マルコ「詰みだよい」ﾊﾟﾁｯ

友蔵「う～む、負けた！　強くなったのう、マルコ」

マルコ「今日は調子がいいよい。もう一局指そう」

すみれ「マルコ、おじいちゃん、ご飯よ～！」

マルコ「ご飯はまだいいよい」

友蔵「そうなんじゃよ、お母さん。これからもう一局……」

すみれ「ご飯よ……！」ｷﾞﾛｯ

友蔵「は、はいっ！」

マルコ「すまねェ……オフクロ……！」

マルコ「食べ終わったからもう一局だよい」

友蔵「望むところじゃ！」

さきこ「あんたたち、なにしてんの？」

マルコ「将棋だよい。お姉ちゃんも指すかい？」

さきこ「あたしはいいよ。宿題しなきゃならないし」

マルコ「つれねェ姉だよい」

すみれ「マルコ、起きなさいマルコ！」

マルコ「ハッ！」ｶﾞﾊﾞｯ

マルコ「しまったよい！　おじいちゃんと遅くまで将棋を指してたから……」

すみれ「早く支度しなさい！」

マルコ「急がなきゃ遅刻だよい！」ﾄﾞﾀﾊﾞﾀ

友蔵「すまん、マルコ……！」

友蔵（『孫寝坊　すまんマルコや　ワシ詫びる』　友蔵心の俳句）

マルコ「行ってきまーす！」

マルコ「ふぅ、間に合ったよい」

たまえ「おはよう、マルちゃん！」

マルコ「おはよう、たまちゃん」

たまえ「今日はギリギリだったけど、何かあったの？」

マルコ「昨日の夜、おじいちゃんとずっと戦ってたんだよい」

たまえ「ええっ！？」

キートン山田「マルコよ、あまりにも説明不足だ」

ｷｰﾝｺｰﾝｶｰﾝｺｰﾝ…

ブー太郎「やっと授業終わったブー」

はまじ「帰ったら遊ぼうぜー」

先生「今日は皆さんに宿題を出したいと思います」

ｻﾞﾜｯ…

先生「せっかくのいい天気ですので、鳥を観察してノートにその様子を書いてきて下さい」

ｻﾞﾜｻﾞﾜ…

永沢「君は鳥なんか観察せずデタラメをノートに書くんだろうね」

藤木「そ、そんなことしないよぉ！」

はまじ「ちぇっ、宿題なんてめんどくさいぜ！」

ブー太郎「ホントだブー！」

丸尾「しかし、文句をいってはいけないでしょう！　宿題はちゃんとやるべきです！」

花輪「それに先生のいうとおり、バードウォッチングにはちょうどいい天気だしね」

たまえ「じゃあ、私たちで鳥観察をしようよ！」

マルコ「学校から帰ったら公園に集まるよい」

放課後、集まる六人。

ブー太郎「この辺で見れる鳥ってなにがあるブー？」

花輪「スズメ、カラス、あとはハトってところだね」

はまじ「うーん、普通すぎてつまんねーな」

花輪「変わった鳥が見たければ、もっと自然があるところに行った方がいいだろうね」

はまじ「自然か……」

マルコ「だったら神社に行くのがいいんじゃないかよい」

マルコ「神社に行って、餌を置いておけばきっと鳥が寄ってくるよい」

花輪「なるほど、さすがさくら君。それはいい考えだね」

たまえ「ナイスだよ、マルちゃん！」

丸尾「しかし、神社を汚さないように気をつけねばならないでしょう」

マルコ「もちろん、餌を片付ける準備もするべきだな」

はまじ「よーし、さっそく神社に出発だ！」

ブー太郎「行くブー！」

神社に到着した一行。

マルコ「じゃあ、ここに青いシートを敷いて……」ﾊﾞｻｯ

たまえ「餌を撒いておこう！」

ﾊﾞﾗﾊﾞﾗ…

マルコ「これでいいよい」

花輪「あとは物陰に隠れて、鳥達を待つだけだね、ベイビー」

丸尾「ずばり楽しみでしょう！」

マルコ「……」

たまえ「……」

花輪「……」

丸尾「……」

はまじ「……全然来ねえな」

ブー太郎「来ないブー！」

マルコ「いきなり現れるわけねェよい。もうちょい根気良く待つんだ」

マルコ「将棋もバードウォッチングも冷静になることが大事だよい」

ブー太郎「分かったブー……」

キートン山田「さすが将棋で遅刻しかけた男、説得力が違う」

たまえ「あ！」

ﾊﾞｻﾊﾞｻ…

はまじ「鳥だ！」

ブー太郎「いっぱい飛んできたブー！」

花輪「シッ、静かに」

マルコ「シジュウカラ、メジロ、ハクセキレイもいるよい」

たまえ「これならたっぷり観察できるね！」

山田「アハハ～、みんな何してるんだじょ～？」

はまじ「山田！」

ブー太郎「お前何しにきたブー？」

山田「鳥さんを探してるんだじょ～」

山田「あ、いたじょ～！　わぁ～い！」ﾀﾀﾀｯ

はまじ「あっ、バカ！」

ﾊﾞｻﾊﾞｻﾊﾞｻｯ…

せっかく集まった鳥は全て逃げてしまった。

花輪「……鳥は警戒心が強いから、もう来ないかもしれないね」

はまじ「山田、お前何やってんだよ！」

ブー太郎「ホントだブー！　責任取れブー！」

山田「ごめん……」

丸尾「あまり山田君を責めるのもよくないでしょう！　しかし、どうしたものでしょうか……」

マルコ「心配無用だよい」

たまえ「え？」

マルコ「俺がみんなに珍しい鳥を見せてやるよい」

はまじ「さくらの奴、どっか行っちまったけど……」

ブー太郎「俺たちを放っておいて帰っちまったんじゃないかブー？」

たまえ「……」

たまえ「……あ、あれ！」

ﾊﾞｻﾊﾞｻﾊﾞｻ…

丸尾「なんですか、あの鳥は！？」

花輪「青くて美しい……まるで不死鳥みたいだ」

山田「すごいじょ～！　オイラ、初めて見たじょ～！」

不死鳥「……」ﾊﾞｻﾊﾞｻﾊﾞｻ…

はまじ「上空をくるくる回ってるぜ！」

ブー太郎「ラッキーだブー、これなら思う存分観察できるブー！」

丸尾「これならきっと先生も満足でしょう！」

花輪「フッ、不死鳥を見られるなんてなんて幸運なんだろう、ベイビー！」

はまじ「しかし、さくらもついてねえな。自分がいない間にあんな珍しい鳥がやってくるんだから」

たまえ「……」

マルコ「ただいまー」

すみれ「お帰り、マルコ。お風呂あがったらすぐご飯になさい」

マルコ「はーい」

食卓につくマルコ。

マルコ「……」ｶﾞﾂｶﾞﾂﾑｼｬﾑｼｬ

マルコ「おかわり！」

すみれ「よく食べるわねえ～」

マルコ「運動したから腹が減っちまったよい」

ヒロシ「ハハハ食え食え、食う子は育つっていうからなぁ」

マルコ「オヤジ、それをいうなら寝る子は育つだよい」

友蔵「ワシはお風呂に入るかのう」

友蔵（『よく食べる　孫をよく見て　浴室へ』　友蔵心の俳句）

翌日――

先生「皆さん、宿題はやってきましたか？」

クラス「はーいっ！！！」

はまじ「バッチリやってきたぜ！」

ブー太郎「なんたって不死鳥だブー！」

山田「アハハ～！」

マルコ「……」

マルコ「あっ！」

先生「さくらさん、宿題は？」

マルコ「すいません、忘れました」

先生「まあ、仕方ないですね。次から気を付けるように」

マルコ（トホホ、みんなの宿題を助けて自分が忘れてちゃ世話ねえよい）

たまえ「……マルちゃん」

マルコ「ん？」

たまえ「昨日のあの鳥ってもしかして……」

マルコ「たまちゃん、みんなには内緒だよい」

マルコ（さすがたまちゃん、勘が鋭いよい）

キートン山田「しかし、その後不死鳥の噂を聞きつけた人達が次々と神社にやってきて……」

ｻﾞﾜｻﾞﾜﾜｲﾜｲ…

「この神社に不死鳥が出たって？」　「絶対観察してやる！」　「ここで泊まり込みだ！」

マルコ「えらいことになっちまったよい……」

マルコ「知ーらないっと」

キートン山田「マルコのせいで、しばらくの間町では不死鳥騒ぎが続くことになるのであった」







～おわり～