2:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 11:38:26.70 :qLrgdK/x0
×××藩には、かつて鬼がいた。
藩主の×××氏。
美しい女を攫って斬り殺し、
子どもを捕らえて熊に食わせる。
人々は彼女を恐れた。
×××藩には、かつて鬼がいた。
藩主の×××氏。
美しい女を攫って斬り殺し、
子どもを捕らえて熊に食わせる。
人々は彼女を恐れた。
3:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 11:40:49.76 :qLrgdK/x0
島村卯月は、忍耐の人であった。
戦国では足軽として戦い、
そこで小さいながらも功を立てた。
武士の位を与えられたあとも驕らず、
よく学び、よく藩民に尽くした。
他人に世話を焼き面倒を見るのが、
生来の気性なのか、
人の髪剃りなどもよくした。
それが結構に上手で、
島村は城付きの髪剃り師として
殿に仕えるようになった。
島村卯月は、忍耐の人であった。
戦国では足軽として戦い、
そこで小さいながらも功を立てた。
武士の位を与えられたあとも驕らず、
よく学び、よく藩民に尽くした。
他人に世話を焼き面倒を見るのが、
生来の気性なのか、
人の髪剃りなどもよくした。
それが結構に上手で、
島村は城付きの髪剃り師として
殿に仕えるようになった。
4:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 11:41:16.59 :qLrgdK/x0
しかし島村は、
未だに殿の顔を見たことがなかった。
家臣達によると、塞ぎがちな性格で、
信用した人間以外寄せ付けないという。
しかし島村は、
未だに殿の顔を見たことがなかった。
家臣達によると、塞ぎがちな性格で、
信用した人間以外寄せ付けないという。
5:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 11:42:01.69 :qLrgdK/x0
殿は、×××一族の中では末席で、
本来であれば藩主になるはずではなかった。
幼い頃の殿はそれを悔しがるでもなく、
むしろ悠々自適、のびのびと育ったという。
しかし一族に相次いで不幸があって、彼女が担ぎ出された。
昨日までは自由に野山を駆けていたのに、
書院に閉じ込められ、
“藩主のなんたるか”を叩き込まれた。
それも、かつて自分を侮蔑していた人間達から。
殿は、×××一族の中では末席で、
本来であれば藩主になるはずではなかった。
幼い頃の殿はそれを悔しがるでもなく、
むしろ悠々自適、のびのびと育ったという。
しかし一族に相次いで不幸があって、彼女が担ぎ出された。
昨日までは自由に野山を駆けていたのに、
書院に閉じ込められ、
“藩主のなんたるか”を叩き込まれた。
それも、かつて自分を侮蔑していた人間達から。
6:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 11:42:35.98 :qLrgdK/x0
だが、島村はとしては殿に同情する気にはなれぬ。
彼女は抑圧の反動から、
女色に走り、藩の女を攫う。
そして飽くまで味わうと、
あっけなく殺してしまう。
子どもなどが町を駆けていると、
それが気にくわないらしく、
捕まえて、飼っている熊の餌にしてしまう。
領民にとっては、まさに恐怖の対象である。
だが、島村はとしては殿に同情する気にはなれぬ。
彼女は抑圧の反動から、
女色に走り、藩の女を攫う。
そして飽くまで味わうと、
あっけなく殺してしまう。
子どもなどが町を駆けていると、
それが気にくわないらしく、
捕まえて、飼っている熊の餌にしてしまう。
領民にとっては、まさに恐怖の対象である。
7:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 11:43:03.11 :qLrgdK/x0
誰かが殿を止めなければならない。
しかし、誰も諫言することはできぬ。
かつでできた者は皆死んだ。
無論、島村にとっても無理なことである。
誰かが殿を止めなければならない。
しかし、誰も諫言することはできぬ。
かつでできた者は皆死んだ。
無論、島村にとっても無理なことである。
8:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 11:43:34.81 :qLrgdK/x0
殿が女を殺した次の日、
また新しいものがやってきた。
名前は美穂という。
閨に入る彼女の身なりを整えるのは、島村の仕事であった。
殿が女を殺した次の日、
また新しいものがやってきた。
名前は美穂という。
閨に入る彼女の身なりを整えるのは、島村の仕事であった。
9:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 11:44:09.79 :qLrgdK/x0
島村はまず、
美穂の着物をしゅるしゅると脱がした。
殿は、髪以外の体毛を著しく嫌う。
なので、それらを残さず剃るのが
島村の責務である。
美穂はかすかに震えていた。
無理もない。
これから彼女は、人食い鬼と一夜を共にするのだから。
島村はまず、
美穂の着物をしゅるしゅると脱がした。
殿は、髪以外の体毛を著しく嫌う。
なので、それらを残さず剃るのが
島村の責務である。
美穂はかすかに震えていた。
無理もない。
これから彼女は、人食い鬼と一夜を共にするのだから。
10:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 11:44:42.09 :qLrgdK/x0
島村は、美穂のうなじを見た。
かすかにうぶ毛が生えている。
さわるとふわりと、心地よい。
しかし全て剃らねばならぬ。
島村は美穂の首をつかんで、動きを止めた。
そしてうなじに剃刀を当てる。
しょりしょりと微かな音を立てて、うぶ毛が落ちる。
島村は、美穂のうなじを見た。
かすかにうぶ毛が生えている。
さわるとふわりと、心地よい。
しかし全て剃らねばならぬ。
島村は美穂の首をつかんで、動きを止めた。
そしてうなじに剃刀を当てる。
しょりしょりと微かな音を立てて、うぶ毛が落ちる。
11:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 11:45:15.35 :qLrgdK/x0
剃った跡は、美穂の白くしっとりとした肌に、
ほのかに赤みが挿していた。
島村がそこにふれると、
じんわりと熱を帯びていた。
ここにくちづけをしてみたい。
島村はそんな衝動を覚えた。
しかしできぬ。
剃った跡は、美穂の白くしっとりとした肌に、
ほのかに赤みが挿していた。
島村がそこにふれると、
じんわりと熱を帯びていた。
ここにくちづけをしてみたい。
島村はそんな衝動を覚えた。
しかしできぬ。
12:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 11:45:44.01 :qLrgdK/x0
殿の相手をする女である。
我慢、我慢とこらえていると、今度は剃刀を
持つ手が震えた。
美穂はそれほどに、美しい少女だった。
殿の相手をする女である。
我慢、我慢とこらえていると、今度は剃刀を
持つ手が震えた。
美穂はそれほどに、美しい少女だった。
13:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 11:46:27.06 :qLrgdK/x0
美穂は1日目の夜を生き延びた。
だが町に戻されるはずはなく、
城で囚われの身になった。
そして島村が、彼女の世話をすることになった。
美穂は、自分は城下の富商の娘だと言った。
その富商が殿に、彼女を差し出したそうだ。
見返りは、城で賄われる物品取引の独占。
娘1人と引き換えなら、安いとでも思ったのだろうか。
島村は美穂を哀れんだ。
美穂は1日目の夜を生き延びた。
だが町に戻されるはずはなく、
城で囚われの身になった。
そして島村が、彼女の世話をすることになった。
美穂は、自分は城下の富商の娘だと言った。
その富商が殿に、彼女を差し出したそうだ。
見返りは、城で賄われる物品取引の独占。
娘1人と引き換えなら、安いとでも思ったのだろうか。
島村は美穂を哀れんだ。
14:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 11:47:02.65 :qLrgdK/x0
2人はよく話すようになった。
すると島村は、美穂が
純真で朗らかな性格をしていることがわかった。
城にきたばかりは流石に沈んでいたが、会話を重ねるうち、
美穂は島村に心を許したようだ。
2人はよく話すようになった。
すると島村は、美穂が
純真で朗らかな性格をしていることがわかった。
城にきたばかりは流石に沈んでいたが、会話を重ねるうち、
美穂は島村に心を許したようだ。
15:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 11:47:35.31 :qLrgdK/x0
島村の方も、いけないと思いつつ、
美穂に心を寄せた。
美穂は完璧な少女だった。
てらてらと輝く、緑の黒髪。
好奇心がかすかに残る、大きくて綺麗な瞳。
小生意気さと愛らしさで、ぴんと立った鼻。
にっこり笑顔が似合う口。
島村の方も、いけないと思いつつ、
美穂に心を寄せた。
美穂は完璧な少女だった。
てらてらと輝く、緑の黒髪。
好奇心がかすかに残る、大きくて綺麗な瞳。
小生意気さと愛らしさで、ぴんと立った鼻。
にっこり笑顔が似合う口。
16:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 11:48:01.72 :qLrgdK/x0
言葉を交わすたび、準備のために服を脱がすたび、
島村は美穂のすべてに溺れたくなる。
唇を吸いたい。
白く、きめの細かなうなじにも
狂ったように口付けをしたい。
自分だけのものにしたい。
言葉を交わすたび、準備のために服を脱がすたび、
島村は美穂のすべてに溺れたくなる。
唇を吸いたい。
白く、きめの細かなうなじにも
狂ったように口付けをしたい。
自分だけのものにしたい。
17:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 11:48:30.05 :qLrgdK/x0
しかし殿への忠義と恐怖が、島村を抑えていた。
耐えねばなるまい。
いままでもずっと、そうしてきたのだから。
しかし殿への忠義と恐怖が、島村を抑えていた。
耐えねばなるまい。
いままでもずっと、そうしてきたのだから。
18:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 11:49:03.64 :qLrgdK/x0
閨から出てくると、島村が整えた“少女の美穂”は、
やつれた女になって帰ってくる。
時には、ひどい暴力を受けて
顔が腫れ上がっていることもあった。
なんとむごいことを。
島村は彼女の手当をしながら、共に涙を流した。
閨から出てくると、島村が整えた“少女の美穂”は、
やつれた女になって帰ってくる。
時には、ひどい暴力を受けて
顔が腫れ上がっていることもあった。
なんとむごいことを。
島村は彼女の手当をしながら、共に涙を流した。
19:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 11:49:50.03 :qLrgdK/x0
それでも美穂は、
いままでの女の中では最も長生きであった。
ひょっとすれば、殿は美穂を
人生で最も気に入っているのかもしれぬ。
島村もそうだ。
彼女より美しい少女はいないと思っている。
それでも美穂は、
いままでの女の中では最も長生きであった。
ひょっとすれば、殿は美穂を
人生で最も気に入っているのかもしれぬ。
島村もそうだ。
彼女より美しい少女はいないと思っている。
20:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 11:51:01.33 :qLrgdK/x0
だからつらい。
一息では殺されず、毎夜毎夜じわじわ嬲られ、
ぼろぼろになっていく美穂を見るのが。
「私の人生って、なんなんだろうね」
そうぽつりと言って、寂しそうに笑う彼女を
抱き止められないのが。
耐えねばなるまい。何度もそう思った。
そう思っていた。
だからつらい。
一息では殺されず、毎夜毎夜じわじわ嬲られ、
ぼろぼろになっていく美穂を見るのが。
「私の人生って、なんなんだろうね」
そうぽつりと言って、寂しそうに笑う彼女を
抱き止められないのが。
耐えねばなるまい。何度もそう思った。
そう思っていた。
21:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 11:51:29.47 :qLrgdK/x0
閨に運ばれる、童子切安綱を見るまでは。
閨に運ばれる、童子切安綱を見るまでは。
22:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 11:52:03.50 :qLrgdK/x0
美穂は今夜斬られる。
島村は悟った。
大業物安綱は、殿の刀である。
それが閨に運ばれるとは、そういうことだ。
美穂は今夜斬られる。
島村は悟った。
大業物安綱は、殿の刀である。
それが閨に運ばれるとは、そういうことだ。
23:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 11:52:30.12 :qLrgdK/x0
島村は丹念に美穂の身なりを整えた。
彼女から以前の美しさは失われつつあったが、
今夜の出来栄えは最高だった。
本当に、殿に渡すのが惜しくなってしまうほどに。
「じゃあね」
閨に入る前、美穂は島村にそう言った。
胸がしめつけられるような笑顔だった。
島村は丹念に美穂の身なりを整えた。
彼女から以前の美しさは失われつつあったが、
今夜の出来栄えは最高だった。
本当に、殿に渡すのが惜しくなってしまうほどに。
「じゃあね」
閨に入る前、美穂は島村にそう言った。
胸がしめつけられるような笑顔だった。
24:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 11:53:00.77 :qLrgdK/x0
島村は部屋の外で、ありえないと思いつつ
美穂が出てくるのを待った。
待ち続けた。
すると部屋からかすかに、血の匂いがした。
島村は部屋の外で、ありえないと思いつつ
美穂が出てくるのを待った。
待ち続けた。
すると部屋からかすかに、血の匂いがした。
25:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 11:53:28.24 :qLrgdK/x0
それをかいだ時、島村の箍がひとつ外れた。
美穂ちゃん……美穂ちゃん!
島村は、無礼を覚悟で閨に入った。
それをかいだ時、島村の箍がひとつ外れた。
美穂ちゃん……美穂ちゃん!
島村は、無礼を覚悟で閨に入った。
26:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 11:56:51.44 :qLrgdK/x0
果たして美穂はいた。
美穂1人だけが、そこにいた。
「卯月ちゃん…助けにきてくれたんですね ♪」
彼女は“童子切安綱”で、自分の手首を切っていた。
果たして美穂はいた。
美穂1人だけが、そこにいた。
「卯月ちゃん…助けにきてくれたんですね ♪」
彼女は“童子切安綱”で、自分の手首を切っていた。
27:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 11:57:20.57 :qLrgdK/x0
「これは、一体…」
島村は尋ねた。
しかしすでに察していた。
美穂は、いや“藩主の小日向美穂”は、
毎晩1人で閨に入っていたのだ。
「これは、一体…」
島村は尋ねた。
しかしすでに察していた。
美穂は、いや“藩主の小日向美穂”は、
毎晩1人で閨に入っていたのだ。
28:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 11:57:51.54 :qLrgdK/x0
「それとも、私に抱かれにきたんですか?」
魂さえも奪われそうな微笑みで、美穂が言った。
島村の心はざわめいた。
へその下あたりが、ぞくぞくした。
「それとも、私に抱かれにきたんですか?」
魂さえも奪われそうな微笑みで、美穂が言った。
島村の心はざわめいた。
へその下あたりが、ぞくぞくした。
29:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 11:58:20.17 :qLrgdK/x0
美穂ちゃんはもう、どこへも行かない。
いや、私が行かせない。
島村はにっこりと美穂に微笑み返して、剃刀を抜いた。
美穂ちゃんはもう、どこへも行かない。
いや、私が行かせない。
島村はにっこりと美穂に微笑み返して、剃刀を抜いた。
30:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 11:58:47.41 :qLrgdK/x0
「そんなもので、私をどうしようっていうの?」
太刀を持って、美穂はじりじりと島村に近づいた。
その表情は、先ほどとまったく変わらない笑顔。
「もとの美穂ちゃんに戻ってほしくて」
島村は、美穂を優しく見つめながら、答える。
「そんなもので、私をどうしようっていうの?」
太刀を持って、美穂はじりじりと島村に近づいた。
その表情は、先ほどとまったく変わらない笑顔。
「もとの美穂ちゃんに戻ってほしくて」
島村は、美穂を優しく見つめながら、答える。
31:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 11:59:49.00 :qLrgdK/x0
「あぁ…それは、素敵だね!」
美穂が斬りかかる。しかし、遅い。
真剣勝負の経験もなく、
殺めてきたのは腰の立たない女ばかり。
いまの彼女の剣術は、まさに児戯である。
それをゆったりかわしながら、島村は指で宙を掻いた。
どこを切ろうかしら、そう考えているような動きだった。
「あぁ…それは、素敵だね!」
美穂が斬りかかる。しかし、遅い。
真剣勝負の経験もなく、
殺めてきたのは腰の立たない女ばかり。
いまの彼女の剣術は、まさに児戯である。
それをゆったりかわしながら、島村は指で宙を掻いた。
どこを切ろうかしら、そう考えているような動きだった。
32:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 12:00:41.75 :qLrgdK/x0
美穂の攻撃は全く当たらない。
当然だ。
島村卯月は、狂った戦国を生き抜いた女なのだから。
とうとう美穂は、ぺたりと座り込んだ。
「疲れちゃった」
彼女はそう言った。
美穂の攻撃は全く当たらない。
当然だ。
島村卯月は、狂った戦国を生き抜いた女なのだから。
とうとう美穂は、ぺたりと座り込んだ。
「疲れちゃった」
彼女はそう言った。
33:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 12:01:12.40 :qLrgdK/x0
「そうだね」
島村は剃刀を振るった。
すると、美穂の首から顔、
頭、うなじにかけての皮膚が、
するりときれいに剥けた。
まるで、覆面のように。
「そうだね」
島村は剃刀を振るった。
すると、美穂の首から顔、
頭、うなじにかけての皮膚が、
するりときれいに剥けた。
まるで、覆面のように。
34:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 12:01:40.89 :qLrgdK/x0
美穂の身体が、どさりと倒れた。
島村は、それには目もくれず、
出来上がったばかりの
肉の面を、自分の頭に被せた。
美穂の身体が、どさりと倒れた。
島村は、それには目もくれず、
出来上がったばかりの
肉の面を、自分の頭に被せた。
35:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 12:02:19.31 :qLrgdK/x0
美穂の香り。
美穂の脂が、肌にあたって心地いい。
美穂の皮が、美穂の目蓋が、
美穂の鼻が、美穂の唇が、
美穂の雪のように白いうなじが、
島村のそれを重なる。
美穂の香り。
美穂の脂が、肌にあたって心地いい。
美穂の皮が、美穂の目蓋が、
美穂の鼻が、美穂の唇が、
美穂の雪のように白いうなじが、
島村のそれを重なる。
36:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 12:02:56.55 :qLrgdK/x0
指でふれるよりも、ずっと近い距離。
「美穂ちゃん…」
島村はうっとりと呟きながら、
自分を激しく慰めた。
指でふれるよりも、ずっと近い距離。
「美穂ちゃん…」
島村はうっとりと呟きながら、
自分を激しく慰めた。
37:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 12:03:51.08 :qLrgdK/x0
小日向藩には鬼がいる。
かつては島村卯月という人間で、
今は“櫛風”と呼ばれる。
それは可憐な少女を斬り殺して、その血を飲み干す。
血が失くなった後は、顔の皮を剥いで服を作るという。
小日向藩には鬼がいる。
かつては島村卯月という人間で、
今は“櫛風”と呼ばれる。
それは可憐な少女を斬り殺して、その血を飲み干す。
血が失くなった後は、顔の皮を剥いで服を作るという。
38:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 12:04:17.97 :qLrgdK/x0
人々は、“それ”を恐れる。
人々は、“それ”を恐れる。
39:以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします:2017/06/07(水) 12:05:04.90 :qLrgdK/x0
おしまい。
おしまい。
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