

絵里｢ほら、私は生きてる！ 傷もないわ！｣

絵里｢あいつの存在を信じさえしなければあいつは何も出来ない！｣

絵里｢希！ あなたがピエロの言うことを信じてたら本当に殺される！｣

絵里｢あいつのことなんて信じないって叫ぶのよ！ 心の底から！｣

ピエロ｢３分たったぞ。お前らの死ぬ時が来た！ 今死ぬ、すぐ死ぬ、絶対死ぬ、[ﾋﾟｰｰｰ][ﾋﾟｰｰｰ][ﾋﾟｰｰｰ]｣

希｢ピエロの言うことなんて信じへん！ 絶対信じへんよ!!｣

ｷﾞｬｱｱ……

希｢はあ、はあ、はあ｣

ピエロ｢……｣

シー……ン

絵里｢やったわ！ 私達、あいつに勝ったのよ！｣

希｢えりち……｣

ｶﾞﾁｬ

のぞえり｢えっ！？｣

絵里｢ふふっ、なにこれ｣

希｢……なんて書いてあるん？｣

絵里｢『故障中』だって！｣

完

以上です。表現がわかりにくくてすみません。m(_ _)m