1:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/12/30(月) 17:41:52.822 :6c+h8f/M0.net
【古典部/部室】
える「わたし、気になります!」
奉太郎「は?」
【古典部/部室】
える「わたし、気になります!」
奉太郎「は?」
3:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/12/30(月) 17:43:04.117 :6c+h8f/M0.net
える「折木さんはどう思いますか?」
奉太郎「どうと言われてもだな。まず話が要領を得ないのだが。黒いタイツがどうしたって?」
える「あ、すみません。言葉足らずでした。どうして学校で黒いタイツをはいたらいけないのか、疑問に思ったんです」
奉太郎「知らん」
える「ちょっと、折木さん。ちゃんと考えてください」
える「折木さんはどう思いますか?」
奉太郎「どうと言われてもだな。まず話が要領を得ないのだが。黒いタイツがどうしたって?」
える「あ、すみません。言葉足らずでした。どうして学校で黒いタイツをはいたらいけないのか、疑問に思ったんです」
奉太郎「知らん」
える「ちょっと、折木さん。ちゃんと考えてください」
4:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/12/30(月) 17:44:56.976 :6c+h8f/M0.net
奉太郎「どうでもいいが千反田。お前、黒いタイツをはきたいのか」
える「いえ、わたしは特段はきたいわけではないんです。ただ」
奉太郎「ただ?」
摩耶花「折木……」
奉太郎「どうでもいいが千反田。お前、黒いタイツをはきたいのか」
える「いえ、わたしは特段はきたいわけではないんです。ただ」
奉太郎「ただ?」
摩耶花「折木……」
5:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/12/30(月) 17:46:12.289 :6c+h8f/M0.net
える「あ、摩耶花さん」
摩耶花「ちーちゃん……大丈夫?」
える「大丈夫、というのは?」
摩耶花「折木に変なことされてなかった? 黒いタイツをはけとか何とか言われてたでしょ」
奉太郎「ちょっと待て伊原、語弊がある」
奉太郎「俺は千反田に黒いタイツをはけなどとは一言も言っていない。そもそも千反田が振ってきた話だ」
摩耶花「ふーん、どうだか」
える「本当ですよ。話を差し向けたのは私のほうなんです。ちょっと気になったことがありまして」
摩耶花「あ、そうなんだ。でもどうしてタイツのことなんて……何が気になったの?」
える「それはですね」
里志「もしかして、例の校則の話をしているのかな」
える「あ、摩耶花さん」
摩耶花「ちーちゃん……大丈夫?」
える「大丈夫、というのは?」
摩耶花「折木に変なことされてなかった? 黒いタイツをはけとか何とか言われてたでしょ」
奉太郎「ちょっと待て伊原、語弊がある」
奉太郎「俺は千反田に黒いタイツをはけなどとは一言も言っていない。そもそも千反田が振ってきた話だ」
摩耶花「ふーん、どうだか」
える「本当ですよ。話を差し向けたのは私のほうなんです。ちょっと気になったことがありまして」
摩耶花「あ、そうなんだ。でもどうしてタイツのことなんて……何が気になったの?」
える「それはですね」
里志「もしかして、例の校則の話をしているのかな」
6:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/12/30(月) 17:47:46.167 :6c+h8f/M0.net
奉太郎「里志」
摩耶花「ふくちゃん。例の校則って?」
える「校則……そうでした! タイツの件は校則に規定があったんです。忘れていました」
里志「さすが千反田さん。校則もしっかり把握しているんだね。校内の秩序の順守を責務とする風紀委員としては嬉しい限りさ」
える「いえ、そんな大したことでは。生徒手帳はよく開いて読んでいますから」
奉太郎(生徒手帳をよく開いて読むのか……何の苦行だ)
里志「これ、僕の生徒手帳。このページの項目を見てほしい」
奉太郎「里志」
摩耶花「ふくちゃん。例の校則って?」
える「校則……そうでした! タイツの件は校則に規定があったんです。忘れていました」
里志「さすが千反田さん。校則もしっかり把握しているんだね。校内の秩序の順守を責務とする風紀委員としては嬉しい限りさ」
える「いえ、そんな大したことでは。生徒手帳はよく開いて読んでいますから」
奉太郎(生徒手帳をよく開いて読むのか……何の苦行だ)
里志「これ、僕の生徒手帳。このページの項目を見てほしい」
7:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/12/30(月) 17:48:51.627 :6c+h8f/M0.net
『靴下は白色無地のソックスを着用する。
女子はソックスの下に、ベージュもしくはそれに準ずる色のストッキングを着用してもよい。
また、冬期(11月~3月)に限りベージュのタイツと濃紺のスラックスを防寒用に着用することを認める』
『靴下は白色無地のソックスを着用する。
女子はソックスの下に、ベージュもしくはそれに準ずる色のストッキングを着用してもよい。
また、冬期(11月~3月)に限りベージュのタイツと濃紺のスラックスを防寒用に着用することを認める』
8:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/12/30(月) 17:50:13.233 :6c+h8f/M0.net
奉太郎「こんな規定があったのか」
里志「あったんだよね、実は」
奉太郎(言われてみれば、千反田も伊原もいつも白靴下をはいているな。ちゃんと校則に従っていたというわけか)
奉太郎(黒い靴下やタイツが禁止されていたというのも初耳だ。確かに、校内では見かけないかもしれない)
奉太郎(いや、誰だったか黒系統をはいていた人間もいたような気がするんだが。気のせいか?)
里志「千反田さんが気になっているのはこの文言なんじゃないかな」
える「はい、それです。わたしのクラスでは、複数の女子がこの点について疑問を提起していたんです」
摩耶花「なるほど、これは確かに問題よね。もう冬だし寒いのに。私もちょっと気になってた」
奉太郎「こんな規定があったのか」
里志「あったんだよね、実は」
奉太郎(言われてみれば、千反田も伊原もいつも白靴下をはいているな。ちゃんと校則に従っていたというわけか)
奉太郎(黒い靴下やタイツが禁止されていたというのも初耳だ。確かに、校内では見かけないかもしれない)
奉太郎(いや、誰だったか黒系統をはいていた人間もいたような気がするんだが。気のせいか?)
里志「千反田さんが気になっているのはこの文言なんじゃないかな」
える「はい、それです。わたしのクラスでは、複数の女子がこの点について疑問を提起していたんです」
摩耶花「なるほど、これは確かに問題よね。もう冬だし寒いのに。私もちょっと気になってた」
9:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/12/30(月) 17:51:41.848 :6c+h8f/M0.net
奉太郎「何が問題なんだ? 防寒用にストッキングやタイツをはいても構わないんだろ。寒いならはけばいいだけの話じゃないか」
摩耶花「はくこと自体が問題じゃないのよ。問題はその『色』が指定されていること」
奉太郎「色?」
摩耶花「だって、ベージュ一色に限定されているのよ。ベージュって……何だかちょっとね」
奉太郎「ベージュで問題があるのか」
える「わたしのクラスメイトのひとりはこう言いました。ベージュのタイツはもも引きみたいで不格好なので嫌だ、と」
摩耶花「あー、その例え分かる。ベージュだとちょっとダサい感じがするのよね。おばあちゃんぽいっていうか」
える「摩耶花さんもそう思いますか? わたしは好きですけどね……もも引き」
摩耶花「あ。ごめん、ちーちゃん。もも引きを悪く言うつもりはなかったの」
奉太郎(ほう。女子の感覚だとそういうもんなのか。別にいいと思うけどな、もも引きでもなんでも着れれば)
奉太郎「何が問題なんだ? 防寒用にストッキングやタイツをはいても構わないんだろ。寒いならはけばいいだけの話じゃないか」
摩耶花「はくこと自体が問題じゃないのよ。問題はその『色』が指定されていること」
奉太郎「色?」
摩耶花「だって、ベージュ一色に限定されているのよ。ベージュって……何だかちょっとね」
奉太郎「ベージュで問題があるのか」
える「わたしのクラスメイトのひとりはこう言いました。ベージュのタイツはもも引きみたいで不格好なので嫌だ、と」
摩耶花「あー、その例え分かる。ベージュだとちょっとダサい感じがするのよね。おばあちゃんぽいっていうか」
える「摩耶花さんもそう思いますか? わたしは好きですけどね……もも引き」
摩耶花「あ。ごめん、ちーちゃん。もも引きを悪く言うつもりはなかったの」
奉太郎(ほう。女子の感覚だとそういうもんなのか。別にいいと思うけどな、もも引きでもなんでも着れれば)
11:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/12/30(月) 17:55:08.888 :6c+h8f/M0.net
奉太郎(というか、タイツとストッキングってそもそも何が違うんだ。厚さか、あるいは機能性か。分けて表記しているということはちゃんと区別があるのだろう)
奉太郎(おっと、いかんいかん。そんなことを気にしてどうなる。どうせはくことなんてないのに、わざわざ頭を働かせるだけ無駄というもの)
奉太郎(いらない好奇心だ。不要な思考時間を省く、省エネ省エネ。少々、千反田に毒されすぎているのではないか)
里志「で、千反田さんのクラスの女子の一部は、ベージュではなく黒いタイツをはきたいと口々に言っていた。そういうことかな」
える「そうなんです。ストッキングでは寒いし、ベージュのタイツでは見た目が不自然。だから黒いタイツがいい、と」
奉太郎(ストッキングでは寒い。ということはやはりタイツの方が厚くて防寒向きなのか)
奉太郎「じゃあなんで黒なんだ。タイツに関しては確かにベージュに限定されている」
奉太郎「だが、ストッキングに関しては『ベージュもしくはそれに準ずる色』ということで、制限付きだが、一応色の選択が可能じゃないか」
奉太郎「ファッションという意味では、別に黒にこだわる理由はないんじゃないかと思うが」
奉太郎(というか、タイツとストッキングってそもそも何が違うんだ。厚さか、あるいは機能性か。分けて表記しているということはちゃんと区別があるのだろう)
奉太郎(おっと、いかんいかん。そんなことを気にしてどうなる。どうせはくことなんてないのに、わざわざ頭を働かせるだけ無駄というもの)
奉太郎(いらない好奇心だ。不要な思考時間を省く、省エネ省エネ。少々、千反田に毒されすぎているのではないか)
里志「で、千反田さんのクラスの女子の一部は、ベージュではなく黒いタイツをはきたいと口々に言っていた。そういうことかな」
える「そうなんです。ストッキングでは寒いし、ベージュのタイツでは見た目が不自然。だから黒いタイツがいい、と」
奉太郎(ストッキングでは寒い。ということはやはりタイツの方が厚くて防寒向きなのか)
奉太郎「じゃあなんで黒なんだ。タイツに関しては確かにベージュに限定されている」
奉太郎「だが、ストッキングに関しては『ベージュもしくはそれに準ずる色』ということで、制限付きだが、一応色の選択が可能じゃないか」
奉太郎「ファッションという意味では、別に黒にこだわる理由はないんじゃないかと思うが」
13:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/12/30(月) 17:59:01.355 :6c+h8f/M0.net
摩耶花「別にファッションだけの問題じゃないでしょ。やっぱり防寒って意味では、ストッキングじゃなくてタイツになるし」
える「ベージュに準ずる色と言われると、具体的に何色なんでしょう?」
奉太郎「いや、具体的にと言われると。学校側の判断次第だろうな」
里志「神山市内じゃ真冬は氷点下になる日もあるし、雪だって積もる。寒さ対策は確かに重要だ」
摩耶花「ベージュ系でデニールが高いタイツってお店でも品数自体少ないのよね。置いているのはほとんどストッキングだし」
奉太郎(デニー……なんだって?)
える「デニールさんって誰ですか? わたし気に」
里志・奉太郎「「摩耶花(伊原)、続けて(くれ)」」ガバッ
える「あら」
摩耶花「ちーちゃん知らないんだ。あ、まあその話は後でね」
摩耶花「別にファッションだけの問題じゃないでしょ。やっぱり防寒って意味では、ストッキングじゃなくてタイツになるし」
える「ベージュに準ずる色と言われると、具体的に何色なんでしょう?」
奉太郎「いや、具体的にと言われると。学校側の判断次第だろうな」
里志「神山市内じゃ真冬は氷点下になる日もあるし、雪だって積もる。寒さ対策は確かに重要だ」
摩耶花「ベージュ系でデニールが高いタイツってお店でも品数自体少ないのよね。置いているのはほとんどストッキングだし」
奉太郎(デニー……なんだって?)
える「デニールさんって誰ですか? わたし気に」
里志・奉太郎「「摩耶花(伊原)、続けて(くれ)」」ガバッ
える「あら」
摩耶花「ちーちゃん知らないんだ。あ、まあその話は後でね」
15:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/12/30(月) 18:01:51.208 :6c+h8f/M0.net
摩耶花「とにかく、それに黒い色のほうが、ほら、太陽光を吸収しやすいから熱もこもるでしょ。体感的にも黒のほうが断然温かいし」
里志「なるほど。光の吸収効率の問題だね、小学校の理科で習った」
奉太郎(伊原の言い分は分からんでもない。だが)
奉太郎「だったらスラックスをはけばいいんじゃないか?」
える「スラックス」
摩耶花「ああ……」
奉太郎「校則にちゃんと規定がある。濃紺という限定はあるが、制服との取り合わせを考えればそこは致し方ないだろう」
奉太郎「スラックスならスカートのように足が露出しないから靴下やタイツの色も目立たない。風紀的な問題もクリアできる」
奉太郎「お前らだって、スカートに靴下だけで登校するのが辛いなら考えてみてもいいんじゃないか」
摩耶花「とにかく、それに黒い色のほうが、ほら、太陽光を吸収しやすいから熱もこもるでしょ。体感的にも黒のほうが断然温かいし」
里志「なるほど。光の吸収効率の問題だね、小学校の理科で習った」
奉太郎(伊原の言い分は分からんでもない。だが)
奉太郎「だったらスラックスをはけばいいんじゃないか?」
える「スラックス」
摩耶花「ああ……」
奉太郎「校則にちゃんと規定がある。濃紺という限定はあるが、制服との取り合わせを考えればそこは致し方ないだろう」
奉太郎「スラックスならスカートのように足が露出しないから靴下やタイツの色も目立たない。風紀的な問題もクリアできる」
奉太郎「お前らだって、スカートに靴下だけで登校するのが辛いなら考えてみてもいいんじゃないか」
16:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/12/30(月) 18:05:55.254 :6c+h8f/M0.net
える「なるほど、折木さんの指摘はごもっともです。ですが、スラックスは」
奉太郎「……何か至らない点でもあったか」
摩耶花「折木、あんた実際にスラックスをはいて登校してる女の子、見たことあんの?」
奉太郎「…………。ないな」
里志「僕もないね。風紀委員の仕事で、早朝に校門に立って登校中の生徒の服装チェックをすることもあるけど」
里志「あいにくスラックス女子にお目にかかったことは一度もない。いたら目立つだろうから覚えている自信はある」
摩耶花「でしょ。女子はたぶん男子以上に周りから浮いて目立つことを嫌うのよ」
摩耶花「自分だけひとりでスラックス登校しようなんて、普通思わないし、絶対からかわれるわ」
奉太郎「そういうものか」
摩耶花「そういうものよ。ま、折木にはそういうことは分らないだろうけど」
奉太郎(妙に引っかかる言い方だな。そうそう分かるはずがないだろ、俺は女子じゃないんだから)
える「なるほど、折木さんの指摘はごもっともです。ですが、スラックスは」
奉太郎「……何か至らない点でもあったか」
摩耶花「折木、あんた実際にスラックスをはいて登校してる女の子、見たことあんの?」
奉太郎「…………。ないな」
里志「僕もないね。風紀委員の仕事で、早朝に校門に立って登校中の生徒の服装チェックをすることもあるけど」
里志「あいにくスラックス女子にお目にかかったことは一度もない。いたら目立つだろうから覚えている自信はある」
摩耶花「でしょ。女子はたぶん男子以上に周りから浮いて目立つことを嫌うのよ」
摩耶花「自分だけひとりでスラックス登校しようなんて、普通思わないし、絶対からかわれるわ」
奉太郎「そういうものか」
摩耶花「そういうものよ。ま、折木にはそういうことは分らないだろうけど」
奉太郎(妙に引っかかる言い方だな。そうそう分かるはずがないだろ、俺は女子じゃないんだから)
18:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/12/30(月) 18:08:52.391 :6c+h8f/M0.net
摩耶花「そもそも私、女子がスラックスをはいて登校していいなんて今まで知らなかった。ふくちゃんやちーちゃんみたいに生徒手帳を熱心に読んでなかったし」
奉太郎「ああ、俺も知らなかったぞ」
摩耶花「折木が女子の服装規定なんて知ってたら気持ち悪いわよ」
奉太郎「さいで」
里志「千反田さんは以前からスラックス着用もできることは知っていたんだよね。冬期の防寒用としてスラックスを考えたことはなかったの」
える「あることはありました。ですが、以前に近隣の制服取扱店で伺ったところ、k神山高校指定のスラックスは置いていないとのことでした」
摩耶花「そうなの?」
里志「へぇ」
える「おそらく、実際に神山高校の生徒さんでスラックスの購入を希望するひとはほぼいない、ということだと思います」
摩耶花「そもそも私、女子がスラックスをはいて登校していいなんて今まで知らなかった。ふくちゃんやちーちゃんみたいに生徒手帳を熱心に読んでなかったし」
奉太郎「ああ、俺も知らなかったぞ」
摩耶花「折木が女子の服装規定なんて知ってたら気持ち悪いわよ」
奉太郎「さいで」
里志「千反田さんは以前からスラックス着用もできることは知っていたんだよね。冬期の防寒用としてスラックスを考えたことはなかったの」
える「あることはありました。ですが、以前に近隣の制服取扱店で伺ったところ、k神山高校指定のスラックスは置いていないとのことでした」
摩耶花「そうなの?」
里志「へぇ」
える「おそらく、実際に神山高校の生徒さんでスラックスの購入を希望するひとはほぼいない、ということだと思います」
19:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/12/30(月) 18:10:52.794 :6c+h8f/M0.net
える「それに、スラックス1着といっても、相場として1万円くらいはするそうです」
える「防寒用に冬場はスラックスを利用するとしても、暑い夏場はやはりスカートのほうが過ごすのに快適だと思いますし」
える「摩耶花さんの言うように、周りに合わせるという意味でも、あえてスカートの購入を控える人はほぼいないでしょう」
奉太郎「つまり、わざわざスラックスを用意するのはタイツに比べて経済的な負担が大きい。ということか」
える「はい、そういうことです」
摩耶花「高校生にとって1万円は大きいわね」
里志「まあ、確かにね。ストッキングやタイツなら、安ければ千円程度でも手頃な物を用意できるだろうし」
摩耶花「となると」
える「どうすればいいんでしょう?」
える「それに、スラックス1着といっても、相場として1万円くらいはするそうです」
える「防寒用に冬場はスラックスを利用するとしても、暑い夏場はやはりスカートのほうが過ごすのに快適だと思いますし」
える「摩耶花さんの言うように、周りに合わせるという意味でも、あえてスカートの購入を控える人はほぼいないでしょう」
奉太郎「つまり、わざわざスラックスを用意するのはタイツに比べて経済的な負担が大きい。ということか」
える「はい、そういうことです」
摩耶花「高校生にとって1万円は大きいわね」
里志「まあ、確かにね。ストッキングやタイツなら、安ければ千円程度でも手頃な物を用意できるだろうし」
摩耶花「となると」
える「どうすればいいんでしょう?」
21:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/12/30(月) 18:12:19.310 :6c+h8f/M0.net
奉太郎「どうするもこうするも、結論は変わらないだろう。学校で黒いタイツはどうやってもはけないさ」
奉太郎「校則なんだから仕方ない。ルールならば守らなければならない。そういうことだ」
える「ルールなら、守らなければならない……」
奉太郎「そうだろう、里志」
里志「まあ、風紀委員の立場に鑑みれば僕も奉太郎と同じ結論を出さざるを得ないね」
摩耶花「身も蓋もないわねぇ」
里志「校則は言わば学校の憲法だ。憲法は簡単には変えられない、それは仕方のないことさ」
える「憲法は簡単には……。ですが」
奉太郎「…………。もう日も暮れるな。今夜は冷えるらしいし、早く帰ろう」ガタッ
える「あ、折木さんっ」
奉太郎「どうするもこうするも、結論は変わらないだろう。学校で黒いタイツはどうやってもはけないさ」
奉太郎「校則なんだから仕方ない。ルールならば守らなければならない。そういうことだ」
える「ルールなら、守らなければならない……」
奉太郎「そうだろう、里志」
里志「まあ、風紀委員の立場に鑑みれば僕も奉太郎と同じ結論を出さざるを得ないね」
摩耶花「身も蓋もないわねぇ」
里志「校則は言わば学校の憲法だ。憲法は簡単には変えられない、それは仕方のないことさ」
える「憲法は簡単には……。ですが」
奉太郎「…………。もう日も暮れるな。今夜は冷えるらしいし、早く帰ろう」ガタッ
える「あ、折木さんっ」
22:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/12/30(月) 18:14:33.787 :6c+h8f/M0.net
【廊下】
える「職員室に鍵を返してきますので、皆さんお先に」
摩耶花「あ、私職員室に用事あるから一緒に行こ。ふくちゃん、先に帰らないでねっ」
里志「わかってるよ。やれやれ」
奉太郎「やれやれ、か。それはこっちのセリフだ」
里志「おや、どういう意味だい?」
奉太郎「しらばっくれるな。校則は学校の憲法だと? そういう例えを出すなよ、千反田が食いつきかけただろうが」
里志「食いついても面白かったじゃないか。日本の硬性憲法でも改正のための手続きはちゃんとある」
里志「だったら、校則を改正する手続きもひょっとしたらあるんじゃないか」
【廊下】
える「職員室に鍵を返してきますので、皆さんお先に」
摩耶花「あ、私職員室に用事あるから一緒に行こ。ふくちゃん、先に帰らないでねっ」
里志「わかってるよ。やれやれ」
奉太郎「やれやれ、か。それはこっちのセリフだ」
里志「おや、どういう意味だい?」
奉太郎「しらばっくれるな。校則は学校の憲法だと? そういう例えを出すなよ、千反田が食いつきかけただろうが」
里志「食いついても面白かったじゃないか。日本の硬性憲法でも改正のための手続きはちゃんとある」
里志「だったら、校則を改正する手続きもひょっとしたらあるんじゃないか」
23:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/12/30(月) 18:16:07.668 :6c+h8f/M0.net
里志「そもそも、創立百年を超える神山高校の校則は、いつ、どのような形で整備されていったのか」
里志「ベージュ以外のタイツを禁止したのは誰なのか。歴代の校長、あるいは教職員や、保護者の意向を交えて決められたものなのか」
里志「そもそもなぜベージュはよくて黒はダメなのか。これは結構、主観的な問題に属するといっても過言ではない。一度、現校長の意見を訊いてみたいくらいだ」
里志「考え出すとキリがないね。これはなかなか面白いネタだ」
里志「壁新聞部にでも情報提供したら、公正な取材の下、案外いい記事を書いてくれるんじゃないかな」
奉太郎「やめとけよ、面倒くさい。千反田がまた興味を示したら厄介だからな」
里志「これはまだ表沙汰になっていないんだけど、実は校則の改正を目指して秘密裏に動きが出始めているんだよ」
奉太郎「動きだって?」
里志「そもそも、創立百年を超える神山高校の校則は、いつ、どのような形で整備されていったのか」
里志「ベージュ以外のタイツを禁止したのは誰なのか。歴代の校長、あるいは教職員や、保護者の意向を交えて決められたものなのか」
里志「そもそもなぜベージュはよくて黒はダメなのか。これは結構、主観的な問題に属するといっても過言ではない。一度、現校長の意見を訊いてみたいくらいだ」
里志「考え出すとキリがないね。これはなかなか面白いネタだ」
里志「壁新聞部にでも情報提供したら、公正な取材の下、案外いい記事を書いてくれるんじゃないかな」
奉太郎「やめとけよ、面倒くさい。千反田がまた興味を示したら厄介だからな」
里志「これはまだ表沙汰になっていないんだけど、実は校則の改正を目指して秘密裏に動きが出始めているんだよ」
奉太郎「動きだって?」
26:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/12/30(月) 18:18:09.389 :6c+h8f/M0.net
里志「生徒会の女子が有志で集まって、黒いタイツの着用を学校側に認めさせようという活動が水面下で始まっているんだ」
奉太郎「本当なのか……」
里志「有力筋からの情報だから信憑性は高い。まずは全校の女子生徒にアンケート調査して、黒タイツの需要とベージュタイツに対する否定的な意見を集約するらしいね」
奉太郎「ご苦労なことだ……。省エネをモットーとする俺からすれば、その話を聞いただけで眩暈がする」
里志「だろうね、奉太郎なら」
奉太郎「高校生活なんて言ってしまえばたったの3年だ。そのうち、冬のごく寒い時期に限ればせいぜい数か月」
奉太郎「たったそれだけの期間の過ごし方のことで、長年不変だった校則を変えてまで自分たちの主張を押し通そうとする」
奉太郎「その情熱といっていいのか、やる気の根源はいったい何なんだ。俺にはどうしても理解できん」
里志「確かに、それはそうだ。けれども奉太郎、彼女たちは本当に全校の女子、および未来の神高女生徒のためだけに義憤にかられていると思うかい」
奉太郎「何が言いたい?」
里志「生徒会の女子が有志で集まって、黒いタイツの着用を学校側に認めさせようという活動が水面下で始まっているんだ」
奉太郎「本当なのか……」
里志「有力筋からの情報だから信憑性は高い。まずは全校の女子生徒にアンケート調査して、黒タイツの需要とベージュタイツに対する否定的な意見を集約するらしいね」
奉太郎「ご苦労なことだ……。省エネをモットーとする俺からすれば、その話を聞いただけで眩暈がする」
里志「だろうね、奉太郎なら」
奉太郎「高校生活なんて言ってしまえばたったの3年だ。そのうち、冬のごく寒い時期に限ればせいぜい数か月」
奉太郎「たったそれだけの期間の過ごし方のことで、長年不変だった校則を変えてまで自分たちの主張を押し通そうとする」
奉太郎「その情熱といっていいのか、やる気の根源はいったい何なんだ。俺にはどうしても理解できん」
里志「確かに、それはそうだ。けれども奉太郎、彼女たちは本当に全校の女子、および未来の神高女生徒のためだけに義憤にかられていると思うかい」
奉太郎「何が言いたい?」
27:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/12/30(月) 18:20:39.949 :6c+h8f/M0.net
里志「そもそも、生徒会に入る生徒というのは皆が皆、全校生徒のために身を粉にして雑務をこなそうというボランティア精神を持ち合わせているわけじゃない」
里志「勉学や趣味的な部活動に割く時間は当然削られる。ならば一定のメリットがあるからこそ、生徒会に入っている人間の方が大多数なんじゃないか」
奉太郎「まあ、そうかもな」
里志「さっき、校則の改正手続きについて言及したけど。僕が調べた限りでは、神高には校則の改正に関する手続きの規定は存在しない」
奉太郎「ということは、そもそもうちの校則は改正なんて想定されていなかった。ということか」
里志「その通りさ。だから、学校側にしてみれば、彼女たちが『黒タイツ解禁』を求めて校則改正を要求したところで」
里志「そもそも改正に関する手続き規定がないから、要求には応じられないと門前払いも可能なんだ」
里志「体制側はえてして保守的だからね。伝統校なら尚更だろう」
里志「そもそも、生徒会に入る生徒というのは皆が皆、全校生徒のために身を粉にして雑務をこなそうというボランティア精神を持ち合わせているわけじゃない」
里志「勉学や趣味的な部活動に割く時間は当然削られる。ならば一定のメリットがあるからこそ、生徒会に入っている人間の方が大多数なんじゃないか」
奉太郎「まあ、そうかもな」
里志「さっき、校則の改正手続きについて言及したけど。僕が調べた限りでは、神高には校則の改正に関する手続きの規定は存在しない」
奉太郎「ということは、そもそもうちの校則は改正なんて想定されていなかった。ということか」
里志「その通りさ。だから、学校側にしてみれば、彼女たちが『黒タイツ解禁』を求めて校則改正を要求したところで」
里志「そもそも改正に関する手続き規定がないから、要求には応じられないと門前払いも可能なんだ」
里志「体制側はえてして保守的だからね。伝統校なら尚更だろう」
29:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/12/30(月) 18:22:39.305 :6c+h8f/M0.net
里志「だから、校則改正運動は旗揚げした時点から前途多難。彼女たちの腹積もりは想像の域を出ないけれど」
里志「よっぽど上手くことを運ばない限り、頓挫する可能性が高い」
里志「それこそ全校生徒の支持を得て、筋道を立てた理論に従って粘り強く交渉を続けたうえで」
里志「教職員やOB、保護者や地域住民を巻き込んだ運動に広げて、学校側に要求をのまざるを得ない状況を作り出さない限り、ね」
奉太郎「なるほどな。言い出しっぺの女子達は、防寒やファッション性といった観点から、校則の不条理を糾弾して皆のために体制側と戦いたいだけではない」
奉太郎「過去から現在に至るまで一度もなし得なかった校則改正を達成することで、大いに充足感を得られる上に」
奉太郎「将来にわたって英雄視されるだろうな。あくまで神山高校の歴史を変えた、という狭い世界での話だが」
奉太郎「ついでに、生徒会の一員として大事業をなしえたという意味で内申に何らかのプラス作用があるのかもしれない。そういうことはお前のほうが詳しいだろう」
里志「だから、校則改正運動は旗揚げした時点から前途多難。彼女たちの腹積もりは想像の域を出ないけれど」
里志「よっぽど上手くことを運ばない限り、頓挫する可能性が高い」
里志「それこそ全校生徒の支持を得て、筋道を立てた理論に従って粘り強く交渉を続けたうえで」
里志「教職員やOB、保護者や地域住民を巻き込んだ運動に広げて、学校側に要求をのまざるを得ない状況を作り出さない限り、ね」
奉太郎「なるほどな。言い出しっぺの女子達は、防寒やファッション性といった観点から、校則の不条理を糾弾して皆のために体制側と戦いたいだけではない」
奉太郎「過去から現在に至るまで一度もなし得なかった校則改正を達成することで、大いに充足感を得られる上に」
奉太郎「将来にわたって英雄視されるだろうな。あくまで神山高校の歴史を変えた、という狭い世界での話だが」
奉太郎「ついでに、生徒会の一員として大事業をなしえたという意味で内申に何らかのプラス作用があるのかもしれない。そういうことはお前のほうが詳しいだろう」
31:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/12/30(月) 18:24:33.214 :6c+h8f/M0.net
里志「まあ、内申書への影響までは定かじゃないけどね。内申は教師側の匙加減だ」
里志「でも少なくとも、学生の自主性を重んじる大学の推薦を狙っている生徒にとってはもってこいの売りネタになる」
里志「ひょっとしたら、大学入試を飛び越えて就職活動でもちょっとした話のタネにできるかな」
里志「伝統校の不動の不条理校則を改正に導いた生徒なんて、世の中広しといえどもそう多くはないはずだ」
奉太郎「はぁー。そういう思惑を想像したうえでもこれだけはいえるぞ。ご苦労なこった」
里志「はは、だろうね。陰謀論はこれくらいにして、卑近な話をしようじゃないか」
奉太郎「卑近な話?」
里志「まあ、内申書への影響までは定かじゃないけどね。内申は教師側の匙加減だ」
里志「でも少なくとも、学生の自主性を重んじる大学の推薦を狙っている生徒にとってはもってこいの売りネタになる」
里志「ひょっとしたら、大学入試を飛び越えて就職活動でもちょっとした話のタネにできるかな」
里志「伝統校の不動の不条理校則を改正に導いた生徒なんて、世の中広しといえどもそう多くはないはずだ」
奉太郎「はぁー。そういう思惑を想像したうえでもこれだけはいえるぞ。ご苦労なこった」
里志「はは、だろうね。陰謀論はこれくらいにして、卑近な話をしようじゃないか」
奉太郎「卑近な話?」
32:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/12/30(月) 18:26:08.369 :6c+h8f/M0.net
里志「ああ。というか、これが一番聞きたかったんだけど。奉太郎はどうなんだい?」
奉太郎「どうって、何が」
里志「もちろん、黒タイツのことさ」
奉太郎「俺は黒タイツなどはかないから関係ないだろ」
里志「そうじゃなくて。たとえば、普段は清楚で純白のソックスをはいてくる千反田さんが」
里志「ある日突然大人っぽい色気のある黒タイツをはいてきたら、奉太郎はどう思う?」
奉太郎「…………」
里志「ああ。というか、これが一番聞きたかったんだけど。奉太郎はどうなんだい?」
奉太郎「どうって、何が」
里志「もちろん、黒タイツのことさ」
奉太郎「俺は黒タイツなどはかないから関係ないだろ」
里志「そうじゃなくて。たとえば、普段は清楚で純白のソックスをはいてくる千反田さんが」
里志「ある日突然大人っぽい色気のある黒タイツをはいてきたら、奉太郎はどう思う?」
奉太郎「…………」
33:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/12/30(月) 18:28:09.876 :6c+h8f/M0.net
奉太郎「まあ、ちょっと普段とは違った印象を受けるかもしれないな」
奉太郎「あるいは何か本人の気持ちに変化があったと察する余地もあるか」
里志「はははっ、まあそうだろうね。奉太郎らしい答えだ」
奉太郎「何がおかしい」
里志「もし摩耶花が黒タイツをはいて学校にきたら、僕はもう勉学にはおよそ集中できないだろう」
奉太郎「は?」
奉太郎「まあ、ちょっと普段とは違った印象を受けるかもしれないな」
奉太郎「あるいは何か本人の気持ちに変化があったと察する余地もあるか」
里志「はははっ、まあそうだろうね。奉太郎らしい答えだ」
奉太郎「何がおかしい」
里志「もし摩耶花が黒タイツをはいて学校にきたら、僕はもう勉学にはおよそ集中できないだろう」
奉太郎「は?」
34:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/12/30(月) 18:29:34.376 :6c+h8f/M0.net
里志「短い靴下をはいて、脚の大部分を露出しているいつものスタイルも悪くはない。摩耶花はスカート丈も短いしね」
里志「むき出しだからこその生々しさがあって、動物的な本能で惹かれるといった感じかな」
里志「けれど、タイツで引き締まった脚線美もなかなかのものだ」
里志「生の脚が隠されているからこそ、隠れているものを見たいという欲求が引き出されて悶々としてしまう」
里志「視覚的にも、黒タイツが醸し出すアダルティックな雰囲気と、あどけない童顔とのコントラストといったら堪らないね」
里志「そんな摩耶花を前にしたら自分の理性を押さえられる自信がないんだ!」
奉太郎「里志……」
里志「……ごめん、半分くらいは冗談さ」
奉太郎(半分は本気なのか)
里志「短い靴下をはいて、脚の大部分を露出しているいつものスタイルも悪くはない。摩耶花はスカート丈も短いしね」
里志「むき出しだからこその生々しさがあって、動物的な本能で惹かれるといった感じかな」
里志「けれど、タイツで引き締まった脚線美もなかなかのものだ」
里志「生の脚が隠されているからこそ、隠れているものを見たいという欲求が引き出されて悶々としてしまう」
里志「視覚的にも、黒タイツが醸し出すアダルティックな雰囲気と、あどけない童顔とのコントラストといったら堪らないね」
里志「そんな摩耶花を前にしたら自分の理性を押さえられる自信がないんだ!」
奉太郎「里志……」
里志「……ごめん、半分くらいは冗談さ」
奉太郎(半分は本気なのか)
35:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/12/30(月) 18:30:39.032 :6c+h8f/M0.net
里志「まあ、とにかく。この校則を作った人は、当時はちゃんと真っ当な理由があってベージュに限定したんだろうね」
里志「でも、時代は刻々と変わっていく」
里志「昔作った法律が時代にそぐわなくなるように、校則もその時々で柔軟に変更すべきところは変更したほうがいいかもしれない」
奉太郎「まあ、そうかもな。変えたいやつは勝手に変えようと頑張ればいい。だが俺はその役は御免だ」
える「折木さん、福部さん。ふたりとも、お待たせしました」
奉太郎「ああ。別にそんなに待ってないぞ。立ち話してたしな」
摩耶花「別に折木は残ってなくてもよかったんだけど。……ふたりで何の話してたの?」
里志「まあ、とにかく。この校則を作った人は、当時はちゃんと真っ当な理由があってベージュに限定したんだろうね」
里志「でも、時代は刻々と変わっていく」
里志「昔作った法律が時代にそぐわなくなるように、校則もその時々で柔軟に変更すべきところは変更したほうがいいかもしれない」
奉太郎「まあ、そうかもな。変えたいやつは勝手に変えようと頑張ればいい。だが俺はその役は御免だ」
える「折木さん、福部さん。ふたりとも、お待たせしました」
奉太郎「ああ。別にそんなに待ってないぞ。立ち話してたしな」
摩耶花「別に折木は残ってなくてもよかったんだけど。……ふたりで何の話してたの?」
36:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/12/30(月) 18:31:47.894 :6c+h8f/M0.net
里志「まあ、男同士の内緒話かな。ね、奉太郎」
奉太郎「さあな」
摩耶花「えー、ちょっと何? 気になるんだけど」
える「もしかして、黒いタイツの話ですか?」
奉太郎「! ……何でそう思ったんだ」
える「摩耶花さんとちょっとだけお話ししてたんです。折木さんと福部さんなら、どちらが黒いタイツがお似合いかと」
奉太郎「はぁ?」
里志「まあ、男同士の内緒話かな。ね、奉太郎」
奉太郎「さあな」
摩耶花「えー、ちょっと何? 気になるんだけど」
える「もしかして、黒いタイツの話ですか?」
奉太郎「! ……何でそう思ったんだ」
える「摩耶花さんとちょっとだけお話ししてたんです。折木さんと福部さんなら、どちらが黒いタイツがお似合いかと」
奉太郎「はぁ?」
37:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/12/30(月) 18:32:41.958 :6c+h8f/M0.net
摩耶花「ちょ、ちーちゃん、それ言っちゃダメっ」
里志「そりゃ、奉太郎だろうね。むしろ奉太郎はセーラー服にスカートをはいて登校しても違和感がないかもしれない」
える「折木さん、可愛いところがありますしね」
奉太郎「里志、殴るぞ」
里志「おお、こわいこわい」
える「折木さん、顔が本当に怖いです」
摩耶花「折木がセーラー服にスカートで、ぷっあははっ」
える「ふふふ」
摩耶花「ちょ、ちーちゃん、それ言っちゃダメっ」
里志「そりゃ、奉太郎だろうね。むしろ奉太郎はセーラー服にスカートをはいて登校しても違和感がないかもしれない」
える「折木さん、可愛いところがありますしね」
奉太郎「里志、殴るぞ」
里志「おお、こわいこわい」
える「折木さん、顔が本当に怖いです」
摩耶花「折木がセーラー服にスカートで、ぷっあははっ」
える「ふふふ」
38:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/12/30(月) 18:33:40.318 :6c+h8f/M0.net
こんな感じで、今日も青春の一ページが静かに塗りつぶされてゆく
その青春は灰色か薔薇色か、あるいは淡いベージュか漆黒の黒か
青春の色は、すべてが過ぎ去って古い記憶に刻まれて初めて分かるもの――なのかもしれない
(おしまい)
こんな感じで、今日も青春の一ページが静かに塗りつぶされてゆく
その青春は灰色か薔薇色か、あるいは淡いベージュか漆黒の黒か
青春の色は、すべてが過ぎ去って古い記憶に刻まれて初めて分かるもの――なのかもしれない
(おしまい)
41:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/12/30(月) 18:35:59.764 :6c+h8f/M0.net
実際にこういう趣旨の校則をめぐって、岐阜高山の斐太高校(古典部シリーズの神山高校のモデル)
の生徒側と学校側とのやり取りが話題になったので、それを題材にしてみた
アニメ本編だと女帝が黒ソックス、十文字さんが黒ストはいてたから設定的に厳密には矛盾するけど
読んでくれた方、ありがとうございました。それでは失礼します
実際にこういう趣旨の校則をめぐって、岐阜高山の斐太高校(古典部シリーズの神山高校のモデル)
の生徒側と学校側とのやり取りが話題になったので、それを題材にしてみた
アニメ本編だと女帝が黒ソックス、十文字さんが黒ストはいてたから設定的に厳密には矛盾するけど
読んでくれた方、ありがとうございました。それでは失礼します
43:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/12/30(月) 18:48:45.036 :r8/4Hjspp.net
面白かった
44:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/12/30(月) 18:58:50.726 :SqZ1l3Rl0.net
地方によっては降雪することもあるこの季節、
早朝仕事へ向かう最中に、黒タイツを穿いた女学生たちを多く見かけるようになった。
自転車に乗って、ペダルを漕ぐたびに黒タイツ越しの太ももを見せつける女学生。
バスに乗り遅れまいと、スカートを浮き上がらせながらたどたどしい足取りでバタバタと走る女学生。
これが通学区分された歩道に面するともなれば、目に映る女学生すべてが黒タイツという、
酒池肉林すら足下に及ばない、まさに桃源郷とでも形容すべき光景が広がっていることもままある。
指折り数えることなどもはや不可能なくらいの黒タイツは、いったいどこから来て、どこへ向かうのだろうか。
時折、そのような途方のない思考を巡らせることがある。
私が出勤中に見られる以上の黒タイツが、まだまだ日本中の学校に収まっているのかと思うと、
宇宙の深淵、あるいは深海の全容をこの目にしようとしているような、畏怖にも似た感情を覚えずにはいられない。
女学生たちが穿いている黒タイツは、学舎での学業が終わり、家に帰り着けば、脱ぎ捨てられてゴミ箱の中へ収められる。
黒タイツが収められるのがゴミ箱。これには少し違和感を覚えずにはいられない。
ゴミ箱は、女学生の黒タイツが入れられた瞬間、まさしく世の男の夢が詰まった、神聖なる箱となるのだ。
であるとすれば、それは「ゴミの箱」ではなく、「夢の箱」なのではないだろうか。
その論に行き着いた瞬間、私の頭の中で電撃にも似た衝撃が走った。
東京都江東区にある有名なゴミ集積所があるのは、たしか「夢の島」ではなかっただろうか。
私の頭の中で、すべてのピースが繋がりあっていくのを感じた。
男たちの夢、黒タイツ、ゴミ箱ではなく夢の箱、それらの集積地点が、夢の島……。
もはや単なる符合ではない……! そうこれは、天啓の域に達している!
私はこうしてはいられないとワーゲンのステアリングを軽やかに回し、空港へと向かう道路に進入した。
この先に、私の夢見る彼の地、夢の島がある。
朝日が眩しく、私を照らしている。私の未来は、この美しい地球のように、まばゆく光り輝いている。
早朝仕事へ向かう最中に、黒タイツを穿いた女学生たちを多く見かけるようになった。
自転車に乗って、ペダルを漕ぐたびに黒タイツ越しの太ももを見せつける女学生。
バスに乗り遅れまいと、スカートを浮き上がらせながらたどたどしい足取りでバタバタと走る女学生。
これが通学区分された歩道に面するともなれば、目に映る女学生すべてが黒タイツという、
酒池肉林すら足下に及ばない、まさに桃源郷とでも形容すべき光景が広がっていることもままある。
指折り数えることなどもはや不可能なくらいの黒タイツは、いったいどこから来て、どこへ向かうのだろうか。
時折、そのような途方のない思考を巡らせることがある。
私が出勤中に見られる以上の黒タイツが、まだまだ日本中の学校に収まっているのかと思うと、
宇宙の深淵、あるいは深海の全容をこの目にしようとしているような、畏怖にも似た感情を覚えずにはいられない。
女学生たちが穿いている黒タイツは、学舎での学業が終わり、家に帰り着けば、脱ぎ捨てられてゴミ箱の中へ収められる。
黒タイツが収められるのがゴミ箱。これには少し違和感を覚えずにはいられない。
ゴミ箱は、女学生の黒タイツが入れられた瞬間、まさしく世の男の夢が詰まった、神聖なる箱となるのだ。
であるとすれば、それは「ゴミの箱」ではなく、「夢の箱」なのではないだろうか。
その論に行き着いた瞬間、私の頭の中で電撃にも似た衝撃が走った。
東京都江東区にある有名なゴミ集積所があるのは、たしか「夢の島」ではなかっただろうか。
私の頭の中で、すべてのピースが繋がりあっていくのを感じた。
男たちの夢、黒タイツ、ゴミ箱ではなく夢の箱、それらの集積地点が、夢の島……。
もはや単なる符合ではない……! そうこれは、天啓の域に達している!
私はこうしてはいられないとワーゲンのステアリングを軽やかに回し、空港へと向かう道路に進入した。
この先に、私の夢見る彼の地、夢の島がある。
朝日が眩しく、私を照らしている。私の未来は、この美しい地球のように、まばゆく光り輝いている。
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