1:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/01/11(木) 21:02:58.06 :I+/hQclFO
去年の暮、母の癌が三度目の再発をしました。
80歳を越ての再発。
けれども私や菊代さんや孫達の哀しみをよそに、当の母自身はむしろその知らせに心の落ち着きを得ていたようです。
「常夫さんやまほが迎えに来てくれたのね」
そのつぶやきと共に母が浮かべた微笑みは本当に穏やかなものでした。
今、その時の彼女の心境が私自身に乗り移っています。
家族、友人、貴方達に心よりの感謝を。
そして母へ。
本当にありがとう。
私は今とても穏やかな気持ちで私の最後の歌集を編み上げています
この歌集を、私と共に生きてくれた全ての人達へ捧げます。
去年の暮、母の癌が三度目の再発をしました。
80歳を越ての再発。
けれども私や菊代さんや孫達の哀しみをよそに、当の母自身はむしろその知らせに心の落ち着きを得ていたようです。
「常夫さんやまほが迎えに来てくれたのね」
そのつぶやきと共に母が浮かべた微笑みは本当に穏やかなものでした。
今、その時の彼女の心境が私自身に乗り移っています。
家族、友人、貴方達に心よりの感謝を。
そして母へ。
本当にありがとう。
私は今とても穏やかな気持ちで私の最後の歌集を編み上げています
この歌集を、私と共に生きてくれた全ての人達へ捧げます。
2:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/01/11(木) 21:03:30.12 :I+/hQclFO
1.母
卵巣も 膵臓もはや 打つ手なし
母にゆっくりと 今年の夏来よ
1.母
卵巣も 膵臓もはや 打つ手なし
母にゆっくりと 今年の夏来よ
3:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/01/11(木) 21:04:04.31 :I+/hQclFO
母の影 わたしの影と 並びゆく
影さへも母は 迫力あらず
このひとは だんだん子供の やうになる
パンツ一枚で 西瓜くひゐる
母の影 わたしの影と 並びゆく
影さへも母は 迫力あらず
このひとは だんだん子供の やうになる
パンツ一枚で 西瓜くひゐる
4:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/01/11(木) 21:04:50.25 :I+/hQclFO
この母に こんな晩年が 来ることを
知らずに逝きたる 父がかなしい
何をどう話そうにも忘れてしまふ この母に
道辺のちひさな かたばみの花
この母に 六十年まへは 鮮らしく
『てゐがあ2』の 絵図まで描けるのに
この母に こんな晩年が 来ることを
知らずに逝きたる 父がかなしい
何をどう話そうにも忘れてしまふ この母に
道辺のちひさな かたばみの花
この母に 六十年まへは 鮮らしく
『てゐがあ2』の 絵図まで描けるのに
5:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/01/11(木) 21:05:21.30 :I+/hQclFO
姉の死さへ 忘れし母の 後ろでを
茱萸の葉ゆらせし 風がすぎゆく
畦道を はだしで歩いた 日のことを
死んだあなたは 忘れたらうか
姉の死さへ 忘れし母の 後ろでを
茱萸の葉ゆらせし 風がすぎゆく
畦道を はだしで歩いた 日のことを
死んだあなたは 忘れたらうか
6:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/01/11(木) 21:06:25.28 :I+/hQclFO
2.友
気まぐれに 電話してくる この人は
何十年経っても 私をふくたいちょうと呼ぶ
ものを忘れ やっかみ心も薄れゆき
こゑの可愛い 老女となれり
あなたは あなたでいのよと 言ひくれて
五十年来の 友の頬杖
2.友
気まぐれに 電話してくる この人は
何十年経っても 私をふくたいちょうと呼ぶ
ものを忘れ やっかみ心も薄れゆき
こゑの可愛い 老女となれり
あなたは あなたでいのよと 言ひくれて
五十年来の 友の頬杖
7:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/01/11(木) 21:07:06.13 :I+/hQclFO
幽霊に なつても来てほしい 人たちを
机の向かうに 何人と数ふ
旦那なく ひとり暮らせる 六十五歳
文藝ゼクシィ 四、五冊積みて
幽霊に なつても来てほしい 人たちを
机の向かうに 何人と数ふ
旦那なく ひとり暮らせる 六十五歳
文藝ゼクシィ 四、五冊積みて
8:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/01/11(木) 21:07:42.59 :I+/hQclFO
女にも あんな挨拶 あっていい
やあ、しばらくと はじくカンテレ
晩年を この人たちは 生きゐるが
何とはきはきと 昔を語るあんつゐお
五十年の 歳月の向こうに 煤けたる
艦の梁見ゆ 老いた友見ゆ
女にも あんな挨拶 あっていい
やあ、しばらくと はじくカンテレ
晩年を この人たちは 生きゐるが
何とはきはきと 昔を語るあんつゐお
五十年の 歳月の向こうに 煤けたる
艦の梁見ゆ 老いた友見ゆ
9:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/01/11(木) 21:08:20.07 :I+/hQclFO
3.日々
発言しておいでと母が言ふからに
戦車道連盟 熊本会議
3.日々
発言しておいでと母が言ふからに
戦車道連盟 熊本会議
10:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/01/11(木) 21:09:19.56 :I+/hQclFO
湯あがりに 耳かゆければ 綿棒を
こよこよ動かす 耳傾けて
治療費に足りない財布のお金見て
夫がカードで支払ひくるる
西海が 西住の姓の 始まりと
郷土史家言ふ 説得力がある
石の上に 私の母が 腰おろし
夏のひざしに 縮まりてゆく
湯あがりに 耳かゆければ 綿棒を
こよこよ動かす 耳傾けて
治療費に足りない財布のお金見て
夫がカードで支払ひくるる
西海が 西住の姓の 始まりと
郷土史家言ふ 説得力がある
石の上に 私の母が 腰おろし
夏のひざしに 縮まりてゆく
11:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/01/11(木) 21:09:55.19 :I+/hQclFO
4.菊代歌
臨終には しほさんしほさんと 呼ぶだらう
家元だとか 奥様ではなく
さみしい人と なりてしまひし しほさん
あなたからあなたが 剥がれてゆく
『たんぱく質の一生』はむつかしき本なれど
その一生が われらの一生
臨終の身は 六十兆の細胞の死ですか
ページ開けたまま しほさんに問ふ
このうへに 何が起こるか 六十兆の
細胞ひとつの 気まぐれ次第
あの喪服を 洗ひに出して おかねばと ぼんやり思ふ 見舞いし後
4.菊代歌
臨終には しほさんしほさんと 呼ぶだらう
家元だとか 奥様ではなく
さみしい人と なりてしまひし しほさん
あなたからあなたが 剥がれてゆく
『たんぱく質の一生』はむつかしき本なれど
その一生が われらの一生
臨終の身は 六十兆の細胞の死ですか
ページ開けたまま しほさんに問ふ
このうへに 何が起こるか 六十兆の
細胞ひとつの 気まぐれ次第
あの喪服を 洗ひに出して おかねばと ぼんやり思ふ 見舞いし後
12:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/01/11(木) 21:11:40.25 :I+/hQclFO
5.母の病室
夕陽ですよ お母さん 薄き目をひらきてみれど 見分からぬらしき
薄い目を あけて私を見る人が 今ひしひしと たつた一人の母
死んでゆく 母に届かぬ 何もできぬ
蛇口の水に 顔洗い泣く
誰か居て わたしは怖い 母が死ぬ
真水の底の やうなこの部屋
5.母の病室
夕陽ですよ お母さん 薄き目をひらきてみれど 見分からぬらしき
薄い目を あけて私を見る人が 今ひしひしと たつた一人の母
死んでゆく 母に届かぬ 何もできぬ
蛇口の水に 顔洗い泣く
誰か居て わたしは怖い 母が死ぬ
真水の底の やうなこの部屋
13:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/01/11(木) 21:12:43.08 :I+/hQclFO
お母さん あなたは私のお母さん
かがみ覗く 薄くなりし眼を
今はもう 静かに昏睡に入りゆきて
死を知らぬまま 逝かせやりたし
お母さん あなたは私のお母さん
かがみ覗く 薄くなりし眼を
今はもう 静かに昏睡に入りゆきて
死を知らぬまま 逝かせやりたし
14:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/01/11(木) 21:13:56.13 :I+/hQclFO
6.母遺歌
かたばみの小さな花を摘みあつめ五歳のあね走る 四歳のいもうとつれて
クレヨンで汚れし手指を洗いひやるもうぢき五歳になるのかみほも
焼きたてのホットケーキは甘いのよ娘らに言ふ私はお母さん
歳月は返り来るなり二人子を膝に添はせ『じゃあまんせんしゃ』読む
働いて子供を産んで死んでゆく真つたう平凡な一生肯ふ
クレヨンがここにも転がり子供らの眠りし部屋に日差しの残る
足元のたんぽぽたちは健やかだどうつてことないよなあ、ほんと
6.母遺歌
かたばみの小さな花を摘みあつめ五歳のあね走る 四歳のいもうとつれて
クレヨンで汚れし手指を洗いひやるもうぢき五歳になるのかみほも
焼きたてのホットケーキは甘いのよ娘らに言ふ私はお母さん
歳月は返り来るなり二人子を膝に添はせ『じゃあまんせんしゃ』読む
働いて子供を産んで死んでゆく真つたう平凡な一生肯ふ
クレヨンがここにも転がり子供らの眠りし部屋に日差しの残る
足元のたんぽぽたちは健やかだどうつてことないよなあ、ほんと
15:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/01/11(木) 21:15:30.81 :I+/hQclFO
7.
ひとことも言はずに死んだ
ひと風草のような
それがやさしさだったのだ
わたしのお母さん
結
(西住みほ 20xx年 没)
7.
ひとことも言はずに死んだ
ひと風草のような
それがやさしさだったのだ
わたしのお母さん
結
(西住みほ 20xx年 没)
16:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2018/01/11(木) 21:17:57.68 :I+/hQclFO
ありがとうございました。
ちょっと変わったネタですが、こういう変化球もたまにはありかなと。(駄目?)
歌の改変元:河野裕子「母系」
ありがとうございました。
ちょっと変わったネタですが、こういう変化球もたまにはありかなと。(駄目?)
歌の改変元:河野裕子「母系」
コメント
⭕西住みほが末期ガンで『死の床』にある母親、しほを見舞い、永別を告げるシーンを連想した。
⭕西住みほ『50代での末期ガンは早いとは思いません。むしろ当然の報いだと思います。あの後、黒森峰からの補助が打ち切られ、大変、苦労された事も聞いています。どうして硬式を続けさせたのですか?黒森峰との癒着はお母さんの代で断ち切るべきだったんです。そうすればお姉ちゃんやみんなも死なずに済んだのに。もう世界は空地協同のエアランドバトルが主流です。西住流に守る価値なんてなかったんです。頼みを聞いてここの入院費は払っておきますが、御葬式も出しません。お墓参りもしません。さようなら。お母さん。』
⭕醒めた目で見れば、戦車道の指導者として指導する事で『黒森峰』の学校法人から『補助金💴』を貰っている。だから、師範兼家元の西住しほがあんなにピリピリし、10連覇を逃した事で娘のみほに激怒したのも当然と言えば当然の話である。『黒森峰』はモデルに近い学校は熊本県にあるが、典型的な地方の私立の『女子高』で生徒を集めるための『宣伝』として『戦車道』に力を入れているが、おそらく効果が上がってないのだろう。PL学園の『野球⚾』と同じ。効果が上がってないからおそらく『黒森峰』の学校法人の中でも『戦車道』打ち切りの声も出ており、必然的に西住しほの耳にも入ってくる。従って、ストレスが溜まり、イライラし、ピリピリしているのと、西住しほとしては娘のみほは転校させたくはなかったが10連覇を逃した『ケジメ・人身御供』として娘のみほに詰腹を切らせないと『黒森峰』の学校法人の人間、特に『戦車道』に反対している人間に『示し』がつかないと判断し、その辺りは娘のまほ・みほも何となく分かる。といった所だろう。
⭕異常なまでに薄い父親の影、父親不在、フィクションだから仕方ないが、娘の転校、事実上の家からの放逐に対して、一切、父親が関与せず、父親の存在感が殆ど無い。⭕異常な光景である。
⭕妹の方が姉より優秀、但し、姉も別に無能ではなく、そこそこ優秀、中国、唐、李建成と李世民に近い。従って、母親しほの悩みは尽きない。⭕最良は、みほが島田家に『⭕養女』で入り、⭕島田家を乗っ取る事