Ｐ「凛、この部屋に来るまでのことは覚えてるか？」

凛「確か、ライブに向けて一人でレッスンをしてたはずだったんだけど」

凛「気が付いたらここで寝てて、起きたら隣にプロデューサーも寝てた」

Ｐ「俺も、普通に事務所で仕事をしてたはずだったんだけどなあ・・・」

Ｐ「凛は俺より先に起きてたんだよな？　何か変わったこととかなかったか？」

凛「今起きてる全部が変わったことだと思うけど・・・起きた直後は夢か何かだと思って」

凛「でも何か、部屋は真っ白だし何もないし、気味が悪くてすぐにプロデューサーを起こしたよ」

Ｐ「そうか・・・」

凛「それで、その紙にはほかに何が書いてあるの？」

Ｐ「えっとだな・・・直接見た方が早いわ。ほれ」ﾋﾟﾗｯ


・この部屋は「セ○クスしないと出られない部屋」です
・中の２人がセ○クスをしたと確認できれば、出入り口のドアより外に出られます
・食料や衣類、嗜好品など、要望を出してもらえれば搬入口より支給します
・ただし、脱出や外部との連絡、死角を作る目的での物資は支給できません
・避妊具の類も支給できません
・不要になったものやゴミはダストシュートにお入れください

凛「えっと・・・端的にまとめると？」

Ｐ「子作りエッチするかここで一生暮らすか好きに選べ。まあどちらにせよ全部観察させてもらうぜ」

凛「最っ低」

Ｐ「ひどっ！？　質問に答えただけなのに！」

凛「あっ、ごめん。プロデューサーがじゃなくてこんなこと思いつく人たちがだよ」

Ｐ「びっくりした・・・凛に嫌われたかと思った」

凛「それにしても殺風景な部屋だね。無駄に大きいし。あるものといったら・・・」

Ｐ「出入り口らしきドア、紙にも書いてあった搬入口とダストシュート、それにキッチン」

Ｐ「ってか妙に部屋の壁に鏡が多いな・・・」

凛「あとは部屋の隅にトイレとお風呂・・・だけど壁が全部透明ってこれ部屋から丸見えじゃない」

Ｐ「鏡も透明な壁も、死角を作らない、ってことだろうな。それに関してちょっと気になってることがあるんだけど」

凛「なに？」

Ｐ「誰が、何の目的で、とかの疑問ももちろんあるけど、『どうやって』観察してるんだ？」

凛「えっ？」

Ｐ「さっきから見回してるけど、監視カメラや隠しカメラが一切見当たらない」

Ｐ「俺らの行動自体もそうだけど、セ○クスしたかどうかもどうやって判断するんだ？　カメラもないのに？」

Ｐ「部屋の鏡もよく見てみたけど、マジックミラーじゃないっぽいし、そうだったとしてもこの部屋全部は見られない」

凛「・・・この紙に書いてあることに、嘘が含まれてるとか？」

Ｐ「まあ盲目的に信じるのは危険だろうな。特に最初の一文が嘘だと最悪だな」

凛「えっ？　その・・・しなくても、出られる可能性があるって意味になるんじゃ」

Ｐ「逆パターンもあるぞ。何をしようが一生出られない可能性だってある」

凛「一生・・・出られない・・・？」

Ｐ「！！　す、すまん！不安にさせるようなこと言っちまって」

凛「・・・ううん、とにかく、いろいろと調べてみるべきなんじゃないかな」

Ｐ「そ、そうだな。じゃあまずは・・・メモ翌用紙とボールペンが欲しいんだけど」

ｶﾀﾝｯ

凛「きゃっ！？」ﾋﾞｸｯ

Ｐ「・・・音声は筒抜けってことだな」

凛「あっ、搬入口・・・？」

Ｐ「おっ、ほんとにメモ帳とボールペンが出てきた」

Ｐ「ところで、今の凛のリアクションめちゃくちゃ可愛かったな」

凛「～～～っ！！」ﾎﾟｶﾎﾟｶ

Ｐ「こらこら顔真っ赤にして涙目でポカポカ殴られても可愛いだけだぞ。しぶりんかわいい。りんかわ。」

Ｐ「じゃあ次は・・・」ｶｷｶｷ

凛「・・・メモ？　何書いてるの？」

『喉乾いたからペットボトルのお茶２本くれ。伊○衛門で』

ｶﾞﾀﾝｯ

凛「えっ！？」

Ｐ「なるほどな・・・」

凛「な、なんでメモに書いただけで」

Ｐ「今、このメモは俺の手元で書いたから、どの方向からも見えなかったはずだ」

Ｐ「仮に俺たちに見つけられないカメラがあったところで、このメモを光学的機器で見ることは不可能だ」

凛「ま、まさか・・・」ｶﾞｻｺﾞｿ

凛「・・・伊○衛門が２本ある・・・」

Ｐ「つまり、こんなことをしている奴らは、俺たちには想像もつかない科学技術か、超能力でも使えるってことだな」

凛「ということは・・・」

Ｐ「この紙に書いてあることは、全部真実って可能性が高くなってきたな」

Ｐ「あと、書いてあった『死角を作る』ってことの意味も分かってきたぞ」

凛「えっ？」

Ｐ「さっきの位置で書いたメモが見えるなら、死角があるかどうかなんて観察する側からは関係ない。何をしようが全部丸見えだよ」

Ｐ「だからこの場合、俺たちが互いに相手から見えなくなるような場所を作らない、って意味だと思う」

凛「まあ、こんな空間じゃお互い何してるか丸見えだしね・・・でも、なんでそんなことを？」

Ｐ「・・・おそらくだけど、お互いを常に意識させたり羞恥心のハードルを下げて、行為に及びやすくする、とかいう感じじゃないか？」

Ｐ「じゃあ次は、１８金のネックレスをくれー、５０ｇくらいのやつ」

凛「・・・・・・」

Ｐ「・・・反応なしか。この部屋で必要なものしか支給されないってことか？」

凛「海鮮丼が食べたい。マグロとカニとウニたっぷりの美味しいやつ、２人前ね」

ｶﾀﾝｯ

Ｐ「マジか」

凛「うわ、ほんとに美味しそう。ちなみに、これ食べても大丈夫だと思う？」

Ｐ「俺たちに害を及ぼすつもりなら今まで何度でも機会はあったわけだし、大丈夫だとは思うけど」

凛「なら、とりあえず食べながら考えない？　お腹減ってちゃ考えもまとまらないよ」

Ｐ「・・・そうだな、あと箸と醤油とワサビと適当な小皿、あったかいお茶、全部２人分な」

～３０分後～

Ｐ「食べながらいろいろ試したけど、少しでもこの部屋で利用価値があるものならだいたいＯＫみたいだな」

凛「プレミアとか現存するかどうかとか関係ないみたいだね」

Ｐ「１８金のネックレスはダメだったけど、『凛に似合う落ち着いた色のドレス』『それに合うネックレス』はＯＫ・・・」

凛「１８金は２人ともファッション的な意味でも利用価値がないってことじゃない？」

Ｐ「まあそうだけどさ。さて、それじゃあ次に確かめたいのは・・・」

凛「その前に、ちょっといい？」

Ｐ「お、どうした？」

凛「何か隠してるよね？」

Ｐ「えっ」

凛「私も最初はけっこうパニックになってたのに、プロデューサーは落ち着きすぎじゃない？」

凛「それに、紙を見たあとの対処、というか確認作業というか・・・すごく手慣れてる感じがする」

凛「プロデューサー、この部屋のこと、最初から知ってたんじゃない？」

Ｐ「・・・鋭いな。ほんとはあまり話したくなかったんだけど・・・」

Ｐ「変に疑われたりしても嫌だしな。えーと、確か、comicア○スリウムだったっけか、俺の部屋にある分と同じもの全部くれ」

ﾄﾞｻﾄﾞｻｯ

凛「えっ、なにその・・・なに？」

Ｐ「アダルトマンガ雑誌だよ」

凛「アダっ・・・！？」

Ｐ「ほんとはこんなもの凛には見せたくないんだけど、見てもらわないと説明ができん」

Ｐ「えーっとどの号だったけっか・・・これじゃないし・・・おっ、あったあった」

Ｐ「嫌悪感はあるだろうけど、序盤だけでいいから読んでみてくれ。このページからだ」

凛「えっ、こ、これって」

Ｐ「ああ、この『セ○クスしないと出られない部屋』ってのは、そういう界隈ではわりとメジャーなネタなんだ」

Ｐ「それをテーマにしたマンガやＳＳをいくつか読んだことがあって、いろいろ考察とかしたことがあったってのが理由だよ」

凛「私にこれを読ませたのって・・・」

Ｐ「実際に見せもせずに『こんな作品があるからですよー』って言っても信憑性ゼロだろ」

凛「・・・何作も読んでるってことは、つまりプロデューサーはこういうのが好きってことなの？」

Ｐ「・・・だから言いたくなかったんだよ・・・」

凛「うん、なんかごめん。それで、専門家のプロデューサーにいくつか確認したいことがあるんだけど」

Ｐ「謝る気ねえな！？」

凛「そういう作品では、こんな部屋を作る目的はどういう設定になってることが多いの？」

Ｐ「そ、そうだな・・・俺が覚えてる限りだと、『趣味』『脅迫』『生態調査』『少子化対策』『世界救済』『ダンジョンのトラップ部屋』くらいか」

凛「それぞれ詳しく説明して」

Ｐ「くっそ、これどんな羞恥プレイだよ・・・まあ脱出の手掛かりになる可能性があるから説明はするけど」

Ｐ「まず『趣味』。これはもう男女をそういう環境に放り込んで反応を楽しむっていうだけだな」

Ｐ「『脅迫』は、そういう部屋だと信じさせて行為に及んだところを撮影して、それをネタに脅迫する」

Ｐ「『生態調査』は、人類より進んだ文明を持った宇宙人が人類を発見して、どんな生態なのかを観察するためにとりあえずオスとメスを放り込んで、って感じか」

Ｐ「『少子化対策』は、子供を作らないなら無理やり作らせちまえっていう強硬手段」

Ｐ「『世界救済』は、なんか知らんが特定の男女がセ○クスすることで世界が救われるっていう無理やりな設定」

Ｐ「『ダンジョンのトラップ部屋』は、ＲＰＧなんかで４人くらいのパーティ組むだろ？」

Ｐ「そのメンバーの一部か全部がそういうトラップ部屋に入ってしまってなんだかんだ」

凛「じゃあそれぞれの場合、こんなことを仕掛けてる人は誰になるの？」

Ｐ「うーん、まず『趣味』の場合は特定できないな」

Ｐ「『脅迫』の場合は同業他社かマスコミってとこか？　今やトップクラスのアイドルに成長した凛のスキャンダルとか絶好のネタだろ」

Ｐ「『生態調査』なら宇宙人、『少子化対策』なら政府とかが主導だな。『世界救済』は・・・どうなるんだ？」

Ｐ「『ダンジョンのトラップ部屋』ならダンジョンの主か、もしくは部屋自体が黒幕だな」

凛「じゃあ、今の状況がそれらのどれかに当てはまるなら、どの可能性が高いと思う？」

Ｐ「ふむ、まあ俺が考える限りこうだな」


『趣味』：△
『脅迫』：×
『生態調査』：○
『少子化対策』：△
『世界救済』○
『ダンジョンのトラップ部屋』：×

凛「設定が無理やりとか言ってた割に『世界救済』は○なんだ・・・それぞれそう判断した理由を聞いていい？」

Ｐ「ああ、まず前提として、ウチの事務所って規格外が多いよな？」

凛「えっ？　ああ、芳乃・茄子さん・クラリスさん・晶葉・小梅・志希とか？」

Ｐ「あとこずえとかヘレン、ちひろさんとかもそうかもな。なあ凛、感情論を抜きにして、そのメンバー誰か一人でも敵に回せるか？」

凛「絶対無理。アイドルとしてならともかく、なんていうか勝てる気がしない」

Ｐ「だろうな。そんなメンバーが揃ってるウチの事務所にケンカを売ってくる奴は誰だ？」

凛「あっ」

Ｐ「俺と凛が長期間いなくなれば、もちろん事務所も騒ぎになる。そのメンバーが本気で探しに、そして犯人を潰しにかかるはずなんだ」

Ｐ「『趣味』のためにウチにケンカを売るのはバカげてる。大方マキノに調査されて芳乃が撃滅して終わりだよ」

Ｐ「『脅迫』？　どこの誰がちひろさんを脅せるんだよ。こっちの場合もマキノと芳乃で完封だな」

Ｐ「それに、脅迫するなら『セ○クスしないと死ぬ部屋』でいいんだ。その方がお目当てのシーンが撮れる可能性が高いからな」

Ｐ「『生態調査』の場合、人類を調査している宇宙人が、ウチのメンバー全員合わせたよりヤバイ奴の可能性がある。だから助けに来られない」

Ｐ「あと、そういうヤバイ奴が『趣味』でやってる場合もあるな。考えづらいけど」

Ｐ「『少子化対策』なら、まあ政府相手に無茶をしないアイドルも多いだろう。ただそんな無理やりなことをすれば批判だらけになる」

Ｐ「それにその場合、閉じ込める相手がおかしい。俺なら１５歳の凛より、もっと年齢が上の人たちをかたっぱしから突っ込むぞ」

Ｐ「ただ『避妊具は支給しない』って一文が引っかかってるから、この可能性も捨てきれない」

Ｐ「『世界救済』の場合、ウチのアイドルたちはむしろ積極的に支援する可能性がある。普通は俺と凛より世界を選ぶだろ」

Ｐ「『ダンジョンのトラップ部屋』は、ウチのアイドルがどうにかできそうでなあ。それに俺たち別にダンジョンにいなかったし」

Ｐ「それにトラップ部屋なら俺たちを生かしておく理由がない。搬入口なんかなくていい」

Ｐ「あと、ポイントになるのは茄子さんだな。プロデューサーがいなくなるのは茄子さんにとってマイナスだし、そんな不運は起こらないはずだ」

Ｐ「だから相手が茄子さんを超えるヤバイ奴である『生態調査』と、茄子さんが積極的に支援する『世界救済』の可能性がさらに上がる」

凛「・・・じゃあ、それぞれの場合の、この部屋を脱出するための最善策は？」

Ｐ「まず言っておくと、作品の趣旨が趣旨だから、作品中での脱出方法は『セ○クスする』以外にないと思っていい」

Ｐ「ただこの状況はアダルト雑誌とは違う。他の脱出方法も十分考えられる」

Ｐ「『趣味』『脅迫』『ダンジョンのトラップ部屋』のどれかなら、ウチのアイドルたちが助けに来るのを待つのが最善」

Ｐ「『少子化対策』『世界救済』なら、まあセ○クスするのが最善だな」

Ｐ「『生態調査』の場合は何をしようが出られない可能性があるからな。とりあえずセ○クスしてみて相手の良心に期待」

凛「それらを総合して、今私たちがすべきことは？」

Ｐ「『一応部屋の調査をしてから一定期間待機。脱出の兆候が何もなければそのあとセ○クス』かな」

凛「一定期間って？」

Ｐ「まあウチのアイドルたちでもすぐに気づくか、すぐに助けに来れるかはわからんからなあ・・・」

Ｐ「しかし待機時間が長いと、大きな問題が２つある」

Ｐ「まずは俺と凛の仕事が滞るよな。業界のことを考えると少しでも脱出は早い方がいい」

Ｐ「アイドル渋谷凛とそのプロデューサーが揃って姿を消すとか、マスコミにあることないこと書かれるだろうし」

Ｐ「２つ目は健康の問題。例えば今俺が心臓発作で倒れたらどうする？　医者も呼べないし助かる方法がない」

Ｐ「すぐにセ○クスしてれば出られたかもしれないのに、俺が死んで凛の脱出機会が永遠に奪われるかもしれない」

Ｐ「ってことなんかを考えると、一週間くらいが限界だろうな・・・」

凛「一週間・・・」

Ｐ「とりあえず、その間どうやってここで生活するかを考えないとな・・・」

凛「そうだね」

凛（・・・・・・あれ？）

凛（これって、何の手掛かりもなく一週間経ったら、プ、プロデューサーとセッ

Ｐ「ところで凛？」

凛「ひゃいっ！？」

Ｐ「おおう、どうしたそんなに飛び上がって」

凛「なっなななんでもないよプロデューサー、それよりどうしたの？」

Ｐ「いや、今まであくまで最善策を考える、って感じで進めてきたけど、最善策を取ることが最適だとは限らないわけだよ」

Ｐ「人間ってのは常に最善の行動をとれるわけじゃない。感情ってもんがあるからな」

凛「・・・うん、言いたいことはわかるよ、プロデューサー」

凛「少し、考えさせて。まだ一週間あるんでしょ？」

Ｐ「ああ、大事なことだからな。じっくり考えてくれ」

Ｐ「で、まずやるべきはこの部屋の調査。さっきは搬入口の調査だけだったが今回は脱出目的でダストシュートや出入り口の調査」

Ｐ「それでダメだったら、ここで一週間暮らすためのいろいろを揃えようと思うんだけど」

凛「うん、私も手伝うよ・・・あと、プロデューサー」

Ｐ「どうした？」

凛「・・・その、お手洗いに行きたいんだけど」

Ｐ「・・・そっかー、その問題があったか」

Ｐ「まあ、トイレの壁が透明でそこら中に鏡がある状況だからな・・・俺が目を瞑ってるしかないか」

凛「ごめんね」

Ｐ「いやいや、一応トイレに背を向けて、目を瞑って下向いてるからさ」

凛（・・・絶対にプロデューサーはこっちを見ないと思ってても、やっぱり恥ずかしい）

凛（壁が透明なトイレで用を足すのって違和感も凄いし、さっさと済ませよう）ｺﾞｿｺﾞｿ

凛（・・・・・・）

凛（・・・・・・あっ！？）

凛（し、しまった、これ、音聞こえてるんじゃ！？）

凛（やっぱり、プロデューサー今耳ふさいだし、だ、だめ、けっこう我慢してたから止められ・・・）

凛（今から流して音を出すのも、間に合わない・・・）


凛「・・・・・・」

Ｐ「・・・・・・ごめん、目だけ瞑ってればと思って、他のことに思い当たらなかった」

凛「・・・いいよ、私も思いつかなかったし」

凛（次からは、何か映画とか音楽とか流して、水も流しながらにしないと・・・）

～数時間後～

Ｐ「ふう、こんなもんか・・・疲れた」

凛「ごめんね、力仕事は任せっきりで」

Ｐ「いやいや、凛にタンスやベッドなんか持たせてどこか傷められたら大問題だからな」

凛「それにしても、タンスや棚を仕切り代わりに使う案は失敗だったね」

Ｐ「ああ・・・そういう配置にした瞬間タンスも棚も消滅したもんな。どうやってんだマジで」

凛「あと、ベッドがどうやっても一個しか出てこなかったのって・・・」

Ｐ「・・・そういう意味だろ、たぶん」

凛「でも、なんか楽しかったよ。多少制限はあるけど、自分たちの好きな家具を好きな風に配置するのって」

凛「どれだけ部屋を調べても脱出の方法は思いつかなかったのは残念だけど」

Ｐ「家具を好きに配置って、実際やろうと思ってもできないよなあ。一部の大富豪くらいしか」

凛「うん、まるでプロデューサーとの新きょ・・・」

Ｐ「・・・凛？」

凛「ううん、何でもない。それより、先にシャワー浴びてきたら？　けっこう汗かいてるみたいだし」

Ｐ「そうだな。正直バスルームの壁が透明だから抵抗あるけど」

凛「大丈夫。プロデューサーが入ってる間は目瞑っておくから、ゆっくりしてきなよ」

Ｐ「いやさすがにそれは申し訳ないわ。別に普通にしててもいいぞ？　俺は凛を信頼してるし、凛になら別に見られても構わん」

凛「・・・ばか。それより早く入ってきなよ。さっき着替えとタオル出しといたから。はいこれ」

Ｐ「サンキュ。じゃあひとっぷろ浴びてくるわ」

ｼｬｱｱｱｱｱｱｱ・・・

凛（・・・先にシャワー浴びてきたら？　って言って、ベッドに座って待ってるこの状況って）

凛（なんていうか、え、えっちなホテルみたいな・・・）

凛（・・・考えないでおこう）


Ｐ「ふー、さっぱりした」

凛「ラフな格好のプロデューサーって、なんか新鮮だね」

Ｐ「まあこんな状況でスーツ着てる意味もないしなあ」

凛「じゃあ私もシャワー浴びてこようかな」

Ｐ「さすがに俺は目瞑ってたほうがいいよな？」

凛「普通にしてていいよ。私もプロデューサーを信頼してるし。見られてもいいとはちょっと言えないけど」

Ｐ「そうか、なら適当にＤＶＤでも観とくかな」

ｼｬｱｱｱｱｱｱｱ・・・

凛（さっきのお手洗いの時も恥ずかしかったけど、これも・・・相当恥ずかしい）

凛（プロデューサーがちょっとこっちを見たら、素っ裸の私が見られちゃうんだよね・・・）

凛（・・・さっさと済ませちゃおう）



凛「お待たせ・・・あれ、今見てるのって私たちのライブブルーレイ？」

Ｐ「ああ、せっかくだから一から見直そうと思ってな」

Ｐ「こうして見ると、みんなの成長も見て取れるし、課題も見つかるし、新しい演出なんかも思いつくしな」

凛「うわ、もうノートにいろいろ書き込まれてる・・・」

凛「・・・それにしても、私たちも随分凄いところまで来たね」

Ｐ「ん？」

凛「最初のライブ会場と、この前の会場を比べたら規模も機材も何もかも違うし」

凛「それに、最初のときはガチガチだった私たちも、自分で言うのもなんだけど堂々としたものだったし」

凛「初めてのライブの子たちを気遣う余裕もあったりとかさ」

Ｐ「まあな。まあまだここで満足してもらっちゃ困るけどな」

凛「うん。それに関してはこの前夏樹たちと話してて思うところもあったからね」

凛「・・・プロデューサー」

Ｐ「ん？」

凛「私、絶対トップアイドルになるから。もっと高い所からの景色、見てみたいからね」

Ｐ「ああ、俺も全力でサポートするよ」

凛「それにしても、お腹空かない？」

Ｐ「ああ、さっきの海鮮丼食べてからけっこう経ってるしな」

凛「じゃあキッチンもあるし、何か作ろうか」

Ｐ「ん？　さっきのみたくそのまま料理を要求すればいいんじゃないか？」

凛「時間もあるし、ちょっと料理の修行もしようかなって。レシピ本も手に入るしさ」

Ｐ「なら俺も手伝うぞ。何系で行く？」

凛「うーん・・・プロデューサーは何が食べたい？」

Ｐ「魚か鶏肉メインで何か。体動かしたからけっこうガッツリでもいけるな。あと野菜たっぷりのサラダとスープでもあれば」

凛「意外と細かい要求が飛んできてちょっと驚いた」

Ｐ「『なんでもいい』よりはマシだろ？」

凛「確かにね。まあ、準備しようか」

凛「プロデューサー、そこのバターとって」

Ｐ「はいよ。あとドレッシング自作したんだけど味見してくれ。ほれ」

凛「ん・・・うん、酸味が効いてて美味しい」

Ｐ「よかった。じゃあ次にスープ仕上げちまうな」

凛（・・・キッチンで二人で並んで料理、なんか、楽しいな）

凛（まるで、その、夫婦みｔ

Ｐ「凛ー？　魚焦げてないかー？」

凛「えっ、あっ！？あ、だ、大丈夫」

Ｐ「なんかボーっとしてたけど」

凛「なんでもない」

Ｐ＆凛「「ごちそうさまでした」」

凛「あ、お皿洗うからそのまま置いといていいよ」

Ｐ「いや、せっかく一緒に料理したんだし、皿洗いも一緒にやりたいと思ってな」

凛「そう？　じゃあ、一緒に洗おうか」

Ｐ「ほんとは全部ダストシュートに放り込んで、使うたびに新しい食器用意させるとかも考えたんだけど」

凛「なんか、もったいないよね。私たちのものじゃないんだけど」

Ｐ「この湯飲みとか完全に俺の好みに合ってるからな。もうすでに愛着湧いてきた」

凛（・・・同じ形で、色違いの湯飲み・・・なんか、いいな）


Ｐ「よし、こんなもんか」ｷｭｯｷｭｯ

凛「やっぱり２人で作業するとすぐ終わるね」

Ｐ「２人並んで余裕で作業できるほどのキッチンとは、至れり尽くせりだなマジで」

凛「食器、ここの棚にまとめて入れとくね」

Ｐ「おう、箸とかはこっちの引き出しかな」

凛（ダメ、考えないようにしてたけどダメ。これ完全に新婚さんだ）

Ｐ「さて、一通り今日やるべきことはやった感じだけど・・・」

凛「うん・・・ふぁあ・・・」

Ｐ「ん？　眠くなってきたか？　ってもうこんな時間かよ。こんなところにいると時間の感覚なくなるな」

Ｐ「それに今日はいろいろあったし、早めに休もうか。死角どうこうの関係で照明は消せないっぽいけど」

凛「そうだね」

Ｐ「じゃあベッド１つしかないから、凛が使ってくれ。寝床に使えそうなソファなんかも出せなかったし、俺は床かどっかで寝るから」

凛「ダメ」

Ｐ「えっ？」

凛「プロデューサーも、ベッドで一緒に寝て」

Ｐ「おい凛、お前何言ってるのかわかって」

凛「私たちは、ここから絶対脱出しなきゃいけないんだよ？」

Ｐ「！！」

凛「変にプロデューサーが体調を崩して、いざ何か起こったときに動けなかったりとか」

凛「最悪、こんな病院もないし医者もいないところで取り返しのつかないことになったらどうするの？」

凛「さっきプロデューサーも言ってた通り、こんな状況、健康面がすごい大切でしょ？」

Ｐ「・・・・・・」

凛「いつも私たちアイドルのことを考えてくれて、いろいろと優先してくれたり気遣ってくれてるのはありがたいよ」

凛「でも、私と一緒に脱出するつもりなら、今は私を大切にしてくれるのと同じくらい自分のことも大切にして」

凛「それに、さっきも言ったけど、私はプロデューサーを信頼してるから」

Ｐ「・・・わかったよ、一緒にベッドで寝ようか」

凛「私が寝た後に、ベッドから出て床で寝たりとかしたら本気で怒るよ？」

Ｐ「・・・やめとくわ。凛に嫌われたくないしな」

Ｐ「それじゃあ、おやすみ、凛」

凛「おやすみ、プロデューサー」

Ｐ（・・・・・・）

凛（・・・・・・）

Ｐ＆凛（（寝られるわけがない！！））

Ｐ（やっべえ凛からめっちゃいい匂いする、シャンプーの匂い？　ボディソープ？　いや、これ『女の子の匂い』だ）

凛（近い近い近い！！ダブルベッドってこんな近かった！？　なんかプロデューサーの体温まで感じる気がするし）

Ｐ（いや落ち着け凛はまだ１５歳だぞ！？　でも凛は既にしっかり自分の考えを持ってる立派な女性で）

凛（心臓がバクバク言ってる、でもあんなこと言った手前、私が寝不足で体調崩したりするわけには）

Ｐ（・・・凛はもう寝たかな？）ﾁﾗｯ

凛（・・・プロデューサー、もう寝たかな）ﾁﾗｯ

Ｐ＆凛「・・・・・・」

Ｐ「・・・ぷっ」

凛「・・・ふふっ」

Ｐ＆凛「あははははは！！」

Ｐ「り、凛、顔真っ赤じゃないか、くくっ」

凛「ふふっ、そ、そう言うプロデューサーだって」

Ｐ「じゃあお互い眠れそうにないし、目を瞑ったままで適当に雑談でもするか？」

Ｐ「目と体は休まるし、そのうち寝ちゃうだろ。別に明日早く起きなきゃいけないわけでもないし」

凛「そうだね。プロデューサーと一緒にベッドの中って状況にも慣れないといけないしね」

Ｐ「じゃあ言い出しっぺが話題振るか。昨日事務所の冷蔵庫の中にあったプリンがさ・・・」

～翌朝～

凛（・・・ん）

凛（あれ、ここどこだっけ・・・　！？）

凛（な、なんでプロデューサーがベッドに！？　・・・あっ）

凛（そっか、昨日から、閉じ込められてるんだっけ・・・）

凛（プロデューサー、まだ寝てる。プロデューサーの寝顔見るのって初めてかも）

凛（・・・そうだ、いいこと思いついた）


～１時間後～

ﾄﾝﾄﾝﾄﾝ、ｶﾁｬ

Ｐ（・・・ん、朝か）

Ｐ（・・・料理の音？）

凛「あ、おはようプロデューサー。よく眠れた？」

Ｐ「ああ凛、起きてたのか。・・・ってもう１０時かよ」

凛「昨日はいろいろあったし、それにこんな空間じゃ感覚が狂っても仕方ないって。私も起きたの９時だもん」

Ｐ「それで朝飯作ってくれてたのか。いい匂いするな」

凛「うん、昨日リクエストとか聞けばよかったんだけど・・・和食でよかった？」

Ｐ「ああ」

凛「よかった。もうできるから顔洗ってきなよ」

Ｐ「ありがとう、じゃあ昼飯は俺が作るかな」

Ｐ「え、なにこの旅館の朝飯みたいな凄いの」

凛「いや、なんか興が乗っちゃってさ」

Ｐ「でも１時間でできる料理じゃないだろこれ」

凛「それがさ、あの搬入口がすっごい便利で、仕込みが必要な食材とかもしっかり処理済みで出してくれるし」

凛「仕上げだけして盛り付けして、くらいだからそんなに手間はかかってないよ」

Ｐ「凄いな・・・ほんとにどうなってんだこの空間」


Ｐ「ふう、ご馳走様でした。美味かったよ」

凛「お粗末様でした。それで、少し休んだらやりたいことがあるんだけど」

Ｐ「どうした？」

凛「自主トレ。昨日の自主トレも途中だったし、こんなところにいるからってだらけてたら戻った時に大変そうだし」

凛「それで、プロデューサーにチェックしてほしくて」

Ｐ「流石だな。わかった、トレーナーさんほどしっかりしたことは言えないけど付き合うよ」


こうして、プロデューサーとご飯を作ったり、自主トレをしたり、一緒にのんびりしたりしながら、

そして脱出の手掛かりも兆候もないまま、一週間が過ぎた。

凛「・・・・・・」

Ｐ「・・・・・・」

凛「・・・一週間、経っちゃったね」

Ｐ「・・・そうだな」

凛「ねえプロデューサー、その、今も最初の方針が最善で間違ってないよね？」

Ｐ「最初の方針って言うと・・・『部屋の調査をして一週間待機、脱出の兆候が何もなければそのあとセ○クス』」

凛「そう、それ」

Ｐ「ああ・・・何も進展はなかったしな」

凛「・・・シャワー、浴びてくる」

Ｐ「凛？」

凛「ちゃんと、覚悟も決めてくるから」

Ｐ「・・・すまん」

凛「ふふっ、なんでプロデューサーが謝るの？　じゃあ行ってくるね」

凛（・・・期待はしちゃダメ。なら私がプロデューサーにかけるべき言葉は・・・）


凛「・・・お待たせ。プロデューサーもシャワー使うでしょ？」

Ｐ「・・・ああ」

凛「あ、戻ってきたね。隣座っていいよ？」

Ｐ「ああ」

凛「・・・ねえプロデューサー、あんまり気にしなくていいよ？」

Ｐ「いや、でもそんなわけには」

凛「正直、プロデューサーが最初の相手なら別にいいかな、って思ってるし」

凛「それに、ちゃんと帰れたあとに今日のことを盾にプロデューサーに迫るなんてこともしないから」

Ｐ「凛・・・」

凛「なんにも気にせず、私とのことなんてなかったことにして普通に接してくれればいいから」

凛「『現役女子高生アイドルと合意の上でえっちできるぜヒャッホウ』くらいの軽い気持ちでいいかｒ」

Ｐ「凛」ｶﾞｼｯ

凛「っ！」ﾋﾞｸｯ

Ｐ「そんな自分をないがしろにするような言葉を使わないでくれ。凛は俺にとってそんな軽い存在じゃない」

凛「・・・私が」

Ｐ「凛？」

凛「私がっ、どんな、気持ちで・・・っ！」

凛「どんな気持ちで言ってると思ってるのっ！！」ﾊﾟｧﾝ!!

Ｐ「・・・痛った。スナップの効いたいいビンタだな」

凛「ふざけないで！私は、私はっ・・・！」

Ｐ「で、どんな気持ちで言ってたんだ？」

凛「！！」

Ｐ「教えてくれないか？　凛の気持ち」

凛「わ、たし・・・っ」

凛「いや・・・こんなのいや、だよ・・・プロデューサー・・・」ｸﾞｽｯ

Ｐ（・・・だよな）

Ｐ「少しは落ち着いたか？」

凛「うん・・・ありがと、プロデューサー」

凛「それと、思いっきりひっぱたいちゃって、ごめん」

Ｐ「いや、まあありゃしゃあないだろ」

凛「しゃあない・・・？　そう思うってことは」

Ｐ「まあ、明らかに普段の凛が言うような言葉じゃなかったからな」

Ｐ「大方、あとで俺が責任を取るとか、好きな人への気持ちを諦めるとか言い出さないようにってところだろ？」

凛「・・・やっぱり、何でもお見通しなんだね」

Ｐ「凛のプロデューサーだからな」

Ｐ「でも、凛の気持ちが聞けて良かったよ。そりゃあこんなオッサンとするなんて嫌だよなあ」

凛「え？」

Ｐ「え？」

凛「・・・前言撤回。なんにもお見通しじゃなかったね、この朴念仁」

Ｐ「いきなり辛辣だなおい！？」

凛「・・・最悪のシチュエーションだけど、まあ仕方ないか」

凛「プロデューサー、私、プロデューサーのことが、好き。大好き」

Ｐ「えっ」

凛「いつか、私がそういうことをするなら、初めてはプロデューサーみたいな人・・・ううん、プロデューサーがいいなって思ってた」

凛「正直、シチュエーションとかいろいろ考えたこともあったし」

凛「でも、こんなことがきっかけで、プロデューサーの本心を無視して結ばれるとか絶対したくない。死んでもイヤ」

凛「だから、ここでの出来事も、その後のことも何も気にしなくていいって言うのも本当」

Ｐ「凛・・・」

凛「それに、私はアイドルで、Ｐさんはプロデューサーだから。私が『好き』って言っても、応えられないのはわかってる」

凛「だから、さっき言った通り、向こうに帰っても普通に接して、普通にプロデューサーの好きな人と、結ばれてほしい」

凛「それがアイドルをやりきった後の私だったら言うことはないけど、そうじゃなくても構わない」

凛「これが、今の私の本心」

凛「ただ、想像してたプロデューサーとの初体験が、こんな味気ないところで、しかもプロデューサーと結ばれたわけでもないのに」

凛「まるで他人に強制されてるような状況で、さらに監視下でしなきゃいけない、ってのが、すごく嫌なだけ」

凛「だから、本当に気にしなくていいから。大丈夫だから」

Ｐ「・・・凛」

凛「なに？」

Ｐ「凛の初体験は、こんなところでってことになっちゃうけど・・・」

Ｐ「無事に帰れたら、凛の理想通りのところに行って、理想通りのことをしよう」

凛「・・・・・・」

凛「！？　ちょ、ちょっとプロデューサー、まさか」

Ｐ「凛、俺も凛が好きだ。凛がちゃんとアイドルをやりきった後に言おうと思ってた」

凛「う、うそ、でも、それって」

Ｐ「仮に今のが嘘だったとして、それはちょっと変じゃないか？」

凛「えっ？」

Ｐ「別に凛のことを『仕事のパートナーだから大切』程度にしか思ってないなら、さっき凛の申し出を受けてそのままセ○クスして終わりだよ」

Ｐ「それなのにわざわざ凛の本心を聞いて、こっちからも愛の告白なんて後々面倒すぎるだろ」

凛「で、でもっ」

Ｐ「・・・『俺の自室の机の一番下の段に入ってる封筒をくれ』」ｶﾀﾝｯ

凛「えっ？」

Ｐ「ほれ。中身見てみ？　本当は凛に見せるつもりはなかったんだけど」

凛「こ、これ・・・」

Ｐ「指輪の見積書だよ。額が額だから早めに見積もり取って準備しとかないと俺の給料じゃどうにも」

凛「・・・『Rin』っていう刻印の、デザイン」

Ｐ「ああ・・・いつか、凛に渡すつもりだったものだ」

凛「じゃあ・・・！」

Ｐ「ああ、さっき言った通りだ。凛の理想は全部叶えるから。約束しよう」

凛「・・・うん！」

Ｐ「あ、でもさすがに非現実的すぎるのはＮＧな？　宇宙で結婚式とか新婚旅行で世界一周とか」

凛「ふふっ、カッコつかないね、プロデューサー」

Ｐ「まあな、カッコつけるのはここを出てからにしとくよ」

凛「や、あんっ、プ、プロデューサー、そんなところっ」

Ｐ「ちょっと我慢しててな、しっかり濡らしとかないと痛いだろうし」

凛「だ、だめっ、何か、なにかきちゃうっ、ふあぁっ！」ﾋﾞｸﾝｯ

凛「～～～～っっ！！」ﾋﾞｸﾋﾞｸｯ


凛「はぁっ・・・はぁっ・・・ち、力、入んない・・・」

Ｐ「いやすまん、反応よすぎてちょっとやりすぎたかも」

凛「・・・相手が、プロデューサーだから、だよ」

Ｐ「凛・・・」

Ｐ「すまん、今の凛を見てたらもう我慢できそうもない」ﾋﾟﾄｯ

凛「うん・・・いいよ、来て、プロデューサー」

ｶﾞﾁｬﾝｯ


Ｐ＆凛「・・・え？」

凛「ねえプロデューサー」

Ｐ「どうした？」

凛「私の見間違いじゃなかったら、部屋の扉が開いてるように見えるんだけど」

Ｐ「奇遇だな、俺もだ」

凛「・・・どういうこと？」

Ｐ「・・・・・・」

Ｐ「あっ！？　ま、まさか」

凛「どうしたの？」

Ｐ「ここは『セ○クスしないと出られない部屋』じゃなくて・・・」

Ｐ「『セ○クスしないと出られない部屋！だけど判定ガバガバでお互いパンツ脱いで股間が臨戦態勢でいざ挿れる直前くらいで開いてしまう部屋！』だったのか！」

凛「なにそれ！？」

Ｐ「そういうのもあるんだよ！」

凛「そういうのもあるんだ！？」

Ｐ「・・・それで、どうする？」

凛「・・・どう、って？」

Ｐ「・・・続き、する？」


思いっきりひっぱたいた。

だけど、その後ちゃんと約束守ってくれたから、許してあげた。

以上で完結です。ここまで読んでくれた方ありがとうございました。
天原さんの常人には思いつかないような奇抜な発想力が羨ましいです。
「貞操逆転世界」とか「異種族レビュアーズ」とか超面白かったです。