1: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:00:07.25 :nIDpKkIUo
雨嘉「そっちに逃げたよ、鶴紗!」
鶴紗「すばしっこいヤツだ。梅様が一緒なら、すぐにでもカタを付けてやるのに!」 ダァン
神琳「ないものねだりはできません、ならば全力を尽くすまでです!」
ヒュージ「───!」 シュバッ
雨嘉(あのヒュージ、機動力が高い……! あんまり得意じゃないけど、ここは接近戦で勝負をつけないと!)
** **
鶴紗「よし、作戦どおり上手く崖に誘い込んだ。これで逃げ場はない!」 ジャキ
神琳「お待ちください鶴紗さん、ヒュージの様子が……!」
ヒュージ「───グォォォ!」 タタタァン
雨嘉「な、なにをしてるの……? 空に向かって撃ち続けてる……?」
鶴紗「勝ち目がなくなって念仏でも唱えたくなったか? 生憎とヒュージにかける情けは持ち合わせてない。これで終わりだ!」 バッ
ヒュージ「───」 ズバァン
雨嘉「そっちに逃げたよ、鶴紗!」
鶴紗「すばしっこいヤツだ。梅様が一緒なら、すぐにでもカタを付けてやるのに!」 ダァン
神琳「ないものねだりはできません、ならば全力を尽くすまでです!」
ヒュージ「───!」 シュバッ
雨嘉(あのヒュージ、機動力が高い……! あんまり得意じゃないけど、ここは接近戦で勝負をつけないと!)
** **
鶴紗「よし、作戦どおり上手く崖に誘い込んだ。これで逃げ場はない!」 ジャキ
神琳「お待ちください鶴紗さん、ヒュージの様子が……!」
ヒュージ「───グォォォ!」 タタタァン
雨嘉「な、なにをしてるの……? 空に向かって撃ち続けてる……?」
鶴紗「勝ち目がなくなって念仏でも唱えたくなったか? 生憎とヒュージにかける情けは持ち合わせてない。これで終わりだ!」 バッ
ヒュージ「───」 ズバァン
2: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:01:56.30 :nIDpKkIUo
二水『こちら作戦完了しました! 鶴紗さん、そちらの状況はどうですか?』
鶴紗「二水か、そっちは無事でなにより。いま最後の一体を片づけたところだよ、またあとで合流しよう」
神琳「しかし……わざわざ戦力を分散して各個撃破を誘うだなんて、何か裏がありそうですね」
雨嘉「さっきのヒュージの行動も気になる。いったいなにが目的だったんだろう?」
鶴紗「敵の狙いがわからない以上、ここからは慎重に行動すべきだと思う。神琳、わたし達はこれからどうすればいい?」
神琳「そうですね、まずは周囲を警戒しましょう。鶴紗さん、レアスキルをお願いしてもいいですか?」
鶴紗「わたしと同じ意見だね。了解した、やってみよう───《ファンタズム》!」 キィィン
二水『こちら作戦完了しました! 鶴紗さん、そちらの状況はどうですか?』
鶴紗「二水か、そっちは無事でなにより。いま最後の一体を片づけたところだよ、またあとで合流しよう」
神琳「しかし……わざわざ戦力を分散して各個撃破を誘うだなんて、何か裏がありそうですね」
雨嘉「さっきのヒュージの行動も気になる。いったいなにが目的だったんだろう?」
鶴紗「敵の狙いがわからない以上、ここからは慎重に行動すべきだと思う。神琳、わたし達はこれからどうすればいい?」
神琳「そうですね、まずは周囲を警戒しましょう。鶴紗さん、レアスキルをお願いしてもいいですか?」
鶴紗「わたしと同じ意見だね。了解した、やってみよう───《ファンタズム》!」 キィィン
3: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:03:13.03 :nIDpKkIUo
─────────
ズダァンッ
雨嘉『───? ───……』 ドサ
神琳『───っ!? ───!!』 ダッ
雨嘉『───、───……。───』 ゴプ
神琳『───っ! ───……!』 ポロポロ
─────────
鶴紗「な!? そ……狙撃だ! 逃げろ雨嘉ぁっ!!」
神琳「雨嘉さんっ!!」 バッ
雨嘉「え───」
ズダァンッ
─────────
ズダァンッ
雨嘉『───? ───……』 ドサ
神琳『───っ!? ───!!』 ダッ
雨嘉『───、───……。───』 ゴプ
神琳『───っ! ───……!』 ポロポロ
─────────
鶴紗「な!? そ……狙撃だ! 逃げろ雨嘉ぁっ!!」
神琳「雨嘉さんっ!!」 バッ
雨嘉「え───」
ズダァンッ
4: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:04:11.23 :nIDpKkIUo
神琳「あぁぁっ!? ぐ、ぅっ……!」 ズシャァ
雨嘉「神琳!? そんな、わたしを庇って……!」
鶴紗「大丈夫か、神琳!」
神琳「これしきのこと、と言いたいですが……げ、ほっ。少し、無茶をしてしまいました、ね……」 ドサ
雨嘉「ごめん、ごめんね神琳……っ! わたしがもっと、しっかりしていれば……!」
神琳「誰のせい、でもありません。ですが、いまは撤退が先です……!」
鶴紗「くそっ、聞こえるか二水! 神琳が負傷した、作戦失敗だ! これより撤退する───!」
二水「神琳さん、怪我の具合は大丈夫なんですか?」
神琳「うふふ、心配してくださるのねふーみんさん。ですが申し訳ございません、すぐに戦線へ復帰するのは難しいと……」
雨嘉「本当にごめんね……わたしが気付かなかったから、わたしの代わりに神琳が……」
神琳「雨嘉さん、その話はもういいでしょう。わたくしたちより敵の機知が上回っていた、それだけのことです」
ミリアム「しかし……今回の作戦、やけにヒュージの動きが組織的じゃと思わんか?」
鶴紗「やっぱり、ミリアムもそう思う? わたしも同意見だよ。おそらく最初から雨嘉が狙いだったんだ」
雨嘉「わたしが……?」
神琳「あぁぁっ!? ぐ、ぅっ……!」 ズシャァ
雨嘉「神琳!? そんな、わたしを庇って……!」
鶴紗「大丈夫か、神琳!」
神琳「これしきのこと、と言いたいですが……げ、ほっ。少し、無茶をしてしまいました、ね……」 ドサ
雨嘉「ごめん、ごめんね神琳……っ! わたしがもっと、しっかりしていれば……!」
神琳「誰のせい、でもありません。ですが、いまは撤退が先です……!」
鶴紗「くそっ、聞こえるか二水! 神琳が負傷した、作戦失敗だ! これより撤退する───!」
二水「神琳さん、怪我の具合は大丈夫なんですか?」
神琳「うふふ、心配してくださるのねふーみんさん。ですが申し訳ございません、すぐに戦線へ復帰するのは難しいと……」
雨嘉「本当にごめんね……わたしが気付かなかったから、わたしの代わりに神琳が……」
神琳「雨嘉さん、その話はもういいでしょう。わたくしたちより敵の機知が上回っていた、それだけのことです」
ミリアム「しかし……今回の作戦、やけにヒュージの動きが組織的じゃと思わんか?」
鶴紗「やっぱり、ミリアムもそう思う? わたしも同意見だよ。おそらく最初から雨嘉が狙いだったんだ」
雨嘉「わたしが……?」
5: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:05:03.31 :nIDpKkIUo
神琳「なるほど。こちらの分断を誘い、狙撃位置を空への発砲で伝える───仮痴不癲とはこのこと、追い詰められていたのはわたくし達でしたね」
二水「あの長遠距離射撃に対抗できるのは雨嘉さんだけです。高機動型を囮にしたのも、雨嘉さんを誘い出すための罠だったのかもしれません……」
ミリアム「じゃが、これからどうする? ワシら以外のメンバーは百合ヶ丘を留守にしておるぞ」
鶴紗「夢結様や梅様達は東京のレギオンと合同作戦中だ。わたしたちだけでやるしかない……!」
二水「む、無理です! 神琳さんまで負傷している以上、他のレギオンに応援を頼んだほうが───」
百由「お、いたいた。ぐろっぴも無事みたいね!」
ミリアム「も、百由様!? なんでここに───」
百由「あら、わたしは可愛いシルトの顔を見に来ちゃダメかしら? 傷つくわね~」
神琳「百由様。茶化しにきたのではないのでしょう?」
百由「……そうね。今回の件はちょっと大ごとになりそうだから、わたしから話しておくことがあるわ」
神琳「なるほど。こちらの分断を誘い、狙撃位置を空への発砲で伝える───仮痴不癲とはこのこと、追い詰められていたのはわたくし達でしたね」
二水「あの長遠距離射撃に対抗できるのは雨嘉さんだけです。高機動型を囮にしたのも、雨嘉さんを誘い出すための罠だったのかもしれません……」
ミリアム「じゃが、これからどうする? ワシら以外のメンバーは百合ヶ丘を留守にしておるぞ」
鶴紗「夢結様や梅様達は東京のレギオンと合同作戦中だ。わたしたちだけでやるしかない……!」
二水「む、無理です! 神琳さんまで負傷している以上、他のレギオンに応援を頼んだほうが───」
百由「お、いたいた。ぐろっぴも無事みたいね!」
ミリアム「も、百由様!? なんでここに───」
百由「あら、わたしは可愛いシルトの顔を見に来ちゃダメかしら? 傷つくわね~」
神琳「百由様。茶化しにきたのではないのでしょう?」
百由「……そうね。今回の件はちょっと大ごとになりそうだから、わたしから話しておくことがあるわ」
6: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:06:10.96 :nIDpKkIUo
雨嘉「百由様、お話ってなんですか?」
百由「えー、おほんっ! ───あなた達が接敵した狙撃型ヒュージは、現在百合ヶ丘に向けて前進してるの。明後日にはここら一帯が射程に入るわ」
二水「が、学園が直接狙撃されるってことですか!?」
ミリアム「それってかなりマズいじゃろ……学園はどう対処するつもりなんじゃ?」
百由「複数のレギオンを募って討伐隊を派遣するみたいね。だけど被害は免れないハズよ」
鶴紗「わたしたちは射線から逃げるのに精一杯だった。あんなのに近づいて倒すだなんて自殺行為だ……!」
百由「そこで学園から指示が降りたわ。一柳隊は先行狙撃分隊を結成し、狙撃型ヒュージを攻撃せよってね」
鶴紗「はぁ!? 冗談じゃない……! さっきの戦いで神琳だって負傷したんだぞ!?」
神琳「しかし、理にはかなってますね。雨嘉さんの狙撃で先にあのヒュージを倒すことができれば、学園の被害は最小限に抑えられます」
雨嘉「で、でもっ……! わたし、神琳がいないと……!」
ミリアム「神琳よ、お主本気で言っておるのか……?」
雨嘉「百由様、お話ってなんですか?」
百由「えー、おほんっ! ───あなた達が接敵した狙撃型ヒュージは、現在百合ヶ丘に向けて前進してるの。明後日にはここら一帯が射程に入るわ」
二水「が、学園が直接狙撃されるってことですか!?」
ミリアム「それってかなりマズいじゃろ……学園はどう対処するつもりなんじゃ?」
百由「複数のレギオンを募って討伐隊を派遣するみたいね。だけど被害は免れないハズよ」
鶴紗「わたしたちは射線から逃げるのに精一杯だった。あんなのに近づいて倒すだなんて自殺行為だ……!」
百由「そこで学園から指示が降りたわ。一柳隊は先行狙撃分隊を結成し、狙撃型ヒュージを攻撃せよってね」
鶴紗「はぁ!? 冗談じゃない……! さっきの戦いで神琳だって負傷したんだぞ!?」
神琳「しかし、理にはかなってますね。雨嘉さんの狙撃で先にあのヒュージを倒すことができれば、学園の被害は最小限に抑えられます」
雨嘉「で、でもっ……! わたし、神琳がいないと……!」
ミリアム「神琳よ、お主本気で言っておるのか……?」
7: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:07:13.13 :nIDpKkIUo
百由「言いたいことはわかるし、わたしもこの作戦は危険すぎると思う。だけどもし成功できれば───」
神琳「なにを勘違いなさっているのですか? わたしは雨嘉さんの身が最も大事だと言っているのです。たとえ誰を敵にまわしたとしても……」 ギロ
二水「や、やめてください神琳さん! いまはケンカしてる場合じゃありません、CHARMを降ろしてください~っ!」
雨嘉「神琳……ごめんなさい百由様、わたしこれ以上神琳を泣かせたくはないです……」
百由「そっか。いや、わたしもこれで良かったと思うわ。それじゃあ上には適当に話を付けておくから───」
鶴紗「待った、百由様! 待ってくれ……みんな」
雨嘉「鶴紗……?」
鶴紗「わたし達は一柳隊だ。もし梨璃がここにいたら、なんて言うと思う?」
鶴紗「きっとアイツはこういうだろ。だからみんな梨璃についてきた、アイツに救われてきた……そうじゃないのか?」
梨璃『わかりました、やりましょう! 他でもないわたしたちが、みんなを守るんです!』
百由「言いたいことはわかるし、わたしもこの作戦は危険すぎると思う。だけどもし成功できれば───」
神琳「なにを勘違いなさっているのですか? わたしは雨嘉さんの身が最も大事だと言っているのです。たとえ誰を敵にまわしたとしても……」 ギロ
二水「や、やめてください神琳さん! いまはケンカしてる場合じゃありません、CHARMを降ろしてください~っ!」
雨嘉「神琳……ごめんなさい百由様、わたしこれ以上神琳を泣かせたくはないです……」
百由「そっか。いや、わたしもこれで良かったと思うわ。それじゃあ上には適当に話を付けておくから───」
鶴紗「待った、百由様! 待ってくれ……みんな」
雨嘉「鶴紗……?」
鶴紗「わたし達は一柳隊だ。もし梨璃がここにいたら、なんて言うと思う?」
鶴紗「きっとアイツはこういうだろ。だからみんな梨璃についてきた、アイツに救われてきた……そうじゃないのか?」
梨璃『わかりました、やりましょう! 他でもないわたしたちが、みんなを守るんです!』
8: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:08:26.29 :nIDpKkIUo
神琳「っ……ですが今回は話が別です。わたくしの他に誰が雨嘉さんを守れると?」
鶴紗「わたしが、やる。今度は絶対に守り抜く! 必ずだ、約束する……!」
鶴紗「だから、お前もわたしを信じてくれ。神琳!」 ガシ
神琳「───……」
神琳「……ふふっ、そんな表情もできるんですね。別にわたくしはただ、鶴紗さんを少しからかっただけですよ」 フイ
雨嘉(神琳……やっぱり悔しいんだ。こんなに白くなるほど、手を握りしめて……)
ミリアム(夢結様から聞いておったが、お主やっぱり難儀な性格しとるの)
鶴紗「ありがとう。雨嘉の命は、代わりにわたしが預かる」
百由「あなた達、本当にいいの? 命惜しさに逃げるのも、時には必要なことだってあるのよ?」
鶴紗「わたしたちはリリィの前に一柳隊だ、梨璃ならきっとそうする。それに百由様なら、この状況を打開する秘策があるんだろ?」
神琳「っ……ですが今回は話が別です。わたくしの他に誰が雨嘉さんを守れると?」
鶴紗「わたしが、やる。今度は絶対に守り抜く! 必ずだ、約束する……!」
鶴紗「だから、お前もわたしを信じてくれ。神琳!」 ガシ
神琳「───……」
神琳「……ふふっ、そんな表情もできるんですね。別にわたくしはただ、鶴紗さんを少しからかっただけですよ」 フイ
雨嘉(神琳……やっぱり悔しいんだ。こんなに白くなるほど、手を握りしめて……)
ミリアム(夢結様から聞いておったが、お主やっぱり難儀な性格しとるの)
鶴紗「ありがとう。雨嘉の命は、代わりにわたしが預かる」
百由「あなた達、本当にいいの? 命惜しさに逃げるのも、時には必要なことだってあるのよ?」
鶴紗「わたしたちはリリィの前に一柳隊だ、梨璃ならきっとそうする。それに百由様なら、この状況を打開する秘策があるんだろ?」
9: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:09:21.36 :nIDpKkIUo
百由「ふっ……当然よ! わたしが立案する作戦だもの、絶対に誰も死なせたりしないわ!」
百由「それじゃあこれより作戦を説明するわね。狙撃手は雨嘉さん、護衛は鶴紗さん。観測手は二水さんが担当よ!」
二水「へっ? わ、わたしも参加するんですか~!?」
神琳「あら、頼もしい。これなら雨嘉さんも安心して背中を託せそうですね?」
雨嘉「観測手……ふーみんがやってくれるのなら、心強いかも」
ミリアム「ここまで来たのじゃから一蓮托生じゃ。ここで一人逃げようたってそうはいかんぞい?」
百由「解析によると、狙撃型ヒュージは20機の小型浮遊機にマギリフレクターを搭載しているの。装甲もかなり硬いわ……そこでコイツよ!」 ガシャン
鶴紗「ずいぶん懐かしいシロモノだな。アステリオン・マギカノンか」
百由「その通り! このマギパーティクルカノンは従来より荷電粒子の拘束率が23.1%、マギ効率が9.6%も向上した改良試作型で───」
ミリアム「おい、百由様」
百由「とにかく! 雨嘉さんはまわりの浮遊機を全部撃ち落として、この子でトドメを刺してもらうわ。明日の調整までぐろっぴは借りるわね?」 ガシ
ミリアム「は? 明日!? ワシは聞いとらんぞ百由様!」
百由「ふっ……当然よ! わたしが立案する作戦だもの、絶対に誰も死なせたりしないわ!」
百由「それじゃあこれより作戦を説明するわね。狙撃手は雨嘉さん、護衛は鶴紗さん。観測手は二水さんが担当よ!」
二水「へっ? わ、わたしも参加するんですか~!?」
神琳「あら、頼もしい。これなら雨嘉さんも安心して背中を託せそうですね?」
雨嘉「観測手……ふーみんがやってくれるのなら、心強いかも」
ミリアム「ここまで来たのじゃから一蓮托生じゃ。ここで一人逃げようたってそうはいかんぞい?」
百由「解析によると、狙撃型ヒュージは20機の小型浮遊機にマギリフレクターを搭載しているの。装甲もかなり硬いわ……そこでコイツよ!」 ガシャン
鶴紗「ずいぶん懐かしいシロモノだな。アステリオン・マギカノンか」
百由「その通り! このマギパーティクルカノンは従来より荷電粒子の拘束率が23.1%、マギ効率が9.6%も向上した改良試作型で───」
ミリアム「おい、百由様」
百由「とにかく! 雨嘉さんはまわりの浮遊機を全部撃ち落として、この子でトドメを刺してもらうわ。明日の調整までぐろっぴは借りるわね?」 ガシ
ミリアム「は? 明日!? ワシは聞いとらんぞ百由様!」
10: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:11:15.74 :nIDpKkIUo
百由「いい? 1機でも撃ち残しちゃダメよ。さすがにマギリフレクターで減衰すると一撃で仕留められなくなるわ」
雨嘉「全部撃ち落とすって……そんなこと、わたしにできるのかな」
神琳「きっと大丈夫ですよ雨嘉さん。自分と百由様の腕を信じてください」
二水「わ、わたしもできる限り頑張ります! みんなであのヒュージをやっつけましょう!」
百由「みんなありがとう。それじゃ作戦開始は明日だから、それまで英気を養って頂戴ね。ほら行くわよぐろっぴ?」
ミリアム「あぁああぁ~……ごきげんようなのじゃぁあぁぁ……」 ズルズル
鶴紗「すまない神琳。雨嘉を危険に晒すようなマネをしてしまって……」
神琳「いえ、構いませんよ。わたくしも皆さんと共に戦うつもりですから」
二水「え!? ダメですよ神琳さん、そんな身体で無茶です!」
神琳「ええ。ですから鶴紗さん、あなたには代わりにこれを託します」 ガシャン
百由「いい? 1機でも撃ち残しちゃダメよ。さすがにマギリフレクターで減衰すると一撃で仕留められなくなるわ」
雨嘉「全部撃ち落とすって……そんなこと、わたしにできるのかな」
神琳「きっと大丈夫ですよ雨嘉さん。自分と百由様の腕を信じてください」
二水「わ、わたしもできる限り頑張ります! みんなであのヒュージをやっつけましょう!」
百由「みんなありがとう。それじゃ作戦開始は明日だから、それまで英気を養って頂戴ね。ほら行くわよぐろっぴ?」
ミリアム「あぁああぁ~……ごきげんようなのじゃぁあぁぁ……」 ズルズル
鶴紗「すまない神琳。雨嘉を危険に晒すようなマネをしてしまって……」
神琳「いえ、構いませんよ。わたくしも皆さんと共に戦うつもりですから」
二水「え!? ダメですよ神琳さん、そんな身体で無茶です!」
神琳「ええ。ですから鶴紗さん、あなたには代わりにこれを託します」 ガシャン
11: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:12:20.35 :nIDpKkIUo
鶴紗「お前、それは……」
神琳「慣れ親しんだCHARMではないかもしれません。ですが所有者とその周りの者を護る楯としての性能は、あなたのティルフィングよりも上です」
鶴紗「だが、兄貴たちの形見だろう?」
神琳「はい、ですから後で必ず返してくださいね。あなたの手で直接、わたくしに」
鶴紗「───わかった。コイツと共に、雨嘉を守り抜くよ」
神琳「それでは、媽祖聖札と契約を。ふふ……まさかわたくしがこの子を手放す時が来るとは、思いもしませんでしたね」
雨嘉「神琳。わたし、やってみる。何があっても、絶対に鶴紗と一緒に神琳の元へ帰ってくるから……!」 ギュゥゥ
二水(梨璃さん、楓さん───お二人を泣かせるわけにはいきません。かならず作戦を成功させてみせます……!)
─────────
鶴紗「お前、それは……」
神琳「慣れ親しんだCHARMではないかもしれません。ですが所有者とその周りの者を護る楯としての性能は、あなたのティルフィングよりも上です」
鶴紗「だが、兄貴たちの形見だろう?」
神琳「はい、ですから後で必ず返してくださいね。あなたの手で直接、わたくしに」
鶴紗「───わかった。コイツと共に、雨嘉を守り抜くよ」
神琳「それでは、媽祖聖札と契約を。ふふ……まさかわたくしがこの子を手放す時が来るとは、思いもしませんでしたね」
雨嘉「神琳。わたし、やってみる。何があっても、絶対に鶴紗と一緒に神琳の元へ帰ってくるから……!」 ギュゥゥ
二水(梨璃さん、楓さん───お二人を泣かせるわけにはいきません。かならず作戦を成功させてみせます……!)
─────────
12: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:13:23.28 :nIDpKkIUo
鶴紗「こちら狙撃班、配置についた。二水、敵の位置は見えるか?」
二水『はい! 敵狙撃型ヒュージ、現在百合ヶ丘へ向けて時速40kmで移動中!』
鶴紗「あの時は隠れて見えなかったけど、なんて大きさだ……まるで動く城壁だな。小型浮遊機といっても、車ほどの大きさはあるじゃないか」
二水『敵はまだこちらに気づいていません。いまなら先制攻撃が可能です!』
鶴紗「よし……作戦開始。準備はいいか、雨嘉!」
雨嘉「《天の秤目》……! 大丈夫、いつでもいけるよ鶴紗!」
鶴紗「こちらから狙撃すれば、必ず反撃してくるハズだ。向こうの砲撃準備に合わせて《ファンタズム》を使う」
二水『射弾観測は任せてください! もっとも、雨嘉さんに必要かどうかはわかりませんが……』
雨嘉「そんなことないよ。この作戦は誰か一人でも欠けても、きっと成功しないと思う……!」
二水『恐縮です! ───皆さん、そろそろ敵ヒュージが有効射程距離に到達します!』
鶴紗「わかった。必ず生きて神琳の元に戻るぞ、雨嘉!」
雨嘉「了解。いくよ───っ!」 ジャコン
ズダァンッ
鶴紗「こちら狙撃班、配置についた。二水、敵の位置は見えるか?」
二水『はい! 敵狙撃型ヒュージ、現在百合ヶ丘へ向けて時速40kmで移動中!』
鶴紗「あの時は隠れて見えなかったけど、なんて大きさだ……まるで動く城壁だな。小型浮遊機といっても、車ほどの大きさはあるじゃないか」
二水『敵はまだこちらに気づいていません。いまなら先制攻撃が可能です!』
鶴紗「よし……作戦開始。準備はいいか、雨嘉!」
雨嘉「《天の秤目》……! 大丈夫、いつでもいけるよ鶴紗!」
鶴紗「こちらから狙撃すれば、必ず反撃してくるハズだ。向こうの砲撃準備に合わせて《ファンタズム》を使う」
二水『射弾観測は任せてください! もっとも、雨嘉さんに必要かどうかはわかりませんが……』
雨嘉「そんなことないよ。この作戦は誰か一人でも欠けても、きっと成功しないと思う……!」
二水『恐縮です! ───皆さん、そろそろ敵ヒュージが有効射程距離に到達します!』
鶴紗「わかった。必ず生きて神琳の元に戻るぞ、雨嘉!」
雨嘉「了解。いくよ───っ!」 ジャコン
ズダァンッ
13: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:14:08.47 :nIDpKkIUo
ヒュージ「───!」
二水『初撃命中、敵上部の浮遊機を1機撃墜! 左舷砲門に動きあり、気を付けてください!』
雨嘉「残り19……18……っ!」 ダァン
鶴紗「そろそろ来るか。いくぞ、《ファンタズム》!」 キィィン
─────────
ズドォンッ
雨嘉『───! ───っ』 ドシャァ
─────────
鶴紗「一度食らった手だ、二度は通用しない! 弾の方向とタイミングさえ掴めば、わたしでも防ぎきれるッ!」 ギィン
雨嘉「16……15っ……!」
二水『敵砲門の出力構造、機銃型へ変化! 危険です、下がってください!』
ヒュージ「───!」
二水『初撃命中、敵上部の浮遊機を1機撃墜! 左舷砲門に動きあり、気を付けてください!』
雨嘉「残り19……18……っ!」 ダァン
鶴紗「そろそろ来るか。いくぞ、《ファンタズム》!」 キィィン
─────────
ズドォンッ
雨嘉『───! ───っ』 ドシャァ
─────────
鶴紗「一度食らった手だ、二度は通用しない! 弾の方向とタイミングさえ掴めば、わたしでも防ぎきれるッ!」 ギィン
雨嘉「16……15っ……!」
二水『敵砲門の出力構造、機銃型へ変化! 危険です、下がってください!』
14: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:15:28.53 :nIDpKkIUo
鶴紗「わたしの後ろに隠れろ、雨嘉!」 ガキキィン
雨嘉「っ、すごい弾幕。鶴紗、平気?」
鶴紗「安心しろ、神琳の媽祖聖札が守ってくれている。それに向こうも永遠には撃ち続けられないハズだ、そこを狙う───《ファンタズム》!」 キィィン
鶴紗「視えた! 約5秒後に弾幕が途切れる、その瞬間を狙え!」
雨嘉「わかった。すぅ───いまっ!」 ズダァンッ
二水『初撃左2・下1mの誤差、次弾命中! 敵右舷の砲門開きます!』
鶴紗「どんな手を使ってきても見切ってやる……! 《ファンタズム》!」 キィィン
─────────
ギィン
鶴紗『───!? ───!』 ベシャッ
媽祖聖札『』 ジュゥゥ
─────────
鶴紗「わたしの後ろに隠れろ、雨嘉!」 ガキキィン
雨嘉「っ、すごい弾幕。鶴紗、平気?」
鶴紗「安心しろ、神琳の媽祖聖札が守ってくれている。それに向こうも永遠には撃ち続けられないハズだ、そこを狙う───《ファンタズム》!」 キィィン
鶴紗「視えた! 約5秒後に弾幕が途切れる、その瞬間を狙え!」
雨嘉「わかった。すぅ───いまっ!」 ズダァンッ
二水『初撃左2・下1mの誤差、次弾命中! 敵右舷の砲門開きます!』
鶴紗「どんな手を使ってきても見切ってやる……! 《ファンタズム》!」 キィィン
─────────
ギィン
鶴紗『───!? ───!』 ベシャッ
媽祖聖札『』 ジュゥゥ
─────────
15: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:16:47.90 :nIDpKkIUo
鶴紗(油脂焼夷弾! こちらのCHARMを破壊しにきたか!)
鶴紗「チッ、あまりこの手は使いたくなかったが仕方がない……! 《アルケミートレース》!」 ザシュッ
雨嘉「鶴紗、なんで手首を……血が!」
鶴紗「心配するな、血も傷もすぐ元に治る。だが神琳の魂を壊されてたまるかぁっ!」
鶴紗(血液で複製した媽祖聖札で防ぐ! ティルフィングならこの方法は使えなかった……!)ブンッ
ゴウゥッ
鶴紗「なにをしている雨嘉! この方法はあまり持たないっ……敵に弱みを悟らせるな、撃て!」
雨嘉「っ……鶴紗が稼いでくれた時間、無駄にはしない!」 ダァンッ
二水『敵浮遊機、残り10機! 敵艦首の砲門、こちらへ向きました!』
鶴紗「いまさらなにをしても無駄だ! 《ファンタズム》、ゔっ!?」 ビキィ
鶴紗(くっ、短時間にレアスキルを使い過ぎたか……! 頼むから持ってくれよわたしの身体、雨嘉を守る間だけでいいから……!)
─────────
バシュッ
雨嘉『!? ───?』 ケホッ
二水『───、───!』 ザザッ
─────────
鶴紗(油脂焼夷弾! こちらのCHARMを破壊しにきたか!)
鶴紗「チッ、あまりこの手は使いたくなかったが仕方がない……! 《アルケミートレース》!」 ザシュッ
雨嘉「鶴紗、なんで手首を……血が!」
鶴紗「心配するな、血も傷もすぐ元に治る。だが神琳の魂を壊されてたまるかぁっ!」
鶴紗(血液で複製した媽祖聖札で防ぐ! ティルフィングならこの方法は使えなかった……!)ブンッ
ゴウゥッ
鶴紗「なにをしている雨嘉! この方法はあまり持たないっ……敵に弱みを悟らせるな、撃て!」
雨嘉「っ……鶴紗が稼いでくれた時間、無駄にはしない!」 ダァンッ
二水『敵浮遊機、残り10機! 敵艦首の砲門、こちらへ向きました!』
鶴紗「いまさらなにをしても無駄だ! 《ファンタズム》、ゔっ!?」 ビキィ
鶴紗(くっ、短時間にレアスキルを使い過ぎたか……! 頼むから持ってくれよわたしの身体、雨嘉を守る間だけでいいから……!)
─────────
バシュッ
雨嘉『!? ───?』 ケホッ
二水『───、───!』 ザザッ
─────────
16: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:17:58.99 :nIDpKkIUo
鶴紗(な、なんだ……? ここにきてただの煙幕か? いや、毒ガスか……!)
鶴紗「雨嘉、次に飛んでくる砲撃を撃ち落とすんだ!」
雨嘉「わかった、やってみる……!」 ダァン
バシュッ
二水『鶴──ん、──で──!』 ザザッ
雨嘉「えっ? ふーみん、どうしたの……!?」
鶴紗「なっ……しまった、チャフ弾か!? 通信がやられた……!」
雨嘉「鶴紗、どうしよう……!? 次の指示を!」 ダァン
鶴紗(二水がいない以上、わたし一人でやるしかない……! 絶対に雨嘉を守り抜け、安藤鶴紗!!) キィィン
─────────
パキィィンッ
─────────
鶴紗(な、なんだ……? ここにきてただの煙幕か? いや、毒ガスか……!)
鶴紗「雨嘉、次に飛んでくる砲撃を撃ち落とすんだ!」
雨嘉「わかった、やってみる……!」 ダァン
バシュッ
二水『鶴──ん、──で──!』 ザザッ
雨嘉「えっ? ふーみん、どうしたの……!?」
鶴紗「なっ……しまった、チャフ弾か!? 通信がやられた……!」
雨嘉「鶴紗、どうしよう……!? 次の指示を!」 ダァン
鶴紗(二水がいない以上、わたし一人でやるしかない……! 絶対に雨嘉を守り抜け、安藤鶴紗!!) キィィン
─────────
パキィィンッ
─────────
17: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:19:18.75 :nIDpKkIUo
鶴紗(なに!? 音も視界も、まったく視えなくなっただと!? レアスキルが失敗した……?)
鶴紗「いや、違う。これは───音響閃光弾か! 雨嘉!!」 バッ
雨嘉「ひぁっ……! た、鶴───」 パキィィン
鶴紗(おそらくヤツは気づいてる。わたしが《ファンタズム》持ちだってことを……! わたしを潰すために、確実な方法を取ってきている!)
鶴紗(鼓膜はすぐに治るが、暗順応は別だ……焼き切れた視界が回復するまであと何分かかる? それまで誰が雨嘉を守るんだ?)
雨嘉「鶴紗、しっかりして! わたしはここにいるよ!」
鶴紗(ふざけるな。雨嘉を失う以上に、なにを恐れているつもりだ! アイツを護れない役立たずの眼なんか、いるかぁ!!) ザシュッ
鶴紗「よ、し……見えるぞ、眼は治ったか……!」
雨嘉「やめて、そこまでしなくてもいいよ鶴紗! これ以上自分を傷つけちゃダメ……!」
鶴紗「いいや、まだだ! わたし達が生き残るには、これしか方法は───な!?」 ハッ
鶴紗(流星、群……? いや、違う───残りの浮遊機をすべて弾道ミサイルに変えて撃ち込んできたのか!?)
鶴紗(なに!? 音も視界も、まったく視えなくなっただと!? レアスキルが失敗した……?)
鶴紗「いや、違う。これは───音響閃光弾か! 雨嘉!!」 バッ
雨嘉「ひぁっ……! た、鶴───」 パキィィン
鶴紗(おそらくヤツは気づいてる。わたしが《ファンタズム》持ちだってことを……! わたしを潰すために、確実な方法を取ってきている!)
鶴紗(鼓膜はすぐに治るが、暗順応は別だ……焼き切れた視界が回復するまであと何分かかる? それまで誰が雨嘉を守るんだ?)
雨嘉「鶴紗、しっかりして! わたしはここにいるよ!」
鶴紗(ふざけるな。雨嘉を失う以上に、なにを恐れているつもりだ! アイツを護れない役立たずの眼なんか、いるかぁ!!) ザシュッ
鶴紗「よ、し……見えるぞ、眼は治ったか……!」
雨嘉「やめて、そこまでしなくてもいいよ鶴紗! これ以上自分を傷つけちゃダメ……!」
鶴紗「いいや、まだだ! わたし達が生き残るには、これしか方法は───な!?」 ハッ
鶴紗(流星、群……? いや、違う───残りの浮遊機をすべて弾道ミサイルに変えて撃ち込んできたのか!?)
18: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:20:31.74 :nIDpKkIUo
鶴紗「は、はは……たった二人を相手に、豪華すぎるだろ……!」
雨嘉「た、鶴紗。わたし最期まで一緒にいるよ……でも!」 ギュッ
鶴紗(もう未来を視るまでもない……最初から、無駄なあがきだったのか? 勝ち目のない相手だったのか……?)
鶴紗(終わりだ……すまない神琳、梨璃……それに父さ───)
『諦めちゃダメ、鶴紗!』
雨嘉「鶴紗! わたし、死にたくない! 鶴紗に死んでほしくないよ!」
鶴紗「───っ!! そうだ、わたしは───」
鶴紗(雨嘉を護ると神琳に誓った、わたし自身を護ると梨璃に誓った! いまは、死ぬよりも恐ろしいことが山ほどある!!)
鶴紗「こんなところで、諦めて───たまるかぁぁぁ!!」 キィィンッ
鶴紗「あぐぅっ……絶対に、生きて帰るんだ!! 受け取れ雨嘉、わたしの掴んだ未来を!!」
鶴紗「は、はは……たった二人を相手に、豪華すぎるだろ……!」
雨嘉「た、鶴紗。わたし最期まで一緒にいるよ……でも!」 ギュッ
鶴紗(もう未来を視るまでもない……最初から、無駄なあがきだったのか? 勝ち目のない相手だったのか……?)
鶴紗(終わりだ……すまない神琳、梨璃……それに父さ───)
『諦めちゃダメ、鶴紗!』
雨嘉「鶴紗! わたし、死にたくない! 鶴紗に死んでほしくないよ!」
鶴紗「───っ!! そうだ、わたしは───」
鶴紗(雨嘉を護ると神琳に誓った、わたし自身を護ると梨璃に誓った! いまは、死ぬよりも恐ろしいことが山ほどある!!)
鶴紗「こんなところで、諦めて───たまるかぁぁぁ!!」 キィィンッ
鶴紗「あぐぅっ……絶対に、生きて帰るんだ!! 受け取れ雨嘉、わたしの掴んだ未来を!!」
19: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:21:48.20 :nIDpKkIUo
雨嘉「テレパス……! 鶴紗の未来、わたしにも視えたよ!」
鶴紗「たとえ手足が千切れても、内臓を燃やし尽くされても! 必ず帰ると約束した!! 走れ雨嘉、トリガーから指を離すなぁ!!」
雨嘉「もう外しはしない! わたしも鶴紗を守りたいから!」 ダダァン
─カッ
鶴紗「わたしから離れるなよ、雨嘉!! く……あぁぁああぁぁぁ!!」 ドォォン
雨嘉「絶対に離さないよ、鶴紗!!」 ギュゥゥ
ズザァッ
鶴紗「げほっ、ぐっ……やった、やったぞ雨嘉! もうヤツに防御の手は残されてない、わたし達が勝ったんだ……!」
雨嘉「鶴紗……でもアステリオンが……」 ボロ
雨嘉「テレパス……! 鶴紗の未来、わたしにも視えたよ!」
鶴紗「たとえ手足が千切れても、内臓を燃やし尽くされても! 必ず帰ると約束した!! 走れ雨嘉、トリガーから指を離すなぁ!!」
雨嘉「もう外しはしない! わたしも鶴紗を守りたいから!」 ダダァン
─カッ
鶴紗「わたしから離れるなよ、雨嘉!! く……あぁぁああぁぁぁ!!」 ドォォン
雨嘉「絶対に離さないよ、鶴紗!!」 ギュゥゥ
ズザァッ
鶴紗「げほっ、ぐっ……やった、やったぞ雨嘉! もうヤツに防御の手は残されてない、わたし達が勝ったんだ……!」
雨嘉「鶴紗……でもアステリオンが……」 ボロ
20: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:22:40.23 :nIDpKkIUo
鶴紗「心配はいらない、ヤツはもうマギリフレクターを展開できないんだ。あとはもう一丁のマギカノンでヤツを倒すだけでいい!」
雨嘉「う、うん。わかった……!」 ガシャン
ヒュージ『──────』
鶴紗(マギも限界が近い。だがヒュージ、これでわたしたちの勝利───)
パシュン
鶴紗「発煙弾……? 二水か、いったいどうしたんだ?」
雨嘉「……嫌な、予感がする」
鶴紗(二水のことだ、きっとなにかある。だが、これ以上限界を超えてレアスキルを発動すれば……)
鶴紗「いいや、振り返ってる余裕はない。ここは仲間を信じる───! 《ファンタズム》!」 キィィン
鶴紗「心配はいらない、ヤツはもうマギリフレクターを展開できないんだ。あとはもう一丁のマギカノンでヤツを倒すだけでいい!」
雨嘉「う、うん。わかった……!」 ガシャン
ヒュージ『──────』
鶴紗(マギも限界が近い。だがヒュージ、これでわたしたちの勝利───)
パシュン
鶴紗「発煙弾……? 二水か、いったいどうしたんだ?」
雨嘉「……嫌な、予感がする」
鶴紗(二水のことだ、きっとなにかある。だが、これ以上限界を超えてレアスキルを発動すれば……)
鶴紗「いいや、振り返ってる余裕はない。ここは仲間を信じる───! 《ファンタズム》!」 キィィン
21: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:23:33.13 :nIDpKkIUo
鶴紗「───ぐ、ぅっ……は、……」 ドサ
鶴紗「はは、ちくしょう……そういう、ことか……!」
雨嘉「なにが視えたの鶴紗……? テレパスは使わないの?」
鶴紗「……雨嘉。いまからわたしの言うことをよく聞いて」
雨嘉「……?」
鶴紗「ヤツはあと一機、浮遊機を隠し持ってる」
雨嘉「え……!? でもわたしのアステリオンはもう……!」
鶴紗「けど、1機だけのマギリフレクターで全身を覆うのは無理らしい。隙間を狙えば勝ち目はある」
鶴紗「だが……」
─────────
雨嘉『───!』 ズガァァンッ
ヒュージ『──────』 バキィィン
────────
鶴紗「ヤツは雨嘉がどこを撃つのかを察知できるんだ。たぶん、銃口の向きから予測してるんだと思う」
雨嘉「そんな……ここまで追い詰めて、どうしたら……」
鶴紗「───ぐ、ぅっ……は、……」 ドサ
鶴紗「はは、ちくしょう……そういう、ことか……!」
雨嘉「なにが視えたの鶴紗……? テレパスは使わないの?」
鶴紗「……雨嘉。いまからわたしの言うことをよく聞いて」
雨嘉「……?」
鶴紗「ヤツはあと一機、浮遊機を隠し持ってる」
雨嘉「え……!? でもわたしのアステリオンはもう……!」
鶴紗「けど、1機だけのマギリフレクターで全身を覆うのは無理らしい。隙間を狙えば勝ち目はある」
鶴紗「だが……」
─────────
雨嘉『───!』 ズガァァンッ
ヒュージ『──────』 バキィィン
────────
鶴紗「ヤツは雨嘉がどこを撃つのかを察知できるんだ。たぶん、銃口の向きから予測してるんだと思う」
雨嘉「そんな……ここまで追い詰めて、どうしたら……」
22: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:25:05.54 :nIDpKkIUo
鶴紗「色々な並行世界を視てきた。けど、どの未来でも切り札の一撃は防がれていたよ……たった一つを除いてね」
雨嘉「よかった……わたし、やるよ。どんな困難でも乗り越えてみせる……だから指示を、鶴紗!」
鶴紗「───わかった。ならわたしごとヤツを撃て、雨嘉」 ザッ
雨嘉「……え?」
雨嘉「なに、言ってるの? 鶴紗……なんで、そんなこと」
鶴紗「こうすれば撃つ瞬間までヤツは銃口が見えない。マギリフレクターを避けて、アイツの胴体に風穴をあけられる」 ガシ
雨嘉「は、離して! そんなことしたら、鶴紗が死んじゃうよ!」
鶴紗「わたしは強化リリィだから、そんなことで死にはしない。わたしを信じるんだ」
雨嘉「できないよ! それでもし鶴紗が死んじゃったら、わたし……!」
鶴紗「ならこのまま二人とも死んでいいのか! 百合ヶ丘のヤツらはどうなる!?」
雨嘉「でも……だけど!」
雨嘉(それじゃどうして鶴紗は、テレパスでわたしに未来を視せてくれなかったの……?)
鶴紗「色々な並行世界を視てきた。けど、どの未来でも切り札の一撃は防がれていたよ……たった一つを除いてね」
雨嘉「よかった……わたし、やるよ。どんな困難でも乗り越えてみせる……だから指示を、鶴紗!」
鶴紗「───わかった。ならわたしごとヤツを撃て、雨嘉」 ザッ
雨嘉「……え?」
雨嘉「なに、言ってるの? 鶴紗……なんで、そんなこと」
鶴紗「こうすれば撃つ瞬間までヤツは銃口が見えない。マギリフレクターを避けて、アイツの胴体に風穴をあけられる」 ガシ
雨嘉「は、離して! そんなことしたら、鶴紗が死んじゃうよ!」
鶴紗「わたしは強化リリィだから、そんなことで死にはしない。わたしを信じるんだ」
雨嘉「できないよ! それでもし鶴紗が死んじゃったら、わたし……!」
鶴紗「ならこのまま二人とも死んでいいのか! 百合ヶ丘のヤツらはどうなる!?」
雨嘉「でも……だけど!」
雨嘉(それじゃどうして鶴紗は、テレパスでわたしに未来を視せてくれなかったの……?)
23: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:26:22.66 :nIDpKkIUo
鶴紗「わたしなら大丈夫。心臓はただの筋組織……カロリーを蓄える肝臓の大部分と、レアスキルを発動する脳さえ無事なら命を落とすことはないさ」
鶴紗「もう時間がない……百合ヶ丘には動けない神琳もいる、お前の手で大事な人を救うんだ」
雨嘉「そんなこと、言わないでよ……! どっちかだなんて、選べないよ鶴紗!」
鶴紗「───百合ヶ丘に拾われる前のわたしの人生は、はっきり言って最悪だった。生きる理由も分からず、死なないだけの日々を消費していた」
鶴紗「だけど、梨璃と出会って、雨嘉達と過ごしているうちに……もう少し生きたいと思うようになっていったんだ」
雨嘉「……やめて……」 ポロ
鶴紗「この世界は嫌いなもので溢れてるけど、それでも最近はやっと好きなものができたよ」
鶴紗「雨嘉、わたしはお前に生きてほしい。お前のことは、嫌いじゃないからな……」 フッ
雨嘉「やめてってば……! お願い……!」 ポロポロ
鶴紗「───約束する、わたしは絶対に死なない。だからお前はヤツを倒して、神琳を護れ! そのために……!」
鶴紗「わたしなら大丈夫。心臓はただの筋組織……カロリーを蓄える肝臓の大部分と、レアスキルを発動する脳さえ無事なら命を落とすことはないさ」
鶴紗「もう時間がない……百合ヶ丘には動けない神琳もいる、お前の手で大事な人を救うんだ」
雨嘉「そんなこと、言わないでよ……! どっちかだなんて、選べないよ鶴紗!」
鶴紗「───百合ヶ丘に拾われる前のわたしの人生は、はっきり言って最悪だった。生きる理由も分からず、死なないだけの日々を消費していた」
鶴紗「だけど、梨璃と出会って、雨嘉達と過ごしているうちに……もう少し生きたいと思うようになっていったんだ」
雨嘉「……やめて……」 ポロ
鶴紗「この世界は嫌いなもので溢れてるけど、それでも最近はやっと好きなものができたよ」
鶴紗「雨嘉、わたしはお前に生きてほしい。お前のことは、嫌いじゃないからな……」 フッ
雨嘉「やめてってば……! お願い……!」 ポロポロ
鶴紗「───約束する、わたしは絶対に死なない。だからお前はヤツを倒して、神琳を護れ! そのために……!」
24: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:27:35.50 :nIDpKkIUo
鶴紗「わたしの心臓ごと───未来を撃ち抜け、雨嘉!!」
雨嘉「うぅぅうぅぅ……! うぁああぁぁあああぁっ!!!」
ズガァ゙ァァンッ
ヒュージ『──────』 ズゥゥゥン…
鶴紗「や、ったな……ゆー、……」 ドサ
雨嘉「鶴紗!? しっかりして、鶴紗!!」
鶴紗(───夕空を塗り潰した鉛色の雲。吹き抜けた風に揺れる花の音。雨嘉の流した涙が暖かい……)
鶴紗(ああ……酷い人生だったけど、こんな最期なら、まあ……いいか)
鶴紗(ここまで、生きてて……よか……───)
鶴紗「わたしの心臓ごと───未来を撃ち抜け、雨嘉!!」
雨嘉「うぅぅうぅぅ……! うぁああぁぁあああぁっ!!!」
ズガァ゙ァァンッ
ヒュージ『──────』 ズゥゥゥン…
鶴紗「や、ったな……ゆー、……」 ドサ
雨嘉「鶴紗!? しっかりして、鶴紗!!」
鶴紗(───夕空を塗り潰した鉛色の雲。吹き抜けた風に揺れる花の音。雨嘉の流した涙が暖かい……)
鶴紗(ああ……酷い人生だったけど、こんな最期なら、まあ……いいか)
鶴紗(ここまで、生きてて……よか……───)
25: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:28:41.31 :nIDpKkIUo
雨嘉「鶴紗……!」
雨嘉(胸の傷、もうほとんど塞がってる。ずっとこんな無茶ばかりしてきたんだ……) ギュゥ
鶴紗「───」
雨嘉「え……鶴紗、息してない……? 脈も!?」 ガバッ
雨嘉「や、やだっ……! 起きてよ鶴紗、約束したよね!? 死んじゃダメだって!」
鶴紗「───」
雨嘉「うそ……わたし、鶴紗を……殺……」 サァァ
雨嘉「ひっ───いやぁああぁああぁっ!! うあぁあぁぁあぁ!?」
雨嘉(なんで、どうしてこんなことになったの!? わたし、鶴紗が傍にいてくれたらそれだけで良かったのに……!)
雨嘉「やだよっ……! 誰か助けて! わたしどうしたらいいの、神琳……!?」 ポロポロ
雨嘉「鶴紗……!」
雨嘉(胸の傷、もうほとんど塞がってる。ずっとこんな無茶ばかりしてきたんだ……) ギュゥ
鶴紗「───」
雨嘉「え……鶴紗、息してない……? 脈も!?」 ガバッ
雨嘉「や、やだっ……! 起きてよ鶴紗、約束したよね!? 死んじゃダメだって!」
鶴紗「───」
雨嘉「うそ……わたし、鶴紗を……殺……」 サァァ
雨嘉「ひっ───いやぁああぁああぁっ!! うあぁあぁぁあぁ!?」
雨嘉(なんで、どうしてこんなことになったの!? わたし、鶴紗が傍にいてくれたらそれだけで良かったのに……!)
雨嘉「やだよっ……! 誰か助けて! わたしどうしたらいいの、神琳……!?」 ポロポロ
26: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:29:45.12 :nIDpKkIUo
─────────
神琳『雨嘉さん。戦場で生き残るために最も重要なこと、それはなんだと思います?』
雨嘉『えっと……命を落とさないこと、かな』
神琳『そうですね。わたくしたちリリィはヒュージと違い、脳に酸素を供給できなければ簡単に死んでしまいます』
神琳『逆に言えば、脳さえ無事ならば後はどうにでもなるんです。ですが、そこへ血液を送り出す心臓はどうでしょうか?』
雨嘉『うーん……心臓が動かなくなっても、頭に血が巡らなくて死んじゃう?』
神琳『その通りです。普段は止まることのない臓器ですが、その理由は自動性にあります。つまり心臓は、自らの生み出した刺激で動くということ』
神琳『もし何らかの原因で一度止まってしまったら、外からの刺激がなければ再び正しい鼓動を打つことはないんです』
雨嘉『怖いね……もし心臓が止まっちゃったら、たしか除細動器を使うんだよね?』
神琳『はい。確かに十分な時間と設備が整っていれば、それが最善策でしょう』
神琳『ですが戦場でそれらを確保できるとは限りません。ですので古典的な心肺蘇生術を覚えていれば、わたくし達の生存確率をきっと上げてくれます』
雨嘉『心肺蘇生……わたし、やったことないかも……』
神琳『……少し、練習してみましょうか───』
─────────
─────────
神琳『雨嘉さん。戦場で生き残るために最も重要なこと、それはなんだと思います?』
雨嘉『えっと……命を落とさないこと、かな』
神琳『そうですね。わたくしたちリリィはヒュージと違い、脳に酸素を供給できなければ簡単に死んでしまいます』
神琳『逆に言えば、脳さえ無事ならば後はどうにでもなるんです。ですが、そこへ血液を送り出す心臓はどうでしょうか?』
雨嘉『うーん……心臓が動かなくなっても、頭に血が巡らなくて死んじゃう?』
神琳『その通りです。普段は止まることのない臓器ですが、その理由は自動性にあります。つまり心臓は、自らの生み出した刺激で動くということ』
神琳『もし何らかの原因で一度止まってしまったら、外からの刺激がなければ再び正しい鼓動を打つことはないんです』
雨嘉『怖いね……もし心臓が止まっちゃったら、たしか除細動器を使うんだよね?』
神琳『はい。確かに十分な時間と設備が整っていれば、それが最善策でしょう』
神琳『ですが戦場でそれらを確保できるとは限りません。ですので古典的な心肺蘇生術を覚えていれば、わたくし達の生存確率をきっと上げてくれます』
雨嘉『心肺蘇生……わたし、やったことないかも……』
神琳『……少し、練習してみましょうか───』
─────────
27: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:32:10.08 :nIDpKkIUo
雨嘉(そうだ……! 《リジェネレーター》で治ったばかりの心臓は、刺激がないから止まったままなんだ!)
雨嘉「まだ、助けられる……! 絶対に、わたしが鶴紗を生き返らせるんだ!」 バッ
雨嘉「お願いっ、眼を、開けてっ……鶴紗っ! 死んじゃ、ダメだよっ……!!」 グッグッ
鶴紗(ここは……どこだ? 結局ヒュージは倒せたのか? わたしは……)
鶴紗「……なにもない。ただ一面に百合が咲いてるだけ、か」
鶴紗(静かだ。いままでずっと望んでいた、戦いのない穏やかな景色───そうか、ここは。わたしはもう)
鶴紗「ふっ……ロクでもない人生だったけど、最期は仲間のために身を挺して殉死か。わたしにしては上出来じゃないか?」 ドサ
「そんなこと言わないで、鶴紗」
鶴紗「───っ!」 ガバッ
鶴紗「そんなハズはない……!」
鶴紗「お前ともう一度、出会えるハズがないんだ……!」
結梨「ううん。わたしはいつだって、鶴紗やみんなと一緒にいるよ?」 ニコ
雨嘉(そうだ……! 《リジェネレーター》で治ったばかりの心臓は、刺激がないから止まったままなんだ!)
雨嘉「まだ、助けられる……! 絶対に、わたしが鶴紗を生き返らせるんだ!」 バッ
雨嘉「お願いっ、眼を、開けてっ……鶴紗っ! 死んじゃ、ダメだよっ……!!」 グッグッ
鶴紗(ここは……どこだ? 結局ヒュージは倒せたのか? わたしは……)
鶴紗「……なにもない。ただ一面に百合が咲いてるだけ、か」
鶴紗(静かだ。いままでずっと望んでいた、戦いのない穏やかな景色───そうか、ここは。わたしはもう)
鶴紗「ふっ……ロクでもない人生だったけど、最期は仲間のために身を挺して殉死か。わたしにしては上出来じゃないか?」 ドサ
「そんなこと言わないで、鶴紗」
鶴紗「───っ!」 ガバッ
鶴紗「そんなハズはない……!」
鶴紗「お前ともう一度、出会えるハズがないんだ……!」
結梨「ううん。わたしはいつだって、鶴紗やみんなと一緒にいるよ?」 ニコ
28: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:33:10.58 :nIDpKkIUo
鶴紗「結梨!」 ギュゥ
結梨「もう、鶴紗はいつから甘えんぼさんになっちゃったの?」
鶴紗「二度と会えないと思っていた。お前に話したいことが、山ほどあるんだ……!」
結梨「うん。わたしもこうして鶴紗とお喋りできるなんてびっくり!」
結梨「楽しい事とかつらい事。たくさんあったんでしょ?」
鶴紗「あぁ……! あれから本当にいろいろあった。千香瑠に藍、他のレギオンの連中とも仲良くなったんだ。お前にも会わせてやりたいよ」
結梨「お友達たくさん増えてよかったね、鶴紗。鶴紗が嬉しいとわたしも嬉しい!」
鶴紗「一柳隊のみんなも元気にしてるよ。梅様はいつもぐーたらで神琳はたまに変なことするし、雨嘉はおどおどしてるけどね」
鶴紗「二水は意外と頼りになるし、楓は梨璃にべったりだ。ミリアムはあの百由様とシュッツエンゲルを結んだぞ?」
結梨「うんうん。鶴紗、幸せな匂いがする!」
鶴紗「夢結様はまだ過去を断ち切れてないが、いまは梨璃と梅様が傍にいるから大丈夫だ」
鶴紗「梨璃は……お前に会いたがっている。お前がいなくなってから、たまにとても悲しい表情をするようになった」
結梨「……うん」
鶴紗「結梨!」 ギュゥ
結梨「もう、鶴紗はいつから甘えんぼさんになっちゃったの?」
鶴紗「二度と会えないと思っていた。お前に話したいことが、山ほどあるんだ……!」
結梨「うん。わたしもこうして鶴紗とお喋りできるなんてびっくり!」
結梨「楽しい事とかつらい事。たくさんあったんでしょ?」
鶴紗「あぁ……! あれから本当にいろいろあった。千香瑠に藍、他のレギオンの連中とも仲良くなったんだ。お前にも会わせてやりたいよ」
結梨「お友達たくさん増えてよかったね、鶴紗。鶴紗が嬉しいとわたしも嬉しい!」
鶴紗「一柳隊のみんなも元気にしてるよ。梅様はいつもぐーたらで神琳はたまに変なことするし、雨嘉はおどおどしてるけどね」
鶴紗「二水は意外と頼りになるし、楓は梨璃にべったりだ。ミリアムはあの百由様とシュッツエンゲルを結んだぞ?」
結梨「うんうん。鶴紗、幸せな匂いがする!」
鶴紗「夢結様はまだ過去を断ち切れてないが、いまは梨璃と梅様が傍にいるから大丈夫だ」
鶴紗「梨璃は……お前に会いたがっている。お前がいなくなってから、たまにとても悲しい表情をするようになった」
結梨「……うん」
29: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:33:49.92 :nIDpKkIUo
鶴紗「すまない結梨……他でもない強化リリィのわたしが、誰よりもお前のことを理解すべきだったのに。結局は護ってやれなかった……!」
結梨「鶴紗は心配性だね。ねえ鶴紗、これからどうしたいの?」
鶴紗「……お前を梨璃の元に連れて帰る」 ギュウ
結梨「あははっ。ありがとう鶴紗。でも、もう鶴紗もわかってるんでしょ?」
鶴紗「理屈なんかどうでもいい!!」
結梨「…………」
鶴紗「お前とこうして出会えただけでも奇跡なんだ。次なんてないかもしれない……! なら、どうしてこの手を離すことができる!?」
鶴紗「一緒に帰ろう、結梨! 一柳隊のみんながお前の帰りを待っているんだ!」
結梨「そうできたら良かったけど、ごめんね鶴紗。わたしはずっとここにいるけど、鶴紗はもうここにはいないから」
鶴紗「どう、いう意味……なに!?」 スカ
鶴紗(わたしの身体が透けている!? 意識も、薄れて───)
鶴紗「すまない結梨……他でもない強化リリィのわたしが、誰よりもお前のことを理解すべきだったのに。結局は護ってやれなかった……!」
結梨「鶴紗は心配性だね。ねえ鶴紗、これからどうしたいの?」
鶴紗「……お前を梨璃の元に連れて帰る」 ギュウ
結梨「あははっ。ありがとう鶴紗。でも、もう鶴紗もわかってるんでしょ?」
鶴紗「理屈なんかどうでもいい!!」
結梨「…………」
鶴紗「お前とこうして出会えただけでも奇跡なんだ。次なんてないかもしれない……! なら、どうしてこの手を離すことができる!?」
鶴紗「一緒に帰ろう、結梨! 一柳隊のみんながお前の帰りを待っているんだ!」
結梨「そうできたら良かったけど、ごめんね鶴紗。わたしはずっとここにいるけど、鶴紗はもうここにはいないから」
鶴紗「どう、いう意味……なに!?」 スカ
鶴紗(わたしの身体が透けている!? 意識も、薄れて───)
30: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:34:50.41 :nIDpKkIUo
結梨「ほんのちょっとの間だけど、みんなのこと聞けて嬉しかったよ!」
結梨「でもね、もう時間だから。鶴紗は先にみんなのところへ戻ろ?」
鶴紗「嫌だ……! お前をおいて先に帰るワケにはいかない、ついて来るんだ結梨!」
結梨「梨璃の読んでくれたご本に書いてあったよ。お姫様は、キスされたら目覚めなきゃいけないんだって───」
鶴紗「待て、行くな結梨! わたしはまだ───!」
結梨「鶴紗、約束! わたしの代わりに梨璃やみんなのこと、絶対に守ってね!」
結梨「わたしはいつでも一緒だよ。だから鶴紗も、頑張れ!」
結梨「ほんのちょっとの間だけど、みんなのこと聞けて嬉しかったよ!」
結梨「でもね、もう時間だから。鶴紗は先にみんなのところへ戻ろ?」
鶴紗「嫌だ……! お前をおいて先に帰るワケにはいかない、ついて来るんだ結梨!」
結梨「梨璃の読んでくれたご本に書いてあったよ。お姫様は、キスされたら目覚めなきゃいけないんだって───」
鶴紗「待て、行くな結梨! わたしはまだ───!」
結梨「鶴紗、約束! わたしの代わりに梨璃やみんなのこと、絶対に守ってね!」
結梨「わたしはいつでも一緒だよ。だから鶴紗も、頑張れ!」
31: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:35:32.11 :nIDpKkIUo
雨嘉「生き返って、鶴紗っ! わたし、鶴紗にっ、まだなにも返して、ないっ! んっ───!」
鶴紗「───げほっ! ぐ、ぅっ……! ゆ……、……」
雨嘉「鶴、紗……? 鶴紗ぁっ!!」 ギュウゥ
鶴紗「え……ゆー、じあ……? わたし、は……」
雨嘉「よかった、本当に死んじゃったかと思った……! 鶴紗のバカ、どうしてあんな無茶なことしたの!?」 ポロポロ
鶴紗(冷えた身体に雨嘉の肌が熱い。二人分の息遣いが聞こえる───そうか、わたしはまだここにいていいのか)
鶴紗「みんなと約束、したから。わたし一人が破るわけにはいかないしね」
鶴紗「それに、雨嘉ならきっと連れ戻してくれると信じていた」 ナデ
雨嘉「もう、ズルいよ鶴紗……! そんなこと言われたら、なにも言い返せないよ……!」
雨嘉「生き返って、鶴紗っ! わたし、鶴紗にっ、まだなにも返して、ないっ! んっ───!」
鶴紗「───げほっ! ぐ、ぅっ……! ゆ……、……」
雨嘉「鶴、紗……? 鶴紗ぁっ!!」 ギュウゥ
鶴紗「え……ゆー、じあ……? わたし、は……」
雨嘉「よかった、本当に死んじゃったかと思った……! 鶴紗のバカ、どうしてあんな無茶なことしたの!?」 ポロポロ
鶴紗(冷えた身体に雨嘉の肌が熱い。二人分の息遣いが聞こえる───そうか、わたしはまだここにいていいのか)
鶴紗「みんなと約束、したから。わたし一人が破るわけにはいかないしね」
鶴紗「それに、雨嘉ならきっと連れ戻してくれると信じていた」 ナデ
雨嘉「もう、ズルいよ鶴紗……! そんなこと言われたら、なにも言い返せないよ……!」
32: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:36:38.72 :nIDpKkIUo
鶴紗「よし、それじゃ帰ろう雨嘉。わたし達が守りきった百合ヶ丘に」
雨嘉「うん、そうだね。一緒に神琳の元に戻ろう?」
二水「ぜーっ、ぜーっ……! 雨嘉さぁぁん! 除細動器、持ってきましたぁあぁぁ……!!」 フラフラ
鶴紗「…………」
雨嘉「ぷっ……! ふふっ、遅いよふーみん……!」 クスクス
二水「あれぇ!? 鶴紗さん生き返ってる!? そんなぁ、わたしなんのために頑張ったんですかぁ~!?」 ガク
鶴紗「いや、二水はなにも悪くない。少し間が悪かっただけだ」
二水「あはは、そういって貰えると助かります……あう」 バタン
雨嘉「ふーみんもお疲れ。おぶってあげようか?」
二水「いえ、自分で歩けるので大丈夫ですよ。先に戻ってますから、それよりも鶴紗さんをお願いします!」
鶴紗「わたしも別に、と言いたいけど……流石に限界かもね。頼んでもいい?」
雨嘉「わかった。よいしょっ、と……軽いね鶴紗」
鶴紗「カロリーを使い果たしたからかな。久々に雨嘉の手料理が食べたい気分だ」
二水「いいですね~、わたしもご一緒してよろしいですか?」
雨嘉「わかった。腕によりをかけて、みんなに御馳走を作ってあげるね」
鶴紗「よし、それじゃ帰ろう雨嘉。わたし達が守りきった百合ヶ丘に」
雨嘉「うん、そうだね。一緒に神琳の元に戻ろう?」
二水「ぜーっ、ぜーっ……! 雨嘉さぁぁん! 除細動器、持ってきましたぁあぁぁ……!!」 フラフラ
鶴紗「…………」
雨嘉「ぷっ……! ふふっ、遅いよふーみん……!」 クスクス
二水「あれぇ!? 鶴紗さん生き返ってる!? そんなぁ、わたしなんのために頑張ったんですかぁ~!?」 ガク
鶴紗「いや、二水はなにも悪くない。少し間が悪かっただけだ」
二水「あはは、そういって貰えると助かります……あう」 バタン
雨嘉「ふーみんもお疲れ。おぶってあげようか?」
二水「いえ、自分で歩けるので大丈夫ですよ。先に戻ってますから、それよりも鶴紗さんをお願いします!」
鶴紗「わたしも別に、と言いたいけど……流石に限界かもね。頼んでもいい?」
雨嘉「わかった。よいしょっ、と……軽いね鶴紗」
鶴紗「カロリーを使い果たしたからかな。久々に雨嘉の手料理が食べたい気分だ」
二水「いいですね~、わたしもご一緒してよろしいですか?」
雨嘉「わかった。腕によりをかけて、みんなに御馳走を作ってあげるね」
33: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:37:46.92 :nIDpKkIUo
ミリアム「おお、やっと帰ってきおったか! 無事じゃったかお主ら?」
鶴紗「ああ。先行狙撃分隊、目標撃破により帰投した。神琳はいるか?」
神琳「───雨嘉さん、鶴紗さん!」 バッ
雨嘉「わわっ、神琳……もう動いて大丈夫なの?」
神琳「ふーみんさんから聞きました。二人とも命を落としかけたと……!」 ギュゥゥ
鶴紗「お前のCHARMがわたし達を護ってくれた。すまない、少し傷ついてしまったが……」
神琳「そんなもの、あとでみーさんがいくらでも直してくれます。ですがリリィは死んでしまったら二度と生き返らないんですよ?」
神琳「無事でよかった……本当に……!」 ポロポロ
鶴紗「泣くな神琳。わたしの手でこいつを返すと約束したじゃないか」
二水「す、素敵ですぅ……! 戦場で深まるリリィの絆、これはすぐに号外を発行しなければ!」
ミリアム「お? 徹夜明けのワシ死んだかこれ?」
ミリアム「おお、やっと帰ってきおったか! 無事じゃったかお主ら?」
鶴紗「ああ。先行狙撃分隊、目標撃破により帰投した。神琳はいるか?」
神琳「───雨嘉さん、鶴紗さん!」 バッ
雨嘉「わわっ、神琳……もう動いて大丈夫なの?」
神琳「ふーみんさんから聞きました。二人とも命を落としかけたと……!」 ギュゥゥ
鶴紗「お前のCHARMがわたし達を護ってくれた。すまない、少し傷ついてしまったが……」
神琳「そんなもの、あとでみーさんがいくらでも直してくれます。ですがリリィは死んでしまったら二度と生き返らないんですよ?」
神琳「無事でよかった……本当に……!」 ポロポロ
鶴紗「泣くな神琳。わたしの手でこいつを返すと約束したじゃないか」
二水「す、素敵ですぅ……! 戦場で深まるリリィの絆、これはすぐに号外を発行しなければ!」
ミリアム「お? 徹夜明けのワシ死んだかこれ?」
34: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:38:50.33 :nIDpKkIUo
梨璃「一柳隊、ただいま帰りました! 鶴紗さん、雨嘉さん! 無事ですか!?」
夢結「梨璃。静かになさい」 シー
鶴紗「すぅ……すぅ……」
雨嘉「……くぅ……ふふ……」
神琳「うふふ……雨嘉さん……すぅ」
二水「えへへぇ……明日の朝までに書き上げないとぉ……」
ミリアム「」 チーン
楓「まったく、負傷者が出たと聞いて慌てて帰ってきてみれば。心配した分だけ損しましたわ!」
梅「みんな気持ちよさそうに寝てるな! 梅も混ざりたいゾ!」
梨璃「よかったぁ……みんなお疲れ様、いまは夢の中でゆっくり休んでいてね?」
梨璃「一柳隊、ただいま帰りました! 鶴紗さん、雨嘉さん! 無事ですか!?」
夢結「梨璃。静かになさい」 シー
鶴紗「すぅ……すぅ……」
雨嘉「……くぅ……ふふ……」
神琳「うふふ……雨嘉さん……すぅ」
二水「えへへぇ……明日の朝までに書き上げないとぉ……」
ミリアム「」 チーン
楓「まったく、負傷者が出たと聞いて慌てて帰ってきてみれば。心配した分だけ損しましたわ!」
梅「みんな気持ちよさそうに寝てるな! 梅も混ざりたいゾ!」
梨璃「よかったぁ……みんなお疲れ様、いまは夢の中でゆっくり休んでいてね?」
35: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:39:46.70 :nIDpKkIUo
鶴紗(いままで何度もこの力を捨てたいと願っていた。いくら傷つけても治るこの身体はまるで呪いそのものだ)
鶴紗(だが大切な友を護るため、そして自分自身を護るために。もうしばらくは利用してやってもいい)
鶴紗(隣で雨嘉や神琳が。そして梨璃が笑ってくれるのなら、わたしはまだ死ぬワケにはいかない)
鶴紗(すまない結梨、もうしばらくお前に寂しい思いをさせてしまうかもしれないな)
鶴紗(だけどお前との約束は忘れない。もう少し、生きてみることにするよ)
鶴紗(だから、わたしの傍で見守っていてくれないか───?)
おわり
鶴紗(いままで何度もこの力を捨てたいと願っていた。いくら傷つけても治るこの身体はまるで呪いそのものだ)
鶴紗(だが大切な友を護るため、そして自分自身を護るために。もうしばらくは利用してやってもいい)
鶴紗(隣で雨嘉や神琳が。そして梨璃が笑ってくれるのなら、わたしはまだ死ぬワケにはいかない)
鶴紗(すまない結梨、もうしばらくお前に寂しい思いをさせてしまうかもしれないな)
鶴紗(だけどお前との約束は忘れない。もう少し、生きてみることにするよ)
鶴紗(だから、わたしの傍で見守っていてくれないか───?)
おわり
36: ◆0OFFzs.gSU9k:2021/09/14(火) 13:43:26.20 :nIDpKkIUo
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